京都ゆるり休日さんぽ

宇治川のほとりで新しい茶文化にふれる「朝日焼 shop & gallery」

  • 2017年9月8日

宇治川をのぞむ絶好のロケーション。庭を抜けていくアプローチにも胸が高鳴る

 宇治川のほとりにたたずむ、一軒の平屋。地元の自然と調和した美しい庭のアプローチを抜け、扉を開けると、窓一面に広がる川べりの風景に心を奪われます。ここは、江戸時代の慶長年間に開窯(かいよう)し、約400年もの歴史を持つ窯元・朝日焼の新しいショップ兼ギャラリー。今年7月にオープンし、絶好のロケーションと現代の感性にフィットする空間で、由緒ある窯元の新しい試みを発信しています。

見事な梁(はり)や柱を残してリノベーション。空間デザインは「スフェラ」のディレクター・眞城成男(ましろ・しげお)氏

 宇治といえば、京都随一のお茶どころ。「朝日焼 shop & gallery」は、そのお茶文化とともに発展してきた朝日焼の、日本茶への思いが詰まった場所です。シンプルでコンテンポラリーな内装の店内には、窯元の職人が作る茶器や器から、現当主の十六世・松林豊斎(まつばやし・ほうさい)さんが手がける一点ものの作品が並びます。宇治川をのぞむテーブル席は、お茶のワークショップなどを行うスペース。奥には、ガラス張りの光あふれる茶室があり、床の間のしつらえや川辺の風景が四季の移ろいを伝えてくれます。

鹿の背のような斑点の「鹿背(かせ)」模様は、朝日焼の伝統的な意匠の一つ

 茶人・小堀遠州(こぼり・えんしゅう)が好んだという遠州七窯の一つに数えられる朝日焼ですが、その後文化の中心が江戸へと移る四〜七世の頃は厳しい時代が続きました。朝日焼が新たな日の出を迎えるのは、八世・長兵衛(1853年〜)の時代。煎茶の流行に合わせ、現在も作られている代表作の一つ「河濱清器(かひんせいき)」の原型となる煎茶器を生み出したのです。

棚には、工房で作られた朝日焼の器が並ぶ。中にはカラフルな色やモダンなデザインも

 お茶に生かされ、お茶とともに歴史を紡いできた朝日焼にとってこの場所は、「今」の感性でお茶の魅力を体感してもらい、歴史をつないでいく未来への一歩。その一つの取り組みとして、定期的に「河濱清器」をはじめとする朝日焼の急須を用いたワークショップを開催しています。

ワークショップを行う、ブランドマネージャーの松林俊幸さん。朝日焼の代表的な茶器「河濱清器」を用いて

 ワークショップを手がけるのは、豊斎さんの弟であり、ブランドマネージャーの松林俊幸(まつばやし・としゆき)さん。地元・宇治のお茶を使い、煎茶や玉露のおいしいいれかた、一煎・二煎と煎を重ねることによる味の違いや、ブレンドとシングルオリジン(単一銘柄)それぞれの楽しみ方など、多彩な切り口で展開しています。

ワークショップ「急須の手習い」は、毎月7日にHPにて募集を開始し、20日に実施。一人3,000円(お菓子付き・税込み)で定員5名まで

 美しい所作とお茶の味わいの違いを知ると、茶器のデザインの合理性にも深くうなずいてしまうはず。「僕もこの仕事につくまでは、自分の窯元の急須の良さを深く理解していませんでした。けれど、作っているところを見ると、『なぜここまで?』と思うほど手間がかけられている。それは、宇治のお茶の生産者さんも同じです。丁寧に作られたものでお茶をいれると、日常が少し豊かになると気づきました」と俊幸さんは語ります。

川べりの風景と木もれ日に魅せられる茶室。数寄屋大工「京こと」の協力を得て、細部まで作り込まれた

 光が降り注ぐ茶室は「茶室のロジックをくずさず、これまでにないモダンな空間に」という豊斎さんの思いを形にしたもの。客座を宇治川が見えるように配しながらも床の間へと視線を導く構成は、地元の自然と茶の湯の文化への敬意を象徴しているかのようです。茶室では不定期で展示や茶事を開催しつつ、平時は豊斎さんの作品を展示。2016年6月に十六世・豊斎を襲名した豊斎さんは、この空間と自身の作品についてこう話します。

十六世・松林豊斎さん。京都の伝統工芸を担う若手の集まり「GO ON(ゴオン)」の一員でもあり海外にも活躍の場を広げている

「伝統を受け継いでいく責任を受け止めつつも、“この時代に合っている”と、同時代を生きる人々に共感してもらうことも大切です。そして後世の人々がその作品を見て、十六世の頃はこんな時代だったと想像できるものを作りたい。朝日焼は、そうして400年間続いてきたのですから」

宇治川に架かる朝霧橋が見える窓辺。豊かな宇治の自然を眺めながら、新しいお茶の楽しみを発見してみては

 暑さが落ち着き、すがすがしい秋の風が吹き始めると、温かい日本茶がいっそうおいしく感じられるはず。宇治のお茶文化とともに歩み、今この時代だからこそ心地よいお茶のあり方を提案する「朝日焼 shop & gallery」に、ぜひ足を運んでみてください。(撮影/津久井珠美 文/大橋知沙)

【朝日焼 shop & gallery】
0774-23-2511
京都府宇治市宇治又振67
10:00〜17:00
月曜(祝日の場合は翌日)、毎月最終火曜定休
京阪宇治駅から徒歩7分、JR宇治駅から徒歩17分
http://www.asahiyaki.com

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