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「徳島」の名付け親が築いた城跡で、歩きやすい登城道を散策

  • 徳島城(1) 文・写真 城郭ライター 萩原さちこ
  • 2017年9月11日

徳島城の内堀と石垣。内堀には海水魚が顔を見せることもある

 徳島市の中心部に位置する徳島城は、JR徳島駅から北へ徒歩10分ほどのところにある。登城口はいくつかあるが、まずは三木郭に復元された鷲の門を目指そう。鷲の門は、1875(明治8)年に城が破却された際に町のシンボルとして残された唯一の遺構だった。惜しくも空襲で焼失してしまったが、1989(平成元)年に市政100周年を記念して復元されている。なんと、全国でも珍しい個人寄贈の城門だ。脇戸付きの薬医門形式で、南脇には御番所が付属する。

復元された鷲の門。個人寄贈された例は、全国的にも珍しい

 鷲の門の瓦を見上げると、築城した蜂須賀家の家紋である「卍」が刻まれている。徳島城を築いたのは、四国平定後に豊臣秀吉から阿波一国を与えられた蜂須賀家政だ。はじめは近隣の阿波一宮城に入ったが、翌1586(天正14)年から徳島城を築いて藩政の中心地と定めた。徳島の夏の風物詩でもある阿波踊りは、落成の祝賀行事として城下の人々が踊ったのがはじまりといわれている。

瓦には、築城した蜂須賀家の家紋である卍が施されている

徳島といえば、阿波踊り。徳島駅前のポストにも阿波踊りのオブジェが乗る

 蜂須賀氏といえば、家政ではなく正勝(小六)を思い浮かべる人も多いだろうか。斎藤道三の後に織田信長、その後豊臣秀吉に仕え戦功を挙げた尾張出身の武将だ。家政はその嫡男で、父の正勝とともに信長・秀吉の家臣として奮闘した。信長没後の山崎の戦いや賤ヶ岳の戦い、1585(天正13)年の紀州征伐などで活躍。四国攻めの武功により秀吉は正勝に阿波一国を与えようとしたが、正勝が辞退したため家政が拝領したという。

 この地を「徳島」と命名したのも、家政だったといわれる。城が吉野川の河口、助任川と寺島川に挟まれた三角州に位置する“島”にあるからだ。これに縁起の良い“徳”を組み合わせたという。城は標高61.7メートルの猪山に築かれ、本丸、東二の丸、西二の丸、西三の丸が階段状に並ぶ構造で、山麓には御城と呼ばれる居館があった。

徳島城内に建つ、蜂須賀家政公像

 城内に入る前にチェックしておきたい、全国唯一の現存遺構がある。御城(現在の徳島城博物館)西側にある寺島川沿いの石垣に残る「舌石」だ。この石垣には15〜17間おきに屏風折れ塀と呼ばれる攻撃場が設置され、張り出した部分から横矢を掛けるようになっていた。舌石は、その張り出しの柱を支える台石だ。JR徳島駅と線路がかつての寺島川で、舌石は線路側に向けて飛び込み台のように設置されている。陸橋の上から、石垣からその様子が見られる。

寺島川に向け、射撃場が設けられていたという

下石。横矢を掛けるための張り出しの台座を支えたとされる

 さて、城内へ入っていこう。登城ルートは三つあり、いずれも整備されて歩きやすいのがうれしい。散歩する地元の人々とすれ違う、とても居心地のよい場所だ。下乗橋が城の正面玄関にあたり、橋を渡ると石垣で囲まれた空間が残る。四方を囲む、厳重な枡形門の跡だ。下乗橋はここで駕篭(かご)を降りたことからそう呼ばれ、かつては木製の太鼓橋だった。

 驚いたのは、内堀に海水魚の姿を見かけたことだ。城が吉野川河口付近に位置するため、海水が堀の水に混ざっているのだという。城内には海蝕痕があり、説明板によれば6,000〜5,000年前頃(縄文時代早〜前期)にはこのあたりは海だったようだ。

下乗橋の先には枡形門があり、ここから城内へ入った

 徳島城は、天守が本丸ではなく東二の丸にある珍しい構造だ。本丸の天守は元和年間(1615〜24)に取り壊され、東二の丸に三重の天守が築かれた。城下からの見映えを考慮してのことだろうか。1615(元和元)年の武家諸法度後であることを考慮すると、天守代用の櫓であった可能性が高そうだ。東二の丸は山の稜線から突き出すように設けられた曲輪であるから、周囲がよく見渡せられるだけでなく、城下からもよく見えたのだろう。

かなりの迫力がある、弓櫓台の石垣。ここを上がると本丸にいたる

天守は本丸ではなく、東二の丸にあったという。三重三階で、天守台はなかったと考えられている

(つづく。次回は9月18日に掲載予定です)

交通・問い合わせ・参考サイト

徳島城
JR「徳島」駅から徒歩約10分
088-656-2525(徳島城博物館)
徳島城博物館のページはこちら

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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