楽しいひとり温泉

ふわふわの雪に包まれる秘湯へ ひたひた潤う大岩風呂

  • 文・写真 温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子
  • 2018年2月6日

恵比寿の湯の内湯から続く露天風呂。4カ所の温泉は男女時間制で楽しめる

 今しかできない旅がしたい。ふわふわの雪に包まれる、あったか~い温泉が呼んでいます。ここは福島県「元湯甲子(かし)温泉 旅館大黒屋」の露天風呂。春に来た時には緑の森が印象的だったけど、冬は雪・雪・雪。内湯で体を温めたら、意を決して雪の中へレッツ・ゴー!寒い、寒いと叫びながらも温泉へ入れば、「く~。来てよかった~」と、幸せなぬくもりに包まれるのです。

 思い立ったが旅日和、気ままに出かけられるのが「ひとり温泉」のいいところです。「ああ。どうしても今すぐ行きたい!」と、思い切って出かけることにしたというのが、ひとり温泉デビューのきっかけという人も多いのです。今回は雪の中の秘湯へ。ひとりでどうやって行くの?という心配は不要。JR新白河駅前から宿の無料送迎バスを予約しておいたので、お宿の玄関まで直行です。

和室の窓辺の広縁では掘りごたつから雪景色が楽しめる

 部屋には掘りごたつが。足を下ろして座れますので、ぬくぬくで楽々。渓谷にしんしんと降る雪を眺めていると、心まで真っ白に洗われていくよう。あんなにモヤモヤしていたストレスが、なんだかどうでもいいことに思えてきます。

部屋の洗面台には飲むことができる阿武隈原水の蛇口がある

 部屋の中に贅沢(ぜいたく)過ぎる蛇口を見つけました。洗面台に蛇口が二つ。ひとつは、なんと、阿武隈原水。この宿はブナの原生林が育む阿武隈川が流れる阿武隈仙境渓谷にあり、豊かな山の恵みを部屋でもいただけるのです。阿武隈原水は甘みを感じるまろやかなおいしさ。体の中からもキレイになれそうです。

白河だるまをモチーフにした宿のオリジナル調味料入れ

 白河の名物は幸運をもたらす「白河だるま」。眉毛は鶴、ひげは亀、耳ひげとあごひげで松竹梅を表していて、願い事をかなえてくれる縁起のいいだるまさんです。お食事処の調味料入れもこの白河だるまがモチーフ。こんな可愛い小物にもテンションがあがります。

雪国ならではの知恵が詰まったオイシイ郷土料理も並ぶ

 食事処で夕食。程よい距離感のテーブルでの食事は、寂しくないし、気も使わない感じ。部屋食ではないことで、部屋の中には誰も来ないというのも気楽だし、食事処に来てみると、案外ひとりで来ている人も多いなんてこともわかったりして、リラックスできます。

 前菜は郷土料理や山の幸。ぜんまい一本炒めは春に収穫した山菜のぜんまいを長いまま乾燥させて保存し、一本のまま煮しめる雪国のおもてなし料理。こりこりとした歯ごたえとジューシーな味わい。手前の小皿は右から、わらびみそ漬、木の子三種にこごり、柿の白あえ、じゃがいも甘みそ、白菜と木の子の炒め物。これを見たらもう、すかさず「地酒の注文をお願いしま~す」。スタッフさんのおすすめで会津の純米酒「國権(こっけん)」をいただきました。香り豊かでコクのあるしっかりしたお酒。旅ごはんの幸せ倍増です。

甲子温泉の源泉を使った絶品の蒸し料理

 セイロの下には甲子温泉の「源泉」が仕込んでありまして、源泉の蒸気で和牛と野菜を蒸し上げる「和牛の源泉せいろ蒸し」。肉汁が野菜に染み込んで「なに、これ~」なおいしさ。ついに我慢できなくなり、「ごはん、お願いしま~す」。まだ、お料理も続きますが、このお宿のごはんは「福島の天日干し白米」とけんちん汁なんです。これは、おなかにまだ余裕があるうちにいただかないと……。ひとり温泉ですから、自分の好きなタイミングで美味しく食事を楽しんじゃいます。

大岩風呂と桜の湯は渓流にかかる橋を渡って行く

 実は、このお宿のメインイベントは「大岩風呂」。日中は混浴ですが、夜と朝に女性専用時間があるのです。この名物温泉は、宿の建物を出て、渓流にかかる橋を渡った対岸にあります。防寒具も長靴も手袋も全て用意されていますので、まずは、完全防備完了。「よし!」と雪の中を進みます。なんだか、大冒険のようで、すっごくウキウキ!ふわふわに積もった新雪を踏みしめて、一歩一歩温泉へと進みます。

岩盤から源泉が自噴する名物の大岩風呂

 秘湯感漂う巨大な岩風呂。深いところは1.2mもあり、立って入る深さです。ふわふわと宇宙空間を漂うような浮遊感がたまりません。雪の中の湯小屋は静寂の世界。お湯の流れる音だけが響いています。泉質はアルカリ性単純温泉。主成分はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉系で、しっとりさっぱりの気持ちいい保湿の湯。ややぬるめの優しい肌ざわりなのですが、けっこうパワフル。体の芯までぐぐぐっと温まってきます。歴史ある名湯は不思議な力があると感じます。

伝説の子宝石にふれてご利益を

 大岩風呂は岩壁から湯船へと続く巨石が圧巻。この子宝石の底から時折ぷくぷくと温泉が自噴しています。お湯の中にある子宝石をさわるとお子様が授かるという言い伝え。じんわりと温まってホルモンバランスが整い、女っぷりも上がりそうです。

ロビーでいただくモーニングコーヒー(無料)

 ぐっすり眠った翌朝、朝湯でほっこりしたら、ロビーでサービスされているコーヒーをいただきます。「うわー。こんなに雪が積もってる……」。一晩で前の木が見えなくなっています。あったかいお宿の中から眺める雪景色は、ただ、ただ、美しい銀世界でした。

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1. 深さ1.2mの大岩風呂で究極のリラックス
2. 雪の中をちょっと歩いて冒険気分
3. 送迎バスで楽々アクセス

福島県・元湯甲子(かし)温泉 旅館大黒屋
http://www.kashionsen.jp/

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PROFILE

石井宏子(いしい・ひろこ)

いしいひろこ

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書「癒されてきれいになるおひとりさま温泉」(朝日新聞出版)「地球のチカラをチャージ・山温泉・海温泉・花温泉」(マガジンハウス)ほか。公式サイトhttp://www.onsenbeauty.com

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