楽しいひとり温泉

温泉+お米 農家が営む絶品ごはんの温泉宿「宮城県・川渡温泉」

  • 文・写真 温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 石井宏子
  • 2018年4月17日

鳴子漆器に盛られた焼きなすのずんだあえ(奥)や山菜の前菜

 ひとり温泉の楽しみは、いつでも気兼ねなく、自分のペースでゆっくりと温泉にひたれること。そして、温泉でのんびりしたら、おなかがすいてきて、その土地のおいしい食事をいただくことも大きな楽しみです。その土地のおいしいものとは、いろいろありますが、注目したいのは“ごはん”。締めくくりのごはんがおいしいと、とにかくすごく幸せです。今回のひとり温泉の行き先は、農家が営む人気の温泉宿、宮城県の川渡温泉にある「山ふところの宿みやま」。金山杉の上質な空間でくつろぎ、家族で丹精込めて育てたお米をおいしくいただく里山料理がとにかく絶品。この食事がいただきたくて通う人も多いお宿です。「日本に生まれてよかった」なんて、つぶやいてしまうかもしれません。

男女別の温泉は、優しい光がそそぐ内湯

 「わあー、黒い!」。温泉への扉をあけると木材のような芳醇(ほうじゅん)な香りが漂い、湯気の向こうに見えたのは黒いお湯。あれ、確か単純温泉と書いてあったようでしたがと、予想を楽しく裏切ってくれる個性派の温泉に大興奮。湯船に近寄って、温泉に手を入れてみると褐色のウーロン茶のような温泉の色。さっそく入ってみると、とろりとした優しい感触のお湯は少しぬるめです。なんともいえず心地よくて、ずっと入っていたい感じ。

褐色のお湯は美肌と潤いをサポートする温泉

 この温泉の泉質は「単純温泉」。含まれる成分の量が少ない優しい作用の温泉です。とろりとした感触の素になっているのは炭酸水素ナトリウム(重曹)の成分で肌の古い角質を優しく落としてすべすべ肌をサポートしてくれるし、この木材のようなアロマを醸し出し、褐色のお湯になる要因は、温泉に含まれる植物由来の成分です。森の木々や葉っぱが土に返り、土壌の中で腐葉土となって堆積(たいせき)、熟成された地質を「亜炭層」と呼びますが、そのような土地から湧出(ゆうしゅつ)する温泉には、植物由来の成分もたっぷり入っているのです。温泉分析書には表示されませんが、美肌にとっては、しっとり仕上げをしてくれるうれしい成分でもあります。というわけで、山ふところの宿みやまの温泉は、すべすべ&しっとりのお手入れ要らずなスキンケア温泉、ただただ、温泉にひたってのんびりしたいひとり温泉にぴったりです。

別館のラウンジは金山杉の温かみを感じる

 総金山杉の別館は本間至氏の設計。暮らしから考える手作りの一品物の家をテーマにしている本間氏らしい、居心地の良さは秀逸です。足元からも伝わる木の優しさと、大きなガラス窓の吹き抜けのパブリックラウンジは宿の奥へと続く鎮守の森にそのままつながっているように感じます。心地よい音楽が静かに流れ、木の空間はその音さえ優しく響いていきます。

温泉に入って畳でごろりと横になるのも至福

 金山杉の別館は5室のみ。シンプルな和室にあたたかな光の照明。今夜はぐっすり眠れそうです。

イワナと田楽みその組み合わせはお酒もすすむ

 この日の夕食の最初のお膳は、焼きなすのずんだあえ、枝豆の風味とほんのりとした甘みが芳しい焼きなすに絡んで、「うわぁ、おいしい」。自家製ブルーベリー酒と一緒にふきの煮つけなどをつまんでいると、次々と温かなお料理が運ばれてきます。イワナの田楽は、この宿の名物料理のひとつ。イワナをお酒のおつまみとしてもおいしいようにと考えたアイデア料理です。 

もっちりとのびる大根餅は、手間をかけた一品

 お待ちかねの一品は「大根餅」。ぽったぽったの甘辛いしょうゆのたれと、もっちりふわふわの大根餅。「これよ、これ。これが食べたくて、また、泊まりに来たの」と、言っている人がいました。あ。はい。それは、わたしです。

自家製の飛竜頭は揚げたて熱々

 地元のお豆腐に、ぎんなんや根菜などをたっぷりと入れて、熱々の揚げたてで登場するメインディッシュの飛竜頭。はふはふはふ、とかぶりつきます。

みそを塗ってちょっと焼いた自家製米のおむすび

 満を持して運ばれてきたのは、「おむすび」。家族で育てる田んぼのお米は、おむすびになっても、お米ひとつひとつが、ぷりぷりと立っているのがわかるほど。おむすびは、日本のソウルフードなんだとあらためて実感します。

宿の裏手に広がる里山の風景

 パブリックラウンジから裏手へ出れば、森へと続く小道。そこを抜けると、この宿所有の畑が広がっています。ここはクラインガルテン(市民農園)になっていて、みんなで植える大豆畑。植えたり、草取りしたり、収穫したり、みそづくりをしたり。宿にお願いをして参加することもできます。土に触れて、温泉に入って、しみじみとおいしいごはんをいただく。ちょっと秘密にしておきたい、ひとり温泉です。

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1. ぬるめで、ほんわかできる温泉
2. 総金山杉の居心地いい空間
3. とにかく、ごはんがおいしい

山ふところの宿 みやま
http://www.yado-miyama.com

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

石井宏子(いしい・ひろこ)

いしいひろこ

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)ほか。公式サイトhttp://www.onsenbeauty.com

今、あなたにオススメ

Pickup!