にっぽんの逸品を訪ねて

富士山を望む絶好の立地 優美にたたずむ世界遺産センター

  • 文・写真 中元千恵子
  • 2018年1月9日

静岡県富士山世界遺産センター

 冬の澄んだ空気に、りんとそびえる冠雪の富士山。新年にふさわしいすがすがしい眺めだ。

 富士山を北に仰ぎ見る静岡県富士宮市に、昨年12月23日、「静岡県富士山世界遺産センター」がオープンした。

 2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」を後世に守り伝えていく拠点施設であり、富士山を、歴史、文化、自然など多方面から詳しく紹介している。

 富士宮市といえば、富士山の八合目以上を所有する富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)や、富士の湧き水が流れ出る白糸ノ滝など世界遺産の構成資産も多く、名物「富士宮やきそば」も有名。新スポットの誕生で、国内外からの観光客がますます増えそうだ。

ご当地グルメとして名高い「富士宮やきそば」

木格子の曲線や揺れる水面 優美なたたずまい

 静岡県富士山世界遺産センターは、富士宮駅から徒歩8分ほど。

 赤い鳥居とともに、目を引くのが、逆さ富士をイメージした逆円錐(えんすい)形の木格子だ。富士山ろくで育った富士ヒノキを四寸角にして、釘を使わずに組んである。曲線が醸し出すやわらかさや陰影が美しい。

木材を用いた外観が和の情緒を感じさせる

 東側に広がる水盤は、おそらく日本最大級の大きさだという。水面には木格子の逆さ富士、そして本物の富士山の姿も映り、優雅な光景だ。

水盤に富士山の姿が映る

 館内の展示も充実している。

 6つのゾーンに分かれ、その一つ「登拝(とはい)する山」では、海から山頂まで続く静岡県ならではの映像を見ながら、193mのらせんスロープを上ることで、富士登山を疑似体験できる。

 しだいに高度を上げていくと映像の植物の種類が変化し、やがて岩場の道になり、眼下に山並みを望む。200度近い広範なスクリーン映像もあり、臨場感たっぷりだ。

まるで登山のようにらせんスロープを上る

 らせんスロープから枝分かれする形で、各ゾーンへ行ける。

 「荒ぶる山」のゾーンでは、火山としての富士山を紹介。古代は2つの峰を持つ山だったことや噴火の歴史など、荒ぶる山の活動が時代を追って分かりやすく解説してある。

 富士山の信仰をキーワードにした「聖なる山」のゾーンでは、山頂の火口周辺を真上から撮影した画像があり、山頂部分を一周する「御鉢(おはち)めぐり」を疑似体験する展示配置となっている。

 ここでは、通常は非公開の貴重な資料、例えば16世紀に描かれた国指定重要文化財「富士曼荼羅(まんだら)図」(富士山本宮浅間大社所蔵)などの解説がタッチパネルで詳しく紹介されていて、富士山のあつい信仰の歴史に触れられる。

富士山の火口付近を真上から見た写真も興味深い

 ほかにも、美術や文学に表現されてきた富士山を紹介する「美しき山」ゾーン、駿河湾の海底から高山帯までの生態系を紹介する 「育む山」ゾーン、人と富士山の未来を考える「受け継ぐ山」のゾーン、また265インチの大画面に富士山の自然や文化が高精細な4K映像で映し出される映像シアターやカフェ、売店などもある。

 最上階の展望スペースからの眺めは爽快だ。目の前に富士山がそびえ、窓枠で縁取られて絵画のようだ。

展望スペースから望む富士山は絵画のよう

徳川家康造営の本殿も現存

 静岡県富士山世界遺産センターから北へ歩くと、まもなく、富士山本宮浅間大社が現れる。

 富士山ろくには、昔から富士山の噴火を鎮めるために多くの浅間神社が建てられてきたが、中でも最も早く成立したのがこの大社。

 朱塗りの鳥居の前に立つと、右手に富士の姿が見え、富士を望む一等地にあることが分かる。

 古くから武家による信仰もあつく、源頼朝、北条義時、武田信玄・勝頼親子、徳川家康らの崇敬を集めてきた。

 楼門をくぐると浅間造りの本殿が立つ。慶長9年(1604)、徳川家康は関ヶ原の戦いに勝利した御礼として、境内の建物の数々を造営し、整備した。現存する本殿や拝殿、楼門などは当時のもので、主祭神の木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)をまつる本殿は国の重要文化財に指定されている。富士山の八合目以上を境内地として認めたのも家康だといわれている。

 また、境内のしだれ桜は武田信玄の寄進とされ、「信玄桜」の名で親しまれる。

全国に1300あまりある浅間神社の総本宮

 境内東側には、驚くほど澄んだ湧玉池(わくたまいけ)が広がる。富士山に降った雨や雪解け水が地下水となり、溶岩の間から湧き出て池になったもの。古来、富士山に登る人々は、まず湧玉池でみそぎをしてから山に入ったという。この池は国の天然記念物にも指定されている。

 澄んだ水面が鏡のように周囲の景色を映す。泳ぐ魚やそよぐ水草まで見え、清らかな水の眺めに癒やされる。

富士宮に来たらこれ! もちもち麺の焼きそば

 富士山本宮浅間大社の前には、「富士宮やきそば」の店や甘味処、みやげ物店などが集まった「お宮横丁」がある。

 「富士宮やきそば」は、戦後間もなくのころからの歴史がある地元の名物。ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」でも2年連続でゴールドグランプリを受賞している。

気軽に立ち寄れる「お宮横丁」の焼きそば店

 この焼きそばの一番の特徴は、独特の麺だ。ゆでずに急速に冷やして表面を油でコーティングした蒸し麺で、もちもちとして食べ応えがある。

 炒めた麺に、ラードを絞った後の残りを油で揚げた「肉かす」やトッピングのイワシの「削り粉」を加えるなどして、コクやうまみを加えている。

ため息が出るほど壮大な風景「白糸ノ滝」へ

 お宮横丁前の通りから北へ向かうバスに乗って30分ほど走ると、白糸ノ滝がある。富士の雪解け水が、高さ20m、幅150mにわたり、大小数百の滝となって流れ落ちている。壮麗な眺めはため息が出るほど。世界遺産の構成資産であり、国の名勝や天然記念物にも指定されている。

 江戸時代、富士山を信仰する富士講の開祖・長谷川角行はここで水行を行い、その後は信者を中心に人々の巡礼と修行の場になったという。

広大な壁面から無数の滝が流れ落ちる白糸ノ滝

問い合わせ

静岡県富士山世界遺産センター
https://mtfuji-whc.jp/

富士山本宮浅間大社
http://fuji-hongu.or.jp/sengen/

富士宮市観光協会
http://fujinomiya.gr.jp/

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PROFILE

中元千恵子(なかもと・ちえこ)フリーライター

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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