にっぽんの逸品を訪ねて

桃、ピオーネ、マスカット。岡山の城下町で味わう旬のフルーツパフェ

  • 文・写真 中元千恵子
  • 2017年8月29日

お城でパフェを味わう

 のんびりと路面電車が走り、旭川のほとりに岡山城と岡山後楽園が広がる岡山市。水と緑が美しいかつての城下町は、最近では“フルーツパフェの街"としても人気を博している。

 瀬戸内海に面した岡山県は、温暖な気候で農作物の栽培が盛ん。白桃やマスカット、ピオーネなど、さまざまな果物の名産地として知られている。年間を通じてたくさんの果物が収穫されることから、“フルーツパフェの街おかやま"のプロジェクトが開始され、今では岡山市内のホテルや飲食店、和・洋菓子店など30軒以上で、果物を使った独創的なフルーツパフェが作られている。

 夏の一日、歴史的な名所とパフェをテーマに市街をめぐった。

市街を路面電車が走る

宇喜多秀家が築城した岡山城へ

 岡山駅から路面電車に乗り、まず向かったのは岡山城だ。

 古代から吉備文化の発祥地として栄えた岡山だが、現在の岡山市の中心部が発展したのは、1573年(天正元)、戦国武将の宇喜多直家(うきたなおいえ)が、かつてこの地にあった石山城に居城を移してからだという。

 岡山城を築いたのは直家の子の秀家(ひでいえ)だ。豊臣秀吉に重用され、五大老も務めた人物。城は8年の歳月を費やして、1597年(慶長2)に完成した。秀家は城下町の整備拡張も行い、現在の岡山市の発展の基礎を作った。

水辺に気持ちいい散策路が続く

 岡山駅前から四つ目の城下(しろした)電停で降りて、東へ歩くと、まもなく旭川ほとりの石山公園に出た。近代的なビルが立ち並んでいた街のようすが一変して、緑豊かな清々しい風景。川面を渡る風が心地よく、木陰では散策途中の観光客もひと休みしている。

 やがて岡山城が姿を現した。黒塗りの壁に金の装飾を施した天守閣は、夏の日差しに輝いて堂々たる美しさだ。

青空に映える豪華な天守閣

 秀家は、現在の岡山県一帯を広く治めた57万4000石の大名だった。3層6階建ての天守閣は、外壁に黒漆(うるし)塗の下見板をはめ込み、金箔の鯱(しゃちほこ)をのせた豪華な造り。光を浴びて烏(からす)の濡れ羽色に光り、「烏城(うじょう)」や「金烏城」とよばれた。

 天守閣は戦火で焼失したが、1966年(昭和41)に旧来通りの外観に復元された。美しいだけでなく、関ヶ原合戦以前の古式な城郭建築を伝える学術的にも貴重な城だという。
 天守閣内では城主の変遷などの歴史が紹介されている。
 天守閣内の2階には、フルーツパフェなどが食べられる「お城茶屋」がある。
 果物を使った“お城パフェ”は、壱(いち)番、弐(に)番、参番があり、それぞれ味が異なる。

「お城茶屋」のメニュー“お城パフェ壱番”

 注文したのは“お城パフェ壱番”。ジャスミンティーのジュレと岡山県産白桃ピューレ、ソフトアイスクリームにフルーツがのっている。この日は白桃のシーズンだったので、スライスした県産の白桃がのっていた。

 アイスクリームの甘さに白桃の味が負けてしまうのではないかと思ったが、とんでもない。みずみずしい白桃の甘みは上品ながら濃く、アイスクリームを少しつけると、それぞれの味がさらに際立つ。絶妙の組み合わせだ。あっさりしたジュレも果実の味を引き立て、大人のフルーツパフェ、という味わいだった。

