世界美食紀行

大自然がくれた美の恵みに感謝! マオリ文化が息づく「ロトルア」へ

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2017年10月2日

火山国ニュージーランドは、日本と同じ温泉大国。なかでも有名な温泉地域がロトルアです。タウポ火山帯によって火山台地が形成され、三つの活火山による活発な地熱活動が豊かな天然温泉の恵みを湧出(ゆうしゅつ)しています

 あたり一面に、もわんと立ち込める湯けむりに包まれた硫黄臭。日本人ならかぎ慣れたこのにおい。あぁ、温泉だ。

 ここはニュージーランドの北島、ロトルアにある温泉スパ施設「ヘルズゲート&ワイオラスパ」。ねっとりと水分を含んだ泥を押し上げるように、地底からふつふつとえたいの知れない気泡が湧き出るさまは、日本人の私はどうしても「別府地獄めぐり」を想起するわけですが、ニュージーランド人もやっぱり地獄をほうふつしたのですね。この泥温泉を「ヘルズゲート(地獄への門)」と名づけたわけです。

見苦しくてすみません!「ヘルズゲート&ワイオラスパ」では、インストラクターから、ほお(成分が目に入らないように目より上には塗らない)からつま先まで、これくらい厚めに泥を塗るように指導されました

 ミネラルを豊富に含むサラサラとなめらかな泥湯は、美肌にいいといわれているのはご存じの通り。こちらでは、地底熱の温度差を生かした軽いエクササイズ効果のある温浴プログラムが組まれています。

 インストラクターの指示に従って熱めの泥湯を全身に塗り、一度上がって乾かし、もう一度熱い湯につかって泥を落とし、天然のミネラルウォーター(超冷水)のプールで肌を引き締めたら、ぬる湯でくつろぐのが一連の流れ。オセアニアではダイエットも期待できるといわれているそうで、この日はオーストラリア女子ペアの女子旅がふた組と、「ガールフレンドをもっと美人にする」というタトゥーだらけのアメリカ人カップルが訪れていました。

スパ後のランチは「スパ・クイジーヌ」をチョイス。ヘルシーなスパメニューといえどさすがニュージーランド、ワイン必須のおつまみ盛り合わせみたいなプレートです。マオリが手がけるワイナリー「トフ」の白ワインは絶品

 そして私はここで、すごいものに出会ってしまったのです。それは「ミリミリ・マッサージ」。これは先住民マオリに伝わる民間療法で、中央ポリネシアあたりから上陸したとされるマオリは、伝統療法の知識と温泉の効能を利用して、戦いの傷を癒やしていたと言われています。

 私を担当してくれたセラピストはマオリのアロワ族の一員。技術は基本的に口伝で、一族の中でも施術に適した手を持つ娘にだけ伝えられるそうです。彼女の場合は、ミリミリの名手だった祖母の娘である母親も、自分の姉も不適格とされ、彼女にだけ伝承されたとか。現在はそんな伝統療法と、人体構造学や生理学といった西洋医学の現在知識を組み合わせて、安全で科学的に効果のある施術を提供しています。

14世紀ごろに中央ポリネシアあたりからやって来たマオリが上陸したといわれるロトルアはいまもマオリ文化の中心地です。ラグビーのオールブラックスでも有名なマオリの戦いの舞踊「ハカ」は迫力満点でかっこいい

 このトリートメントがもう……。“痛気持ちいい系”のアジアのマッサージとはまた違い、疲労やコリが溜まったところにふっくらした温かい手を押し当て、身体の深部にじんわりと働きかけるような、ゆったりとしたストロークなのです。疲れが抜けにくくなった大人にこそ、これは効く。観光もしたいしものは試しと、3時間のフルコースを選ばなかったことをいまも後悔しています。

深い森林に包まれて渓谷を眺め下ろす「ツリートップス ロッジ&エステート」の客室。写真のリビングのほか渓谷に面してベッドルームとアウトドアテラスがあり、広々としたバスルームにはバスタブ完備。湯量も豊富でアメニティーも充実

 ロトルアの自然とマオリの知恵に癒やされて、宿泊先に早めに向かいました。目指すのは森と渓谷に包まれた「ツリートップス ロッジ&エステート」。ロッジといっても独立したヴィラタイプの客室が点在するウルトララグジュアリーなネイチャーリゾートで、5ツ星ホテルを超える設備とサービスを備えています。

宿泊ゲストがなんとなくラウンジに集まるとアペリティフの始まり。ニュージーランド産のビールやワインとアペタイザーが無料で振る舞われます。7月はこちらでは冬のはじめ。日が暮れるとちょっぴり肌寒く暖炉の火がうれしい

 ニュージーランドといえば、手つかずの大自然を楽しむアウトドア好き向けの旅先というイメージがありますが、こんな風に優雅に大自然と触れ合うのも、またニュージーランド流。都市とはかけ離れた自然環境は好きだけれど、できればお風呂なし生活やテント泊はパスしたいし、虫も苦手……というへなちょこなネイチャー派の私にとって、このロッジはまさに打ってつけ。こんな自然の楽しみ方があるのかと、新しい発見をした気分。

四駆でなければ移動できない手付かずの広大な敷地のなかには、七つの川と四つの湖。どこからが畑でどこからが自然か境界線があいまいな土地ではさまざまな野菜やハーブ、また野生動物も生息していて食材を敷地内で調達しています

 そうそう、人里離れたこのロッジでは、1泊2食つきの滞在が基本スタイルですが、食材の大半をロッジの周りで確保したという料理がまた格別で、ロッジ滞在の満足度をグーンと押し上げたことを付け加えておきます。

北島のロトルアからワンフライトで向かったのは、南島最大の都市クライストチャーチ。「ガーデンシティ」と呼ばれる公園が豊富な街で、20世紀はじめのエドワード朝時代のコスチュームを着た船頭さんによる川下り「パンティング・オン・ジ・ エイボン」が名物のひとつ

かわいらしい街並みを路面電車が走る風景はどこかヨーロッパ的。ちなみに牧畜が盛んなニュージーランドは乳製品のクオリティーが高く、世界一アイスクリームが好きな国民とも言われています。そんなアイスクリームにカラフルなトッピングをして、食べながら街を散策するのが楽しい

■MEMO:旅と持ちもの

「ヘルズゲート&ワイオラスパ」の泥湯は、基本的に男女混浴で水着を着用して入浴します。泥湯には超微粒な泥が豊富に含まれているため、お湯から上がると水着がうっすら泥色に染まる可能性も。肌の露出が多いほうが泥パックを全身に塗ることもできるので、水着はスポーツタイプより布面積の少ないビキニで色の濃いものをおすすめします。

■取材協力:

ニュージーランド航空

ニュージーランド政府観光局

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PROFILE

江藤詩文(えとう・しふみ)トラベルジャーナリスト

江藤詩文

トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」シリーズ3巻。「江藤詩文の世界鉄道旅」を産経ニュースほかで連載中。

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