雪の山道を歩いてたどりつく絶景「巨大な氷のアート」を見に、岐阜県下呂市へ

  • 文・写真 干川美奈子
  • 2018年2月13日

水の流れが瞬間冷凍されたような、氷の柱

 数十メートルにおよぶ氷柱群に圧倒される 

 「うわぁ」と、参加者全員から歓声が上がりました。

 スノーシューをつけて雪深い山道を歩きはじめて1時間。急こう配の山道を登って下ってを繰り返し、足の進みが遅くなってきたところで、視野が開けたような光を感じて顔を上げると、目の前には巨大な氷の柱の壁が一面に広がっていました。

取材は1月下旬。中央部分の氷が薄いのは、前日にあった氷柱が重さに耐えかねて折れていたため

 「ヒョウバクを見に行きませんか?」と誘いを受け、岐阜県下呂市小坂(おさか)町に行ってきました。「ヒョウバク」は漢字で「氷瀑」。零下で滝が氷結し、寒さが続くほどにその厚みが増してできる巨大な氷柱群です。

 御嶽(おんたけ)山のふもとにあり、日本一滝の多い町と言われる小坂町には、町内だけで200を超える滝があります。一年を通じて滝案内をするのは、「NPO法人飛騨小坂200滝」のメンバー。盛夏にはウェットスーツを着て渓谷で遊んだり、滝の中を歩きながら自然散策をしたりする滝めぐりツアーが人気です。

 「冬は雪原を歩いて自然観察や雪遊びをする『雪原ハイキング』も行っていますが、やぶがあって夏には沢伝いでしか行けない滝も、冬はやぶが雪で覆われるために歩いて行くことができるので、6年前から『冬の滝めぐり』をスタートしました」と同NPO法人事務局長の熊崎潤さん。今回は片道1時間ほどで行ける、中級者向けのコースを案内してもらいました。

 スキーが滑れなくても大丈夫。スノーシューを履いて進む

集合場所である飛騨小坂ビジターセンターの中には暖炉もあり、ポカポカ

 マイナス8度を示す道路沿いの表示を見ながら朝8:30に集合したのは、岐阜県下呂市の「道の駅南飛騨小坂はなもも」にある「飛騨小坂ビジターセンター」。ここでウェアや靴などの装備を確認し、必要なものがあればレンタルします。

 ビジターセンターから車で1時間ほどくねくねと曲がる山道を進み、今回のコースの起点となる濁河(にごりご)温泉へ。御嶽山の7合目、標高1800メートルに位置する駐車場に車を止め、目出し帽(息がしにくくなることもあるので、なくてもいいそうです)、ニットキャップの上にヘルメットを装着。「ヘルメットのうえからアウターのフードをかぶってください。こうすることで、風に乗って雪が舞い込んできたときに首から雪が入るのを防ぐことができるんです」とガイドの一人、佐々木礼子さんが教えてくれました。

 昼食の入ったリュックを背負い、スノーシューを手に持ったら、いざ、出発です。

山林に入る手前で、いよいよ、スノーシューを装着

 山林に入る手前でスノーシューを装着してもらいました。スキーやスノーボードが滑れないので歩けるのか不安でしたが、靴のままより安定感があり、また雪に沈み過ぎずに歩くことができました。ただし、自分の足が3倍くらい大きくなるので、逆足を踏まないように歩かなくてはなりません。

 「通常の道を歩く感覚で足を上げてしまうと、スノーシューの重さで足があがらなくなってきますから、かかとを滑らせるように歩いてください。スノーシューの下に刃がついているので、山道を登るときには突き刺すように歩くと、滑らずに進めますよ」と熊崎さん。

 雪で覆われた山には、1本の道ができていました。熊崎さんが前日のガイドの際、雪道を歩いて切り開いて作った道です。その道を1列に並んで進むと、すぐに体がポカポカしてきます。これは結構な運動量になりそうです。

 参加メンバーのなかで最も体力がなく、すぐに息が切れる私にあわせて、熊崎さんらガイドがスピード調整やこまめな休憩をとってくれたので、雪化粧した山林の景色を楽しみながら進むことができました。おなかが空く前にこまめにチョコレートなどのお菓子を食べたり、水分を補給したりすることも大事なのだそうです。

荷物は少ないほうが良いものの、ストックはあると歩行の補助になる

 「この植物はサルオガセといって、空気が澄んできれいな場所でしか生息できない地衣類なんですよ」「この案内看板をかじった動物は?」など、道中で熊崎さんの説明が入ります。ガードレールの上にある反射板の頭が少しだけ雪から出ていたところの積雪量を測ると、85センチありました。道路から85センチ積もった雪の上を進んでいたことを知り、驚きました。

 蒼い氷の神殿を思わせる氷瀑に見入る

 1時間かけて約5キロの雪山道を歩き、たどりついた氷瀑は、私の目算で左右に60度くらい、横幅で40~50メートルほどに広がり、高さ15メートルくらいの、蒼(あお)みを帯びた氷の柱ができていました。

