幻想的にライトアップされた石切り場と1300年の古刹「那谷寺」を歩く

  • 文・写真 こだまゆき
  • 2017年12月15日

 2016年4月に日本遺産認定を受けた石川県小松市の「珠玉と歩む物語」。珠玉と石の文化を語る、この一見“地味”に見られがちな遺産を国内外に発信するプロジェクトの第一弾として、文化財の一つでもある「滝ケ原石切場跡」を毎日ライトアップする催しが14日(木)から25日(月)まで行われています。

 “石切り場”や“ライトアップ”というワードで既にワクワクしていた私は、北陸新幹線で金沢へ。ライトアップは17時からなので、それまで小松市の観光スポットをまわることにしました。まずは小松市と石の関わりを学ぶべく小松市立博物館へ。

小松市立博物館の3階常設展示室。石の世界の魅力に浸れるこの場所は、まるで宝石商のようなステキな展示室

[PR]

 「せいぜい江戸時代くらいからかしら?」と思っていた小松市の石のストーリーは、なんと約2500万年前、日本列島がユーラシア大陸とつながっていた頃の地殻変動までさかのぼります。弥生時代には碧玉(へきぎょく)という鉱物を使って管玉(くだたま)を量産し、九州方面の有力者に装飾品として贈られていたことがわかっているのだそう。学芸員さんのお話を聞いていたら、陶石(とうせき)と呼ばれる岩石が出てきて、それが原料となる九谷焼にまで話がつながってびっくり。小松市の石文化が日本遺産に認定された背景には、その時代ごとに資源である「石」を掘り出し、加工して、世の中に送り出して来たという“小松のものづくりの魂”があったからだと聞いて納得してしまいました。

こちらが弥生時代に緑の装飾品となった碧玉。英語でジャスパーと呼ばれる鉱物

 次に案内されたのが「鵜川石切り場跡」です。「え?!ここを通るの?!」と思わず口にしてしまった民家の横からしばらく歩いて裏山に進むと、突如として現れる真っ暗な入り口。現在は石切り場としての役目を終えていますが、かつてはここから切り出した石が古墳の石室や小松城の石垣などに使われていたのだそうです。

「鵜川石切り場跡」の入り口。正直、一人でここに入る勇気はありません

 中は真っ暗なので、ヘルメットをかぶりヘッドライトを装着して進みます。外気と比べて、中は風がないぶん暖かく感じました。そして思っていた以上に奥行きがあって迷路のよう。石工道具を使っていたとはいえ、「これを人間の手でやっていたなんて!」と感心することしきりでした。

探検隊みたいな自分のシルエットが笑えます

 案内してくださった市の観光交流課の方いわく「鵜川石切り場跡は立ち入り禁止にはなっていませんが、真っ暗なのでライトなどの装備が必須です。いずれ石の魅力発信の場として整備したい」とのこと。このような石切り場跡が小松市には何カ所もあって、その多くは人里離れた山の中にひっそりとあるのだそう。なんだかロマンを感じますよね。

内部はこのように水がたまったプールがいくつも。光が届かないこの場所は水生生物がいないのでびっくりするくらい透明なのです

コウモリがいました!

 探検家気分を味わえた鵜川石切り場にほど近い「ハニベ岩窟院」は、これまた一風変わった観光スポット。といってもここ、1951年開洞のれっきとした洞窟寺院なのです。高さ15mの巨大仏頭にギョッとしながら裏山に進むと、かつての石切り場に作られた洞窟展示室へ。初代・二代目院主が作った数々の仏像に圧倒されます。

巨大仏頭が出迎えてくれるハニベ岩窟院は洞窟寺院として有名な観光スポット

 洞窟をさらに進むとエンマ大王の座像や“鬼の食卓風景”などの地獄絵巻の世界へ。「一巡して何か心にとどまるものがありましたら・・」とパンフレットに書かれているように、ここは深く考えず観賞するのがよろしいかと。グループで行くとより一層楽しめるかもしれません。

石切り場を利用して作られた洞窟寺院の内部は全長150m。中でも“鬼の食卓”など地獄エリアは必見!

 白山信仰の古刹(こさつ)として1300年の歴史を持つ「那谷寺」は、なたでらと読みます。岩山の斜面に建てられた本殿や、名勝・奇岩遊仙境などから、ここも石とは切っても切れない場所なのだということがわかります。

那谷寺の本殿。かつては岩屋寺とも呼ばれていたというだけあって、岩に囲まれた土地に建てられています

紅葉の時期は特に美しい那谷寺。落ちた紅葉に冷たいみぞれが降っていました

 この那谷寺、松尾芭蕉が訪れたことでも知られていて、「奥の細道」で“石山の 石より白し 秋の風”という句を詠んでいます。その芭蕉も“うまい!”と絶賛したという小松うどんが小松市の地元グルメなのだそうですが、今回は時間がなくて食べられず(泣)。うどん好きの私としてはぜひリベンジしたいところ!

本堂から大池の方に抜ける石のトンネル。SNS映えするポイント多し

この可愛らしい「棟梁(とうりょう)サル」は那谷寺の隠れキャラだそう。朱塗りの楓月橋(ふうげつきょう)のどこかにいるので探してみて

 那谷寺の南側に位置する滝ケ原地区へ。このエリアには本州では珍しいとされる「アーチ石橋群」があります。使われているのはもちろんこの地で採掘される良質な滝ケ原石。現在見られるのは5橋ですが、かつては11橋あったのだとか。徒歩でまわれる石橋めぐりルートもあるそうですよ。

明治後期~昭和初期に作られた滝ケ原地区のアーチ石橋群のひとつ、丸竹橋

 さていよいよメインイベント「滝ケ原石切り場ライトアップ」をご覧いただきましょう。東を向く山の斜面にえぐれたように見える青白い山肌が「滝ケ原石切り場」です。江戸時代後期から採掘が始まったこの石切り場では緑色凝灰岩が採れるのだそう。昼間訪れた小松市立博物館でその凝灰岩を見たばかりなので感動もひとしおでした。

滝ケ原石切り場ライトアップは今月25日(月)まで、毎日17時~19時までの2時間ほど開催。写真撮影には山のシルエットがわかる17時くらいがベスト。ちなみに安全上の理由で、石切り場に近づいての鑑賞はできません

 日が落ちたばかりの里山に、そこだけ赤く燃えるように浮かび上がる石切り場の風景はとっても幻想的で、巨大な人工物であるからこその感動がありました。初の試みというこの滝ケ原石切り場ライトアップは今月25日(月)のクリスマスまで開催しています。お近くの方、アマチュアカメラマンさん、そして石好きさんなど、足を運んでみてはいかがでしょうか。その際はくれぐれも暖かい格好をお忘れなく!

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

こだまゆき

こだまゆき

フリーライター。知らない土地での朝食がなによりも楽しみなフォト派のライター。iPhoneで撮るのも一眼レフで撮るのもどちらも好き。自由で気ままな女性ならではの目線で旅のレポートをお伝えしています。執筆業は旅関連の他、ガジェット、雑誌コラム、インタビューなど。趣味は顔ハメパネル。

今、あなたにオススメ

Pickup!