世界美食紀行

フィリピン、避暑地で楽しむオーガニック野菜と行列のできる名物スイーツ

  • 文・写真 江藤詩文
  • 2017年10月23日

マニラから約2時間のセレブご用達の避暑地タガイタイにあるナチュラルリゾート「ソニアス・ガーデン」。花とレースにあふれたロマンチックなリゾートで、ゲストルームにはレースの天蓋(てんがい)つきのお姫様ベッドがありました

 フィリピンのファインダイニングで美食を楽しむというと、やはりいま勢いのあるマニラが中心になります。けれども、たとえば関東には東京だけでなく横浜や鎌倉があるように、マニラから足を延ばした先にもちゃんと美食エリアがありました。その名は「タガイタイ」。

「ソニアス・ガーデン」の朝ごはん。アンティークの器使いにもセンスが現れています。ここはフィリピンの伝統療法「ヒロット」のセラピストの養成スクールを支援していて、施設は豪華ではありませんが技術力はめちゃくちゃ高い!

 マニラから南に向かって車で約2時間に位置するタガイタイは、高層ビルがひしめき交通渋滞が激しいマニラからエスケープするための避暑地として人気があります。標高が高いためマニラよりぐっと涼しく、タール湖に向かって開けた緑豊かな土地は空気もよくて(風水的には運気もいいと言われているとか)、富裕層や芸能人、有名人などセレブの別荘地にもなっています。東京から1番近い避暑地として知られる軽井沢のようなイメージでしょうか。

フィリピンのスターシェフ“トニーボーイ”のファインダイニング「アントニオス」。中庭の小さな東屋がバーになっていて、到着したらガーデンでオリジナルカクテルを味わい、ひと息ついてからダイニングへ移動して食事を楽しみます

 ちなみに、マニラのシェフにとってタガイタイといえば、オーガニック野菜の名産地。気温が適度に涼しく、水に恵まれ、農薬を使ったことのない栄養豊富な土地がたくさんあるため、オーガニックファームを開墾するのにぴったりというわけです。マニラにレストランを構え、タガイタイの自家農園からオーガニック野菜を運ぶという2拠点スタイルも多いのですが、タガイタイに根ざした地産地消のファインダイニングもあります。その筆頭が、フィリピンのスターシェフ“トニーボーイ”が手がける旗艦店「アントニオス」です。

フレンチといっても自家農園の野菜がたっぷり使われていて食後が軽やかなのが「アントニオス」の料理の特徴。前菜はオーガニック野菜と2種類のキヌアのサラダ仕立て、ヤングコーンのチーズ焼き、3種のソースで味わう新鮮なオイスターなど

 古い邸宅をリノベーションした一軒家レストランは、天井のシャンデリアや床のモザイクが洗練されていてエレガントな雰囲気。手入れの行き届いたガーデンも美しく、ここでウェディングフォトを撮影するカップルも多いそう。最近ではインスタスポットとしても有名です。料理は、すぐ近くの農園から採取したオーガニック野菜をふんだんに使った、軽やかでオーセンティックなフレンチ。フィリピンからはじめて「アジアのベストレストラン50」にランクインしたこともあります。

熱したバナナの葉で身体を温めてから施術を行うなど、「ヒロット」の技術を取り入れたオリジナルトリートメントの先駆けの1軒が「ナーチャー ウェルネス ヴィレッジ」。数日から数週間しっかり滞在するプログラムもありますが、日帰りスパを楽しめるのもうれしい

 マニラから日帰りや1泊2日で来る場合、ここでランチをして思う存分写真を撮り、フィリピンの伝統療法マッサージ「ヒロット」を受けて帰るのが、意識の高いマニラっ子たちの休日の過ごし方とか。というのもタガイタイは健康意識の高いリゾート地として開発が進められていて、オーガニック農園やハチミツ農園などとともに、ヒロットの普及やセラピストの育成にも力を入れています。

 そのため自然に包まれたホテルつきリゾートもいくつかあり、本格的なヒロットを受けることができます。前回リポートした「The Farm」がひっそりとおこもり系、カップルや大人の女性向けなら、こちらはもっとカジュアルにグループでの女子旅を楽しむのによさそう。

トリートメント後のリフレッシュメントに「ナーチャー ウェルネス ヴィレッジ」でいただいたのが、ケールとパッションフルーツのジュース。ここは自家農園を所有していて、オーガニックの野菜とハーブを使ったフィリピン家庭料理に定評があります

 そして。タガイタイを訪れたなら、誰もが必ず買うと言っても過言ではないおみやげがあります。それは「ブコパイ」。「ブコ」とはフィリピンのことばでヤングココナツのこと。食と言葉は密接な関係にあり、たとえば日本語には外国人がうんざりするほどたくさん魚や海藻の固有名詞があるように、フィリピンにはココナツを樹齢やパーツごとに呼び分ける名詞があるのです。

これがやみつきになる「ブコパイ」! 要はヤングココナツをココナツミルクとコンデンスミルクで煮ただけのシンプルなお菓子ですが、朝採れの新鮮なヤングココナツの実を削り出し、完熟のオールドココナツのミルクも絞りたてを使うので、この味が出るのですね

 で、焼きたてアツアツのこの「ブコパイ」。何層にも重なったココナツの実が、とろんとやわらかく甘みを増していて、ココナツ特有のあのまったりした濃密な味わいの中に、サックリ焼きあがった素朴なパイがアクセントになってもうやみつき。普段はスイーツにそこまで情熱を燃やさない(アルコール派なので……)私ですが、レシピを習いに行ってしまいました。

タガイタイにはいくつもブコパイの専門店がありますが、私のお気に入りはその中の2軒。保存料などは一切使用していません。店前では行列ができ、焼きあがるそばから5箱も10箱も買って行きます。マニラでも見かけることはありますが、なぜか味が落ちるのですよ……

 しかし……。残念ながら東京ではフレッシュな朝採れのヤングココナツなど手に入るはずもなく、レシピを生かすすべもなし。そのうえフレッシュなブコは日持ちがしないため、タガイタイに行かないと食べられません。マニラに行ったらタガイタイ。ブコパイのためだけに、2時間ドライブする価値ありです。

タガイタイではこちらもおすすめ。同じくフィリピンのスターシェフ“トニーボーイ”が手がける「バライダコ」は、タール湖を一望する抜群の眺望を楽しみながら、モダンにアレンジしたフィリピンの伝統料理や家庭料理を味わえます。アントニオスと甲乙つけがたい魅力あるレストランです

■取材協力:

フィリピン政府観光省

フィリピン航空

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PROFILE

江藤詩文(えとう・しふみ)トラベルジャーナリスト

江藤詩文

トラベルジャーナリスト、フードジャーナリスト、コラムニスト。その土地の風土や人に育まれたガストロノミーや歴史に裏打ちされたカルチャーなど、知的好奇心を刺激する旅を提案。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。著書に電子書籍「ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~」シリーズ3巻。「江藤詩文の世界鉄道旅」を産経ニュースほかで連載中。

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