 冒険家が森をさまよい続けていて偶然氷の神殿を見かけたら、こんな感じだろうか、と思いながら夢中で写真を撮っていましたが、カメラを持つために手袋を外した右手が一気に冷えてじんじんしはじめ、感覚がなくなっていくのが分かります。寒いからこそ見られる自然が作り出すアートだとはいえ、今までに体験したことのない寒さに、慌ててポケットのカイロを握りしめました。取材した1月下旬の時点で、滝のエリアの積雪量は約90センチでした。

滝の裏側から。水が落ちて凍っていく様子が分かる

 熊崎さんの案内のもと、一人ずつ氷瀑の裏側にも入ってみました。氷が崩れることがあるので、入れないこともあるそうです。中から見ると、氷瀑の蒼さがさらに感じられました。風がさえぎられるので、外にいるよりも寒さを感じませんでした。

滝の裏側から、氷瀑の蒼さに見入る

 止まっていると冷えるので、インナーダウンを着込み、持参したパンと魔法瓶に入れてきたホットスープでランチタイム。パンは冷蔵庫に入れたくらいの乾燥状態に、魔法瓶のスープもぬるいくらいの温度まで下がっていました。参加者のなかにはバーナーを持参してインスタントカップスープを飲んでいる人もいて、「カップ麺はお湯を入れているうちに冷めてしまって、麺が軟らかくならないから、スープがいいですよ」と教えてくれました。

 熊崎さんを見ると、ホットサンドメーカーに炊き込みご飯を入れて、バーナーで温めておにぎりを作っていました。中身がなくなったホットサンドメーカーは「懐に入れてカイロになりますよ」と貸してくれたので、ありがたくお借りして暖をとりました。

 次回来るときには、食べ物は一口で食べられるサイズのものを小分けにして、カップスープとミネラルウォーター、バーナーとヤカンがあれば、暖もとれそうです。

 帰りはふぶいてきたので、少し早足で。ストックを借りて歩いたところ、さらに足元が安定しました。とはいえ、最後のほうは足を出したくても上がらないくらいに太ももに疲れを感じ、休み休み進んでもらいました。

滝までの最後の山道は急こう配。木々の間から氷瀑が見える

 参加するのにベストな服装は? 

 九州生まれ、温暖地域で育ったため、寒さに極端に弱い筆者のこの日の服装は、

・トップス…吸水速乾インナー+薄手(ウール100%)のハイネックセーター&カーディガン+カメラマンベスト+極厚ダウンコート
・ボトムス…冬用アウトドアスパッツ+冬用のアウトドアパンツ+厚手のスキーソックスを着用。

 これに、

・インナーダウンコート
・目出し帽
・ネックウォーマー
・ニットキャップ
・スキー用手袋
・トレッキングシューズ

を持参しました。

 最初にビジターセンターで熊崎さんの服装チェックを受けたところ、スノーシューをつけて歩いている最中に雪道にはまることがあるため、靴はゴム製で内側にボアのついたアウトドアブーツに履き替え、履いているアウトドアパンツの上に防水パンツをはくことになりました。

 また、雪道を歩いている最中は汗をかくほど体温が上昇するそうなので、極厚ダウンコートとウールカーディガンは脱ぎ、代わりに防水防寒のジャケットと小さなカイロが入ったリストバンドをお借りしました。

 こうしたウェアの一部は無料レンタルできます。一方、滝に到着して休憩する際には一気に体が冷えるため、インナーダウンを持っていくことになりました。

 サングラスは雪が降ってきた時に備えてあったほうが良いようです。すぐに手がかじかむので、厚手の手袋のなかに、インナー手袋をして、カメラ操作や食事をとるようにして、なるべく素手にならないようにしたほうが良いように思いました。

止まっていると、一気に体は冷えていく。この寒さが氷瀑をさらに厚くする

 氷瀑は例年2月末から3月初旬が最も分厚くなり、見応えがあるそうです。

 今年の氷瀑を見るツアーは全7回。1月27日からスタートし、3月17日までの土曜日が多いのですが(詳細は下記HPで確認してください)、開催日以外にプライベートツアーも申し込めます。

日本屈指の炭酸含有量を誇る、湯屋温泉の飲泉所

 小坂町には400年以上の歴史をもつ湯屋(ゆや)温泉があります。炭酸泉で湯治場としても知られてきた温泉なので、宿をとって、雪歩きで疲れた体を癒やすのも一考です。

●詳細・問い合わせ先

NPO法人飛騨小坂200滝『小坂の冬の滝めぐり』http://Osaka-taki.com

 

●関連リンク

紙絵馬と巨大七福神と…… 飛騨で開運旅

冬の白川郷ほっこり旅

 

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PROFILE

干川美奈子(ほしかわ・みなこ)

ほしかわみなこ

編集者・ライター
10代後半から英語が公用語でない国を中心に海外チープ&ディープ旅をスタート。情報誌、海外ウェディング誌、クルーズ専門誌、女性向けビジネス誌などで旅記事を執筆。「プレジデントFamily」「プレジデント」をはじめとした編集部在籍経験を活かし、普段はビジネス、芸能、マネー、子育て、インタビューなど、雑誌・WEBの一般記事の編集・執筆に携わる。

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