旅空子の日本列島「味」な旅

水と緑に育まれた歴史と農産物 人情の里・山県市

  • 文・写真 中尾隆之
  • 2017年11月30日

大桑城跡から市街や岐阜・金華山を望む

  • 石や苔を洗うように流れる円原の伏流水

  • ふれあいバザールで人気のざるそば定食

  • バザール5代目組合長の山口克己さん

  • 美山地区だけ栽培の桑の木豆と豆製品

  • 宿泊・キャンプのグリーンプラザみやま

  • 名産の伊自良大実連柿は晩秋の風物詩

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 先日、誘われて岐阜市の北隣に位置する山県市(やまがたし)を訪ねる機会があった。栗と柿の名産地である山県市は、郡上へ抜ける国道256号(高富街道)や福井・大野市に通じる国道418号の沿線に広がる高富町、美山町、伊自良村の合併で生まれた人口2万7000余の農山林のまちである。

 岐阜の中心街から長良川を渡って車で北上。旧高富町は江戸時代に陣屋が置かれた地だが、戦国時代からこの地方の行政・経済などの中心として栄えた。春は桜並木がみごとな鳥羽川に沿う道を経て、美濃国守護大名・土岐氏の拠点だった大桑(おおが)城のある古城山へ向かった。

 市役所観光担当者の話では、石垣や堀切、竪堀、幾重にも連なる曲輪が次々に現れ、壮大な山城だったことがしのばれ、標高407mの山上からは岐阜城のある金華山や濃尾平野が一望できるという。ふもとの大桑地区には城下町の区割りの遺構や土岐氏の菩提(ぼだい)寺・南泉寺など歴史の足跡を見ることができる。

 古城山を北に下った武儀川上流域を占める旧美山町はきれいな渓谷のある山林と製材の町。水栓バルブ製造の発祥地で、今も関連の会社が10社ほどあるとのこと。

 ここでの必見は、舟伏山のふもとへ神崎川をさかのぼった円原の伏流水。川が地上からいったん地下に潜って再び地上に出て岩間からこんこんと湧きあふれる水は、白い岩や緑のコケと映え合って透明感が増して見える。カルシウムを多く含む、全国でも数少ない硬水だそうで、1年を通じて水温は13℃とのこと。

 途中の瀬見峡の少し先の赤いトンガリ屋根が目をひくコテージ村・キャンプ場のグリーンプラザみやま(058-55-2615)や船越地区の地元野菜や漬物、みそ、コンニャク、菓子などの直売所と食事処のふれあいバザール(0581-53-2125)には県内外の客が多い。

 地元の人たち(組合員)が作る「ざるそば定食」(900円)などのソバやおこわもおいしかった。珍しいのは桑の木につるをはわせて育てるインゲン豆の一種の桑の木豆。国内では山県市美山地区だけの栽培で、さやはピンクのまだら模様、豆の色はほのかな緑、ほくほくして甘みがある。おこわやお菓子などにも使っている。

 城下の旧大桑村は“栗の王様”と呼ばれる高品種の「利平栗」の発祥地。和栗と中国栗を掛け合わせて生み出したのが旧大桑村の「利平治」の屋号の土田健吉さん。栗の町で有名な中津川市へはここからもたくさん送られているという。11月下旬、特産の伊自良(いじら)大実連柿のつるしの光景は青く高い秋天に映える晩秋の風物詩。訪ねれば自然や風物、人情がしみじみと心に響くまちである。

※写真協力:山県市、(株)地方創生

交通

・JR岐阜駅から高富までバスで約40分
・東海北陸自動車道関広見ICから車で約12分

問い合わせ

・山県市企画財政課 0581-22-6825
・山県市観光協会 0581-22-6830

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。
※文中の施設名のリンク先は楽天トラベルの情報ページです。

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PROFILE

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター

nakao takayuki

高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

風土47

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都道府県のアンテナショップの情報を集めたポータルサイト。全国的には知られていないけれど味も生産者の思いも一級品、そんな隠れた名品を紹介する「日本全国・逸品探訪」など様々な記事が掲載されている。

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