 9月は黄桃やマスカット、ピオーネなどが旬を迎え、パフェを彩る。12月~翌5月はイチゴが中心になるなど、季節ごとの果物が使われるそうだ。

緑が茂る名園“岡山後楽園”を散策

 城の北側を流れる旭川の対岸には、日本三名園に数えられる特別名勝の岡山後楽園が広がっている。

 旭川にかかった橋を渡れば、園の南門が近く、こちらから入るのが昔のお殿様の正式なルートだったらしい。ただ、水辺の回廊と名付けられた遊歩道を歩いて正門から入るのもおすすめだ。入園して視界が開けた途端、広々とした庭園の向こうに天守閣が現れる光景は感動的。ビルも目に入らないため、時代をさかのぼったように感じる。

園を見渡すようにそびえる天守閣が現れる

 岡山後楽園は、当時の岡山藩主だった池田綱政(つなまさ)が、1687年(貞享4)に着工した。関ヶ原の戦いで宇喜多秀家が敗れると、岡山城には小早川氏、次いで池田氏が入城。池田氏同士の国替えもあったが、維新まで池田家が岡山藩主を務めた。

 藩主の安らぎの場として造られた庭園は、歴代藩主によって少しずつ手を加えられながら歴史を重ねてきた。当時、許可があれば領民も入ることができたという。
 昭和になって水害や戦災の被害を受けたが、絵図などをもとに、江戸時代の姿を大きく変えることなく復旧されている。
 園内には、藩主の居間を復元した延養亭(えんようてい)や、戦災を免れた廉池軒(れんちけん)など多くの見どころがある。

中央に水路を通した流店は全国でもめずらしい造りだという。風雅なたたずまいだ

 流店(りゅうてん)も戦火を逃れた建物の一つ。中央に水路を通し、色彩の異なる六つの石を配した涼しげな造りで、散策の合間に休むにはぴったりだ。簡素だが、風雅なたたずまいに心惹かれる。

 中央部にある唯心山(ゆいしんざん)に上ると、園内が見渡せた。沢の池は満々と水をたたえ、明るい日差しを受けた木々が生き生きと茂る。温暖で豊饒(ほうじょう)な岡山の地を象徴するかのような風景に、思わず見とれた。

園中央部の唯心山から園内を望む

まだまだある、フルーツパフェの店

 岡山後楽園の付近でも、フルーツパフェが食べられる2軒を訪ねた。

 1軒は岡山プラザホテル内にあるレストラン「彩」irodori(いろどり)。この日はマロンペーストやアイスクリーム、ブルーベリーソースなどを重ねたパフェ。9月にはピオーネなどのブドウやあたご梨がのる予定だという。

 シェフの大森繁昭さんは、実家が果物栽培を行っている。「岡山県の山間部は昼夜の寒暖差もあっておいしい果物が育ちます。特に露地栽培のピオーネは糖度が高くて深い味わいなので、多くの方に食べていただきたいですね」と話す。

この日は秋らしいマロンペーストが使われていた。お話を伺った大森シェフ

 Café Antenna(カフェ アンテナ)の「いづし大正浪漫パフェ」の夏秋バージョンは、うちわや傘、ハートをあしらったかわいらしいデザインだ。全部ではないが県産のフルーツを使い、この日はメロンとマスカットがのっていた。メロンの芳香と、爽やかでみずみずしいマスカットの甘み、冷たいジェラートで散策の疲れも溶けていくよう。

 ジェラートは2段になっていて、ミルクと、もう一種類は季節で変わり、現在は白桃。使用する果物はマスカットが11月くらいまででやがてイチゴに変わるという。

傘やうちわなど凝った意匠の「いづし大正浪漫パフェ」(画像提供:Café Antenna)

*フルーツパフェは、各店とも時期によって使用する果物や食材、意匠が異なります。収穫量によって提供できない日もあるので、お出かけ前にぜひ確認してください。

交通・問い合わせ

フルーツパフェの街おかやま

岡山城

・お城茶屋 TEL:086-221-0758
9:30~16:30L.O./12月29日~31日休み/岡山城天守閣内(※入場料別途)

岡山後楽園

岡山プラザホテルレストラン「彩」irodori

Café Antenna

おかやま観光コンベンション協会

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PROFILE

中元千恵子(なかもと・ちえこ)フリーライター

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、 『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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