城旅へようこそ

県庁から臨江閣、城門跡へと時間旅行

  • 前橋城(2) 文・写真 城郭ライター 萩原さちこ
  • 2017年8月21日

明治時代に建てられた臨江閣。改修工事を終え、2017年9月から一般公開予定だ

<前橋城(1)からつづく> 

 前橋城は前橋台地の北端部に位置し、西を流れる利根川を背にした平城だ。地上33階・地下3階の群馬県庁本庁舎や群馬県警察本部が建つのが、本丸跡。本丸の東・南面を囲むように二の丸が配され、前橋地方裁判所や前橋地方検察庁が建つあたりが三の丸にあたる。前橋市役所のあたりは水曲輪と呼ばれる区画で、大手門は本町一丁目交差点あたりにあった。

 50号線に沿って並ぶ寺社は、築城時に建立されたという。前橋城の東南の守りを固めるべく、いざというときは駐屯地となるよう意図的に集められたのだろう。東福寺は前橋城に参上する人々が下馬した場とも伝わり、伊勢崎や江戸へ向かう起点になったようだ。入り口に馬頭観世音碑があるのは、藩士や城を訪れる人々、旅人にとって大切な馬の安全を祈願するためにあるのではないだろうか。

 ともあれ、まずは群馬県庁32階の展望ホールへ向かう。ここが、前橋城の立地を実感できる絶好のスポットだ。眺望もよく、北には赤城山、西には榛名山、南西には妙義山の上毛三山がそびえる。赤城山と榛名山の裾野間を南北に流れるのが、日本最大級の規模を誇る利根川だ。

城の西側には“坂東太郎”の異名を持つ利根川が流れる。写真右手の前橋公園を囲む高まりが土塁跡で、砲台も置かれた

展望ホールへのエレベーターから利根川を見下ろす

 残念ながら城の遺構はほぼ見られないが、それでも土塁が好きな城ファンにはたまらない城だ。展望ホールから地上に降りたら、まずは本丸東側にあたる群馬県庁土塁と書かれた看板のあたりを目指そう。再築された前橋城の土塁がもっともよく残り、鉄壁のごとく本丸跡を囲む土塁が見られる。関東の城らしい、高くたくましい圧巻の土塁だ。

 再築された前橋城とは、<『前橋城(1)』>で述べた、1863(文久3)年に着工し、3年8カ月をかけて1867(慶応3)年に完成したといわれる前橋城のことだ。明治維新を迎えると本丸御殿を残して建物は取り壊されたが、実は本丸御殿は群馬県庁として昭和初期まで使用されていた歴史もある。

 前橋城址之碑が建っている場所の西側が、高浜門跡だ。かつての本丸は高い土塁でがっちりと囲まれ、その外側には水堀がめぐり、さらに西側には大きな櫓台をともなう土塁で守られていた。

本丸東側にあたる、再築された前橋城の土塁

高浜門跡。現在は県庁への出入り口のひとつとなっている

前橋公園の西側にある土手も、再築した前橋城の土塁だ

 前橋公園を抜けてそのまま北へ歩くと、臨江閣がある。第2期群馬県の初代県令であった、楫取素彦(小田村伊之助)の提言で建てられた建物だ。迎賓館として建造された本館のほか、一府十四県連合共進会の貴賓館として建てられた別館、京都の宮大工・今井源兵衛により造られた茶室から構成される。改修工事中だったが、2017年9月より一般公開の予定。趣のある近代和風の木造建築物を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごしたい。

臨江閣。2017年11月4・5日には将棋のタイトル戦・竜王戦の開催が決定した

本館と茶室は県の重要文化財に指定されている

 歩いていると、臨江閣の一帯にはかなりの高低差があると気づく。そう、ここは空堀の跡で、かつては旧流路の低地を掘ってつくった亀ヶ淵と呼ばれる広大な空堀があった。そのまま歩を進めると北側は風呂川が流れているのだが、これは広瀬川から城内の生活用水として引き入れたものだそうだ。堀底にあたる低地は「るなぱあく」という遊園地になっており、敷地には臨江閣の石垣も残っている。

風呂川。生活用水として広瀬川から引き入れられたという

 さて、本丸方面へ戻り、大手に向かって前橋城の片鱗を探し歩いてみると、大手2丁目に石垣を発見した。三の丸の城門にあたる、車橋門跡の石垣だ。古絵図と照らし合わせてみると、どうやら外曲輪から城内に至る重要な門であったようだ。4代藩主・酒井忠清により冠木門から渡櫓門に改築されたという。

 現地に設置された案内板によれば、台石は1辺7.7×4.25メートルで、高さは1.4メートル。昭和39年の区画整理によって西側の台石が8メートル東に移動されたというが、ともあれ実際に歩いて通過できるのがうれしい。想像力をフル稼働して、往時の城門の姿や人々の様子を連想してみる。街中にわずかでも片鱗が残っていれば、かつての城にタイムスリップできる。それもまた、城旅の小さな楽しみなのだ。

大手2丁目に残る、車橋門跡の石垣

(前橋城の回・おわり)

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交通・問い合わせ・参考サイト


前橋城
JR両毛線「前橋」駅からバスで約10分

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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