京都ゆるり休日さんぽ

定番に旬の彩りを添えた京都の洋食「プチレストランないとう」

  • 2017年9月22日

 「日本の洋食は、洋風の“和食”。明治時代に日本に入ってきた欧米料理を、日本人が創意工夫を重ねて育ててきたものです。せやから親しみがあって、ごはんやみそ汁にも合う。洋食を食べるということは、日本独自の食文化にふれるということなんです」

路地の入り口に掛けられたのれんが目印。一見洋食店には見えない風情がかえって京都好きの心をつかむ

 御所南の洋食店「プチレストランないとう」のシェフ、内藤毅彦(ないとう・たけひこ)さんはそう言います。つい先月、京都の生麩(なまふ)専門店「麩嘉(ふうか)」がニューヨークにオープンしたレストランに招かれ、京都の洋食の味を紹介してきたばかり。厚切りのとんかつも、うまみたっぷりのデミグラスソースのハンバーグも、日本人が生み出した和製洋食の形なのだそう。「ないとう」のひと皿は、そんな元祖洋食とも言えるなじみの献立に季節の味覚をちりばめた、素朴さと繊細さが共演する料理。とりわけ、夜のコースで提供するメイン料理をハイライトで味わえるランチは、連日行列ができるほどの人気ぶりです。

スペシャルランチBセット(2600円・税込み)。メインには前菜と手摘みベビーリーフのサラダ、ごはん、豚汁、デザートと食後のドリンクが付く

 スペシャルランチセットはAとBの2種類があり、こちらは養老ヒレとんかつ、和牛ハンバーグに、本日の海鮮フライが付くBセット(Aは海鮮フライの代わりに「本日のクリームコロッケ」)。

季節のお突き出し(前菜)は、今まさに旬の食材を使ったおもてなしの一皿

 季節ごとに変わる前菜は、この日は「いちぢくととうもろこしの冷製」。名残のとうもろこしをムースのような口当たりに仕立て、旬真っ盛りのいちぢくと生ハムを合わせた美しい一品。「高級料亭のように旬を“先取り”するのではなく、季節と歩幅を合わせて、今まさにおいしい食材を使うようにしています。その方が味が良く、手頃な価格で提供できますから」と内藤さんは語ります。

ずっしりと分厚い見た目に反して、柔らかで甘みのある養老豚の肉質と、油の重さを感じさせない衣のおかげで、するりとおなかに収まる

 自慢の揚げ物は、京都の老舗・山中油店の圧搾(あっさく)なたね油でカラリと揚げたもの。厚さ2cm近くある養老ヒレとんかつは、サクサクの衣の後にやってくる、想像を超える肉の柔らかさにうなります。ボリュームたっぷりのメインと、前菜や海鮮でリアルタイムの季節を感じられるコース料理のような構成に、人気の秘密がうかがえます。

築100年以上の古民家を改装した店内。ライブ感あふれるカウンターや庭のしつらえも楽しめる

 石畳の細い路地と奥まった玄関が迎えてくれる、いかにも京町家といった風情にも心が躍ります。一歩店に入ると、入り口の小ささからは意外なほどの開けた空間が。揚げ物の音や肉を焼く様子が目の前で繰り広げられるライブ感たっぷりのカウンターに、枝垂れ桜が植えられた坪庭があり、座敷や個室も用意されています。店内には季節を伝える花がいけられ、しつらえた掛け軸や絵画、窓から眺める庭の風景も少しずつ変わります。

掘りごたつの座敷席には小さな庭や床の間も。他に、蔵を利用したテーブルの個室もある

 「店のしつらえや、料理ができあがる様子、季節の食材や味わいなどが、一緒に来た人との会話を楽しむきっかけになればうれしいです」

シェフの内藤毅彦さん。「プチレストラン」の名の通り小さい洋食店からスタートし、現在の場所に店を構えて13年になる

 素材の味を引き出し、うまみや食感などの細部にまで気配りされた「和」の感性で、日本人が独自に発展させてきた洋食文化。現在のように家庭料理にも広がる以前は、洋食といえば、家族のごちそうだったに違いありません。京都の洋食好きがこぞって「ないとう」の名前を挙げるのは、洋食に込められた和の心と昔なつかしいぜいたく感に、心が浮き立つからではないでしょうか。(写真/津久井珠美 文/大橋知沙)

石畳を歩いて向かうアプローチにも期待が高まる。扉を開くと、揚げ物やデミグラスソースの匂いにどこかほっとする

【プチレストランないとう】
075-211-3900
京都市中京区柳馬場通夷川上ル5丁目232
11:30~14:30(14:00LO)※ランチは水~日曜のみ 18:00~20:00最終入店
月曜定休
地下鉄烏丸線丸太町駅5番出口より徒歩7分
http://petitrestaurant-naito.com/top.htm

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