歴史初心者でも楽しめる岐阜県・岩村城跡、苗木城跡へ

  • 文・写真 干川美奈子
  • 2017年11月22日

岩村城本丸の六段石垣。近くで見ると段ごとに石垣の積み方が違うので、造られた時代が違うのがわかる

 「国内の城や遺跡めぐりのブームが続いていますが、歴史に詳しくない人なら、城跡よりも建物があったほうが楽しめますよね?」。城めぐりを趣味にしている知人にそう質問したところ、「巨石を積んだ石垣の迫力や眼下に広がる景色に『うわあ、すごい』と素直に喫驚・感動・感激できる感性の持ち主なら、城跡に素人が行っても楽しめますよ。規模は違いますが、パルテノン神殿とかマチュピチュと同じです。あれだって原型は残ってないし、専門的な知識がなくても、『うわあ、すごい』ってなるでしょ?」と言われました。

 「なるほど!それなら」と向かったのは、岐阜県恵那市にある岩村城跡と、同・中津川市にある苗木城跡。知人によると、どちらも石垣が多く残る山の上の城跡で、近年観光客が増加しているそうです。歴史初心者の目線で感動した点を、ガイドさんの解説を織り交ぜつつ、三つずつ紹介します。

織田信長の叔母さんが「女城主」だった時代もある岩村城

1.悲劇の女城主がいた

急坂が続くものの、道は石で舗装してあって上りやすかった

 1185(文治元)年に源頼朝の重臣・加藤景廉(かげかど)によって築かれたと伝えられている美濃・岩村城。「備中・松山城」「大和・高取城」と並び、日本三大山城と呼ばれています。

 今年のNHK大河ドラマは「おんな城主 直虎」ですが、同じ戦国時代末期の岩村城城主は、織田信長の叔母で遠山景任(かげとう)の妻、おつやの方(お直の方、修理夫人という説も)。おつやの方は三度目の結婚で遠山景任に嫁ぎ、信長の実子・御坊丸を養子として迎えますが、景任が病死したために女城主となります。

 その後、武田信玄の重臣・秋山虎繁との戦いが起こり、戦の被害を最小限にとどめるため、御坊丸を養子にすることを条件に虎繁と4度目の結婚をします。敵将の妻となった結果、信長によって殺される最期を遂げた悲劇の女城主です。

 どんな人がその城を治めていたかを知るだけで、親近感が生まれるもの。直虎のいた浜松市井伊谷と岩村城のある恵那市岩村が車で約2時間ということもあり、今年は両方を訪れる観光客も多いそうです。

2.CGがすごい

説明看板のQRコード。読み取ると、復元したCG画像を見ることができる

 岩村城の標高は717メートルなので、延々と急な坂道が続きますが、本丸まで続く道のりは石畳なので思っていたよりも歩きやすいように感じました。最初にたどり着くのが「一の門」。要所要所に説明看板があって親切です。「今どき!」と驚いたのが、説明看板にQRコードがあり、スマートフォンでそれを取り込むと、当時の門や建物が再現されたCGが見られ、解説が聞けるところ。石垣しか残っていなくても、当時をイメージしやすいのです。これなら子どもも夢中になると思います。

 一番の見どころと言われているのが本丸の六段石垣です。江戸時代後半に造られたもので、最初に最上段の石垣を造り、石垣が崩れないよう、その前面に五段分の石垣が造られていったのだそう。この六段石垣から山頂に向かって道は狭くなり、積み上げられた石で城が守られていたのが分かります。

井戸はいくつかあるが、こちらは城主専用の「霧ヶ井」。説明看板によると、今も水が湧き出しているそう

 城主専用井戸「霧ヶ井」も注目の場所です。城主が蛇の骨を投じると城を覆うほどの霧が出て敵の侵略を回避したという言い伝えがあるそうです。

 山には木々が生い茂っていて暑さを軽減してくれていますが、敵が簡単に山頂まで行けないよう、当時はもっと道が細く、敵が来たらすぐわかるように木は切ってしまっていました。かつて、ここを必死で登っているうちに、上から石ややりで攻撃された人がいたのだなと思うと切なくなります。

3.歩きがいのある城下町がある

風情のある城下町。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている

 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された城下町が約1.3km続くので、歴史にそれほど興味がなくても、古い町並みを写真に撮ったり歩いたりして楽しめます。

 「女城主」にちなんで、各店ののれんには、店のおかみさんの名前が刷られています。岩村藩鉄砲鍛冶(かじ)の加納家をはじめとした旧家を見学したり、郷土料理の「五平餅」を食べ歩きしたり、400年前に掘られた井戸の水を使った日本酒「女城主」を造る岩村醸造で試飲させてもらったり、江戸中期に岩村藩医が長崎から学んできて御用菓子司に伝授されて名物となった松浦軒本店の「カステーラ」をお土産に買ったり……。お店の方と話をしているうちに、あっという間に時間が経っていて、店の外に出たら薄暗くなっていました。街の灯りにも風情を感じました。

人より大きい巨岩がごろごろ 昔話の舞台になりそうな苗木城

1.「一万石大名で唯一の城持ち」にロマン

本丸から大矢倉(おおやぐら)を臨む。霧が立ち込めて幻想的

 地図で岩村城を探すと、そこから北に直線距離で約20キロメートルくらいの場所に苗木城があります。創設は1520年代。遠山景徳(かげやす ※景長とも言われる。景徳と景長は同一人物との説あり)か、景長の養子の正廉(まさかど)が築城したと言われています。岩村城と同じく、加藤景廉を祖とする遠山家の一族です。

