旅空子の日本列島「味」な旅

神話とたたら製鉄の里、列車で行く奥出雲

  • 文 写真 中尾隆之
  • 2017年8月23日

八雲本陣に使われた宍道町の木幡家住宅

  • 神話とたたら製鉄の里を走る木次線

  • 神話の里にちなむ神社風の出雲横田駅

  • 技術や歴史を伝える奥出雲たたらと刀剣館

  • 目にも口にも美味な卜蔵庭園・椿庵の料理

  • 伝統産業にちなんだ人気の「そろばん最中」

  • 『砂の器』の舞台を記念した湯前神社の石碑

  • 駅長そばを兼業する名物駅舎の亀嵩駅

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 島根県の宍道湖(しんじこ)湖畔の旧宍道町は旧山陰道や湖上交通の宿場として栄えた町である。乗り換えのJR木次(きすき)線の待ち時間、宍道駅から5分ほどの八雲本陣(木幡家住宅)まで歩いた。江戸時代は歴代松江藩主の本陣、明治以降は大社参拝の宮家などの御宿所だった建坪800坪の国の重要文化財で、重ねた歴史が感じられた。

 宍道駅から曲折を繰り返して中国山地の備後落合に至る木次線は、普通列車のみ運行の全長81.9㎞のローカル線。トンネルを避け、地元の思惑に引っ張られ、進路を左右に変えながら木次、出雲三成、出雲横田、三井野原へと延びている。

 車窓に流れる田畑や山々、赤い石州瓦の集落など穏やかな風景に気分もゆったり。途中の木次は路線名に使われるように、紙、木綿、牛馬の取引などで栄えた市場町で、古くから交通の要衝としてにぎわった。今も雲南地方の中心である。

 列車は日登駅、下久野駅のきつい勾配を時速20~30㎞であえぎつつ上り、長いトンネルを抜けてやがて神話とたたらの里の奥出雲町に入って行く。その主な玄関口が、モダンな出雲三成駅と間に亀嵩駅をはさんだ神社風の出雲横田駅だ。

 この辺りは高天原から追放されたスサノオが降り立ったといわれる地で、ヤマタノオロチを退治して結婚した稲田姫(=クシナダヒメのこと)の生誕地と伝えられる。姫の産湯の池や姫をまつった、縁結びと子宝、安産祈願で知られる稲田神社もあるという。

 8世紀の『出雲国風土記』に書かれたように、一帯は砂鉄から生み出す古代のたたら製鉄の里で知られる。それを伝えるのが、オロチのオブジェが目を引く奥出雲たたらと刀剣館(0854-52-2770)や、貴重な歴史資料や豪壮な屋敷に往時の隆盛ぶりをしのばせる、松江藩鉄師頭取を務めた絲原記念館(0854-52-0151)、そして桜井家・可部屋集成館(0854-56-0800)である。非公開だが日本刀づくりに欠かせない玉鋼(たまはがね)を生産する全国唯一たたら製鉄を続ける日刀保(にっとうほ)たたらも外から眺めた。

 奥出雲に古代の製鉄が起こったのは一帯の山を切り崩すと上質な砂鉄が採取できたから。のちに洋鉄の普及でたたら製鉄の炎は消えるが、その鉱山跡地は無残なはげ山にならず、広々とした棚田に生まれ変わり、ミネラルを含んだ土壌がコシヒカリの魚沼米に並ぶ西のブランド米の仁多米を生み出している。

 この辺りは松本清張の『砂の器』の舞台としてもおなじみで、映画のロケ地になった場所を探すファンが今も少なくないそうだ。出雲弁が犯人逮捕のカギになった亀嵩駅や近くの湯前神社にある「小説砂の器舞台の地」の記念碑にも立ち寄った。

 この先、列車は、標高565mの出雲坂根駅から高原野菜で知られる三井野原駅へと、急勾配を克服する三段式スイッチバックでゆっくり上っていった。

アクセス・問い合わせ

・JR木次線木次駅、出雲三成駅、出雲横田駅など下車
・雲南広域連合 0854-47-7341
・雲南市観光振興課 0854-40-1054
・奥出雲町地域振興課 0854-54-2524

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。
※文中の施設名のリンク先は楽天トラベルの情報ページです。

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PROFILE

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター

nakao takayuki

高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

風土47

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都道府県のアンテナショップの情報を集めたポータルサイト。全国的には知られていないけれど味も生産者の思いも一級品、そんな隠れた名品を紹介する「日本全国・逸品探訪」など様々な記事が掲載されている。

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