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詩人を魅了した絶景とロマンチックな古城に誘われる街 ドイツ・ハイデルベルク

  • ルターの宗教改革ゆかりの地をめぐる
  • 2017年11月24日

「哲学者の道」から望むハイデルベルクの街並み

 中世のロマンあふれる古城と国内最古の大学がある学問の街として知られるドイツ・ハイデルベルク。かつてゲーテやショパンといった詩人や芸術家らも好んで訪れ、その美しさに魅了されたといい、現在も国内外から多くの観光客をひきつける人気の観光地だ。

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 ドイツのお城に、中世の面影を残す石畳の街並み……。それだけでテンションは上がるが、今回この地を訪れた理由はちょっと違う。ハイデルベルクが世界史的にも重要な「ある出来事」ゆかりの地で、今年はその出来事からちょうど500年の節目だから。ドイツでは、国内40カ所あるゆかりの地へ世界中から人が訪れる、ひそかなブームになっているのだが(実際、筆者のアメリカ人の知人も、この節目に「ある出来事」ゆかりの地を訪れています……)、この出来事、ピンと来る方いますか?

 答えは、「宗教改革」。1517年10月31日、ドイツの神学者マルティン・ルターは、ローマ・カトリック教会の贖宥状(しょくゆうじょう)、いわゆる免罪符の制度を批判する「95カ条の論題」を示した。それがきっかけとなり、キリスト教に新たな宗派プロテスタントが生まれるまでの一連の出来事が、「宗教改革」と呼ばれている。なんだか旅のテーマとしては難しそう……。でも聞けば、ルターの宗教改革ゆかりの地は、実は観光地としても魅力的だという。少し歴史をひもとけば、ひと味違った旅が楽しめるかもしれない。そんな思いでまずは、ハイデルベルクの街を歩いた。

「哲学者の道」にあるベンチに腰掛け、街を眺めながら、ひと息。17世紀に描かれたという絵画を見ると、街並みがほとんど変わっていないことがわかる

 まず向かったのが、ネッカー川の渓谷に建つハイデルベルク城と美しい旧市街を一望できる「哲学者の道」。ネッカー川の対岸の斜面につくられた散歩道だ。散歩道、と聞くと楽々歩けそうだが、実際は緩急混ざった坂道を上っていくので、運動不足さんにはちょっとしたハイキング。しかし、しばらく歩いた先に開ける景色は、(登り切った達成感とともに)声を上げずにはいられない、まるで絵画のような絶景。森に囲まれたハイデルベルク城と城下に広がるれんが色の旧市街。時の流れのように穏やかに流れるネッカー川にかかる「カール・テオドール橋」は美しく、また堂々としたたたずまい。ハイデルベルクは第2次大戦中、空襲を逃れたため、古い街並みが残った。ゲーテら多くの詩人がこの景色を眺め、思索にふけったのもうなずける。

カール・テオドール橋の入り口は二つの塔が目印。橋へ向かう道沿いにもおしゃれなカフェやレストランが並ぶ

 旧市街に戻り、メーン通り「ハウプト通り」を歩く。ここは、1.6キロにもわたる歩行者天国。道沿いには、レストランやカフェ、土産物店などが並ぶ。一本路地を入ると、小さな教会や古い建物が並び、タイムスリップしたような感覚に。1386年創立でドイツ最古のハイデルベルク大学の建物や図書館も点在する。

にぎやかなマルクト広場に面する聖霊教会。教会内のステンドグラスも必見

 マルクト広場周辺には「聖霊教会」や、1592年に建てられた「騎士の家」がホテルになった「ツム・リッター・ザンクト・ゲオルク」など見どころがたくさん。気になった店をのぞきながら歩くだけで楽しい。広場からカール・テオドール橋に向かう途中にある「クネーゼル」は、メダル型チョコレート「学生のキス」がお土産に人気。レトロな絵柄やハート形の缶入りもかわいく、つい買い込んでしまう。

ホワイトアスパラガスのスープ(左)と塩ゆでしたホワイトアスパラガスとシュニッツェル(右)。訪れた5月下旬はホワイトアスパラガスのシーズン。名物ホテル「ツム・リッター・ザンクト・ゲオルク」内にあるレストラン「リッターストウブ」でもホワイトアスパラガスのメニューが豊富だった

 橋を渡る前には、ぜひこの街で有名なサルにごあいさつを。このサルの銅像は左手に鏡を持っていて、サル像を笑うことは「実は自身を笑うこと」という戒めが込められているそう。鏡に触ると金運がアップするというジンクスも。サルの顔に頭をすぽっと入れることが出来るので、鏡を触りながら、記念撮影はいかが?

カール・テオドール橋近くにある、サルの銅像。撮影スポットとして観光客に大人気

 さて、ここで旅のテーマに戻る。ハイデルベルク大学の関連施設が集まる大学広場に、1518年、ルターがハイデルベルクを訪れたことを示す記念碑が埋め込まれている。

1518年、ルターがハイデルベルクで討論を行ったことを示す記念碑

 簡単に歴史をおさらいする。16世紀、ドイツではカトリック教会が、購入すれば罪がゆるされて天国に行ける、いわゆる免罪符を大量に発行していた。これが神の教えに反すると主張したルターの「95カ条の論題」は、普及し始めていた活版印刷技術によって、たちまちドイツ各地に広まり、やがて国を二分する大論争となった。

 ルターがハイデルベルクを訪れたのは「95カ条の論題」発表の翌年4月。当時、ルターはドイツ東部ウィッテンベルク大学で神学を教えていた。ルターの主張は、カトリック教会に公然と反旗を翻したものであり、聖職者や神学者に衝撃を与えた。そこで、彼が属する聖アウグスチノ修道会は、ハイデルベルクで開かれる総会にルターを招いた。その目的は、ルターを諭し、穏便に解決することだったが、逆にルターはその場でも熱く自説を展開し、その話を聞いて彼に賛同する者も出始めたと伝えられている。

 現在は大学広場となっている、ルターが討議した場に立ってみる。四面楚歌の中、彼はどんな思いで自らが信じる道を説き、教会の改革を訴えたのだろう。いろいろと想像をめぐらせていると、歴史の渦の中に吸い込まれていくような気分になった。

ハイデルベルク城からの眺望

 ハイデルベルクでぜひ訪れたい場所が、ルターも訪れたというハイデルベルク城。13世紀初めにプファルツ選帝侯の居城として築城され、増改築が繰り返されたため、ゴシック、ルネサンス、バロックの各様式の建築がみられる。

城門を進んだ先にある「フリードリヒ館」。ルネサンス期に造られた

 壮大な建築芸術を誇りながら、城は17世紀、三十年戦争などでフランス軍に破壊されてしまう。その後、十分に修復を行えないまま、18世紀には城に稲妻が落ち、ついに大部分が廃虚になってしまった。しかし、壁だけが残るたたずまいも、人気の理由の一つとなっている。バルコニーから見る旧市街の大パノラマも、哲学者の道からの眺望とは違った絶景だ。

緑豊かなハイデルベルク城

 ハイデルベルクは、日本便も発着するフランクフルトから電車で約1時間。フランクフルトからの日帰り旅行にもぴったりだ。ルターも歩いた古城の街へ、歴史とロマンを求めて、足を延ばしてみてはいかがだろうか。(&TRAVEL編集部)

■取材協力:ドイツ観光局

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