京のひと皿

京都でお月見、甘く美しい「かざり羹」をおともに

  • 文・写真 村瀬佳子
  • 2017年10月5日

高杯に美しく盛りつけて、お月さまにお供えしたくなる「かざり羹(かん)」。秋の名月観賞のおともに

  • 高杯に美しく盛りつけて、お月さまにお供えしたくなる「かざり羹(かん)」。秋の名月観賞のおともに

  • 中秋の名月のような「バニラポワール」。洋梨とバニラがやさしく香る白餡の生地に、ハーブ(ディル)風味の餡と、干したりんごとあんずが飾られています

  • アンティークのショーケースに並ぶのは、「かざり羹」と命名された、わらび粉や寒天などを使った新感覚の和スイーツ。定番の紅茶やレモンなどのほか、季節ごとの味わいがたのしめます

 お月見というと旧暦8月の十五夜。2017年の中秋の名月は、ちょうど昨日10月4日でした。見逃してしまったという方も、ご安心を。実は、十五夜の暦と月の満ち欠けには少しズレがあり、満月になるのは明日6日だそうです。

 さて、芋名月とも呼ばれる十五夜は、芋類の収穫を祝う行事でもあります。お月さまに里芋やさつまいも、さらには旬の梨などの果物を供えて、秋の実りに感謝します。

 今月の「京のひと皿」は、そんな名月鑑賞のおともにしたい甘味をご紹介します。菓銘は、バニラポワール。秋の味覚、洋梨に白あんを合わせ、バニラの香りをまとわせた新感覚の和菓子「かざり羹(かん)」です。天に捧げんとばかりに高杯(たかつき)に盛られたその姿は、まるで満月をうつしたよう。しばらく食べずに眺めていたくなってしまいます。

 つくっていただいたのは、1927年創業の甘味処「梅園」の3代目、西川葵さん。「あんこの魅力を幅広い層に伝えたい」と京都の和菓子の世界に新しい風を吹き込む女性職人のひとりです。

 「どうぞ」と、やさしい笑顔にうながされて、美しいお菓子を口に運ぶと、白餡の中にフルーツの香りとスパイスやハーブの甘い芳香が広がります。口溶けは、水ようかんのようにさらり。気づいた時には、満月のようにまん丸だったお菓子があっという間に欠けて、お皿だけになってしまいました。

 ところで京都では、月を「お月さん」と呼んで、その満ち欠けをめでる風習が残っています。中秋の名月の後は、だんだんと出が遅くなり朝まで夜の空を照らす下弦の月を眺めて秋の夜長をたのしみ、新月を経て、今度は月が次第に満ちていくのを待つのです。「お月さん、はよ丸なってくださいね」と……。

 こうして十五夜の後のひと月、待ちに待った次の満月(正確には一歩手前の十三夜の月)は、「後の月」または「名残の月」として平安の昔から愛されています。これから1ヵ月は、月がもっとも美しいときです。今秋の京都旅行では、おいしいお菓子をいただきながら、夜空を見上げてみるのはいかがでしょうか。

旅のメモ帖

 「かざり羹」がいただけるのは、西陣の「うめぞの茶房」。築100年以上の京町家を改装した店内には、1階にお菓子が並ぶショーケースと工房、2階にイートインスペースがあります。秋限定のバニラポワールのほか、春には桜やよもぎ、夏にはマンゴー、冬には柚子など四季折々の味わいをたのしめるのが魅力。千利休にゆかりの深い大徳寺からも近く、西陣散策の途中で立ち寄って、おいしいお茶と和菓子を味わいたい隠れ家のようなお店です。

 市街地散歩のひと休みに訪れたいのは、2017年7月12日にオープンしたばかりの「甘党茶屋 梅園 三条寺町店」。名物の四角いみたらしだんごはもちろん、黒糖わらびもちや白玉あんみつなどの甘味5種をセットにした寺町点心などがたのしめます。

うめぞの茶房
住所/京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
電話番号/075-432-5088
営業時間/11時〜18時30分(ラストオーダー18時)
定休日/不定休

甘党茶屋 梅園
三条寺町店
住所/京都市中京区天性寺前町526
電話番号/075-211-1235
営業時間/10時30分〜19時30分(ラストオーダー19時20分)
定休日/無休

http://umezono-kyoto.com/

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PROFILE

村瀬佳子(むらせ・よしこ)

Chisen「菓子店千茜」主宰、翻訳者。京都生まれ京都育ち、東京と仏ローヌでの武者修行ののち京都にUターン。2015年1月、京都岡崎に開業したフランス菓子店をひとりで切り盛りする傍ら、菓子教室や味覚教室、子どものためのアトリエ活動を行う。日本とフランスの製菓材料企業でのプランナーを経て、生産者とのつながりを大切に、素材ひとつひとつにこだわり、しあわせの香りが口いっぱいに広がるような菓子と料理、食べることのたのしみを提案する。http://chisen.main.jp

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