 私財で造った城のために予算がなく、屋根は瓦ではなく板ぶき、壁も白漆喰(しっくい)ではなく、赤土のままと簡素なものだったようです。天守は瓦屋根にしゃちほこというような豪勢なものではなかったため、記述でも天守閣ではなく、「天守」「天守台」とされています。

 本能寺の変の後の1583年に、遠山友忠・友政親子は豊臣秀吉に城を追われて徳川家康側に身を寄せますが、1600年に友政は関ケ原の戦い前に城を奪還し、苗木領一万五百二十一石の大名になります。一万石大名で城を持っていたのは遠山氏だけで12代まで領地替えもなく、この地を収めたそうです。遠山氏は関ケ原の戦いから家康側についた外様大名ということを考えても、ロマンを感じます。

苗木遠山史料館にある城山模型。天守が大きな岩の上に建っているのがわかる

2.巨大な岩に圧倒

 苗木城も岩村城と同じく、道が整備されているので歩きやすい坂道が続きます。自然にできた巨大な岩石がゴロゴロしている山の上に造ったため、石垣に巨岩がそのまま利用されている場所もあり、自分の背丈を優に超える岩の石垣は圧巻の迫力です。

 城は1520年代に着工し、最終的に完成したのは1640年代。当初は石垣を積む技術も、石を削る技術もないため、ただ石を積むだけだったのが、後半はきれいに削られた石が積まれるようになったそうで、時代の変化の様子がうがかえる石垣もあります。

 こんなに石が多いので、井戸を掘るのはさぞかし大変だったろうと感じたのですが、岩に筋を掘り、雨水をためた井戸を作っていたために、水にはさほど困らなかったようです。

 人工的に造られた石垣ですが、大きな自然の岩石を利用しているせいか物語の舞台に入り込んだような気持ちで登りました。

風吹門(かざふきもん)跡。よそ者はこの門から中に入ることができなかった

3.眺望がいい

 天守があった場所には展望台が造られています。天守跡は標高432メートル、木曽川から170メートルの場所にあるので、眺望は最高!なはずが、この日はあいにくの雨で霧がかかっていました。別名霞ヶ城ともいわれるだけあり、うっすらと木曽川が確認できるくらいの濃霧。この霧で確かに天守は隠せますが、逆に霧の深い日に敵が上がってきても分かりづらいようにも感じます。この木曽川に続く「四十八曲り」は、参勤交代のときに使われた道。ここを下って川を渡り、350キロの道のりを7泊8日(冬は1日プラス)かけて江戸に向かったそうです。

「馬洗い岩」。大人の身長を優に超える大きな岩がたくさん

 晴れている日は下から見上げた眺めも良いようで、かつて城が兵糧攻めにあった際、本丸にある「馬洗い岩」と呼ばれる巨大岩の上に馬を乗せ、米をかけて体を洗い、さも豊富な水で洗っているように見せかけたという逸話も残っています。

苗木城帰りに目指したいのは、中津川駅前

 苗木城下の城下町は店がないので、お土産を買うなら中津川駅前にある「にぎわい特産館」だと、さまざまな品物が選べます。秋から冬にかけては中津川名物「栗きんとん」も販売されています。いまは都内にも出店しているお店もありますが、こちらの特産館では市内の和菓子屋さん14軒の栗きんとんが、1個ずつ7軒分と緑茶をセットにした「栗きんとんめぐり」(「風流」「ささゆり」各2000円)を購入できます。

歩き疲れたら、中津川名物の栗きんとんを。栗本来の味と優しい甘さが口の中に広がる

 栗きんとんは栗と砂糖を材料にして作られていますが、店によって砂糖の量、どのくらいの栗の粒を残すか、なめらかさなどが異なるので、食べ比べをすると違いがよくわかります。セットに入っていない店舗の商品をばら売りで追加し、15店分を購入して食べ比べに挑戦。結果、半分で食べきれなくなり、半分を翌日に持ち越してしまったところ、若干風味が落ちてしまった感がありました。無添加なので欲張らず、賞味期限にかかわらず、その日のうちに食べきれるだけ買うのが正解のようです。

●城跡ガイドの申し込み先
岩村城跡/いわむら観光協会HPから申し込み書をダウンロードしてメールかファクスで申し込み。岩村城址案内2500円、町並み(岩村城下町)案内2000円、町並み・城址案内3500円(いずれもガイド1人料金)。
http://iwamura.jp/

苗木城跡/中津川市苗木遠山史料館へ電話(0573-66-8181)、またはHPから申込書をダウンロードしてメール・ファクスで申し込み。個人客 9人以下500円、10~20人1000円。
http://naegi-toyama.n-muse.jp/

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PROFILE

干川美奈子(ほしかわ・みなこ)

ほしかわみなこ

編集者・ライター
10代後半から英語が公用語でない国を中心に海外チープ&ディープ旅をスタート。情報誌、海外ウェディング誌、クルーズ専門誌、女性向けビジネス誌などで旅記事を執筆。「プレジデントFamily」「プレジデント」をはじめとした編集部在籍経験を活かし、普段はビジネス、芸能、マネー、子育て、インタビューなど、雑誌・WEBの一般記事の編集・執筆に携わる。

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