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日本人はまずいないエーゲ海のリゾート トルコ・ボズジャ島の思い出

  • &TRAVEL編集部
  • 2017年11月30日

トルコ・ボズジャ島の海岸。ヨットに乗って岩場でシュノーケリングを楽しむグループがいた

 エーゲ海に浮かぶ島で日光浴、というのは欧州の人たちの典型的な休暇の過ごし方だ。ミコノス、クレタ、サントリーニといったギリシアの島々に行けば、美しい景観の中でリゾート気分を満喫できるはずだ。それらの島は、日本からの多くの人が訪れる。

 ただ、冒険心あふれるバックパッカーではなくても、せっかくだから、まだあまり日本人が行っていないところを旅してみたい。そんな気持ちを持っている人のために、紹介したい島がある。

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 そこは、エーゲ海のトルコ領内にあるボズジャ(Bozcaada)島。どこに浮かぶ島かというと、トルコのヨーロッパ側とアジア側を分けるダーダネルス海峡の出口に位置している。エーゲ海の有名な島々からは北側になる。

 イスタンブールからは、長距離バスで行くことになる。ダーダネルス海峡沿いの道をひたすら西へ走り、最後はフェリーに乗って、まずはチャナッカレの街に向かう。チャナッカレは、トロイ遺跡観光の拠点として知られる。ここの港には、ブラッド・ピットが主演した映画「トロイ」で使われた木馬が寄贈されて、ヨットハーバー脇の広場に置かれている。絶好のフォトスポットなので、多くの人でにぎわっていた。

チャナッカレに置かれたハリウッド映画「トロイ」で使われた木馬

 ボズジャ島へは、チャナッカレからさらに西へ1時間ほど車で移動して、ゲイクリという港からフェリーに乗る。ゲイクリまでの車窓から見えるものは、緑のまばらな白っぽい山肌と海面だけで、建物も少ない。大都会のイスタンブールから半日かけて遠くまでやって来た実感がわいてくる。

 フェリーに乗ると、青色が濃い海の水平線に、すでに島の影が見えている。今年9月初めに訪れた時は、ちょうどイスラム教の犠牲祭の休暇と重なったため、フェリーは、トルコ人の観光客でいっぱいだった。

 面積40平方キロほどの小さな島の人口は約2000人で、主に港周辺にある宿泊施設のベッド数も、住民をちょっと超えるぐらいだ。この島は、中世はビザンティン帝国の領土で、ギリシア人が多く住んでいた。その後、都市国家だった時代のヴェネツィア共和国が支配し、港のすぐ横に城塞(じょうさい)を築いた。そこからは、オスマントルコ帝国、ギリシャ、現在のトルコへと支配する国家が立ち替わった歴史を持っている。

ボズジャ島の港をにらむ城塞(じょうさい)

 フェリーに揺られながら、イタリアと聖地エルサレムなどがある地中海東岸やエジプトなどを結んだ航路を想像してみる。なるほど、海洋国家だったヴェネツィアにとっては、ボズジャ島や、その周辺の島々は戦略的に重要だったのだろう。故郷から遠く離れたこの島に赴任したイタリア人もいたに違いない。

島でとれたブドウで造るワイナリー、ギュレラダ(Gülerada)では試飲させてもらえる

 島には、大小さまざまなビーチがあり、フェリーに車を乗せてきた人たちは、思い思いのビーチわきに車を止めて海水浴を楽しんでいた。日本のいわゆる「海の家」っぽいレストランがある大きなビーチもあったが、小さいけれど、とても美しいビーチを独占していた家族連れがうらやましかった。

 城塞とビーチのほか、この島で有名なものがワインだ。ギリシア名(テネドス島)もあるように、もともとギリシア系住民によるワイン造りが盛んだった。トルコ領となった後も、ブドウ栽培とワイン製造は続く。

 ワイナリーのひとつ、ギュレラダ(Gülerada)を訪れると、ミニバスにのったトルコ人のグループが次々訪れて、試飲して気に入った銘柄を購入していた。まだ夏が残る強い日差しの下で味わうワインはなかなかだ。港近くのレストランでも、地元産のワインが提供されていた。

ここはおそらく島で最も大きなビーチ

 話は変わるが、トルコの街では、たくさんのネコを見かける。ボズジャ島ももちろん例外ではない。どちらかと言えば多いほうかもしれない。レストランの中には、ネコ用のえさ皿を置いた店も多く。そうした店では、ネコたちがのんびり昼寝を決め込んでいた。警察官のいる港近くの派出所でも堂々と昼寝するネコがいて、なんともほほえましかった。


ボズジャ島のネコたち

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 島を軽く車で一周したら、城塞に登って海を見下ろす眺めを楽しむ。そして、レストランで遅めのランチをゆっくり食べていたら、もう夕方が近づいてきた。

港に係留された漁船やヨット。島の周囲をめぐる観光船もあった

城塞から北側の海を見渡す。海洋都市国家だったヴェネツィアをはじめ、各時代の支配者にとって、ここは重要な拠点だったのだろう

 港近くには、土産物店や民芸品、お菓子を売るショップが集まっている。もちろん特産のブドウも売っている。店があるエリアを全部めぐっても30分はかからない。

港から少し歩くと、雰囲気のよい石畳の路地があった  

ブドウも露天売りしている

 地元の観光客のように、島で一泊して、魚介料理とワインを味わう夜を楽しみたいところだが、残念ながら日帰りしなければいけなかったので、帰りのフェリーに乗る。他の乗客と一緒に、名残を惜しみつつ、遠ざかっていく島と、稜線(りょうせん)の反対側へと沈む夕日に別れを告げた。

夕日と島に別れを告げて、帰りのフェリーに乗る

 飛行機を降りたらバスに乗って、フェリーに乗ってまたバス。またフェリー。もう一度行きたくなっても、ボズジャ島に行くのはなかなか大変だ。そして、この島は、だれでも魅了されるメジャーな観光地にはなれないかもしれない。だが、素朴な味わいのワイン、そしてときどきネコがいた島の記憶は、しばらく頭の中に心地よく残りそうだ。

(文・写真 &Travel編集部)

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