夢の競演、宝石箱のような料理 日本の3シェフとベルギー三つ星シェフのコラボディナー全部みせます

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 日本の3シェフとベルギーの三つ星シェフの競演。夢のコラボディナーで提供されたアートのような美しい料理の数々を写真とともに、すべてご紹介します。(写真は特記以外すべてベルギー人写真家ロブ・ワルバースさんが撮影)

ヘルトク・ヤン×フロリレージュ ――両国の美意識が共鳴し、創造性をとことん追求

 「フロリレージュのオーナーシェフ、川手寛康さんはいつも創造力があふれ出しているクリエイターでありアーティスト。美しさに対する意識がお互いに共通していると感じました」。
 三つ星レストラン「ヘルトク・ヤン」を営むオーナーシェフ、ヒェルト・デ・マンガレールさんはそう語ります。この夜のためだけに創り上げられたコースは美しい音楽のように心地よく流れ、いつもの川手さんの強いメッセージを表現した料理とはまた違う、まさにこのとき限りのライブ感に満ちたものでした。たとえば、ヒェルトさんの代表作のひとつである、味や香り、食感の異なる複数のミニトマトを宝石のように仕上げて盛り合わせたひと皿は、ヒェルトさんが表現する美しさはそのまま尊重しつつ、川手さんが出汁と土佐酢を含ませることを提案し、日本らしい空気をまとわせました。「あれは自分ではひらめかないいいアドバイスでした」とヒェルトさん。
 また、フロリレージュの店内は、一部のプライベートスペースを除く全席が、中央に大きくとったオープンキッチンを囲む配置になっていて、常連でない一見客であろうと、どこに座ろうと、キッチン内で行われる作業はすべてオープン(たとえミスしようとすべて見えてしまう!)になっています。そのため、いま修行中かなと思われる若い料理人さんが、食い入るようにキッチンに見入っていることも。「世界のベストレストラン50」日本評議委員長(チェアマン)である中村孝則さんが言うように、「ベルギーに行く旅費もかからずに、世界の三ツ星シェフと日本を代表する料理人の技術が目の前でいっぺんに見られるのに、料金が倍になることはない」わけで、確かに世界の最先端に触れたい若い料理人にとって、コラボイベントはまたとない機会です。さらに熱心なのは「フロリレージュ」で働く次の世代のシェフたちです。やはり自分のボスが、これだけ世界で評価され、世界の最先端と常に触れ合う環境にいると意識が変わるのでしょうか。彼らはSNSも積極的に活用し、臆することなく自らグローバル化しているように感じます。個人的には「フロリレージュ」あたりから次のおもしろいシェフが誕生するのではないかと期待しています。これは日本に限ったことではなく、ヒェルトさんのスーシェフとして、世界中を旅しているジェフさんもそう。私がおふたりとお会いするのは、フィリピンに次いで日本で2カ国め。ヒェルトさんは12月にタイ、1月にシンガポールでコラボディナーの予定があり、そのすべてにジェフさんが同行するそうです。
 それから最後に。もうひとつすばらしかったのはドリンクのペアリング。アルコールもさることながらノンアルコールドリンクの独創的なことといったら驚きでした。こちらはいつものフロリレージュでも楽しめますので、ぜひお試しください。

ヘルトク・ヤン×ラシーム ――和と洋のコントラストを際立たせ、両者の個性を鮮やかに浮かび上がらせる

 「いやぁ、がんばりましたよ。この方、要求レベルが高いんですわ」。冗談めかしてそう言いつつ笑うのは、大阪「ラ・シーム」のオーナーシェフ、高田裕介さんです。ヒェルトさんの看板メニューの一つは、季節ごとに異なる多種多様のカラフルなミニトマトを盛り合わせたひと皿。ベルギー・ブルージュに広々とした自家農園を持ち、年間で通算すると132種類ものミニトマトを栽培するというヒェルトさんが、日本でも思う存分腕を振るえるよう、できる限り素材を用意したかったという高田さんが、集めに集めたトマトは実に17種類。これにはヒェルトさんも感動したとか。
 さらにヒェルトさんを驚かせたのは、この夜披露した高田さんの料理の数々です。ヒェルトさんいわく「高田さんの料理は、どこか繊細な日本らしさを感じさせながらも、フランスの最先端の料理を時差なく取り入れた、本場ヨーロッパのガストロノミー」だそう。ところが今回は、水ナスや大徳寺納豆、ハモにお米といった日本らしさを打ち出した、さらに言うなら関西らしささえ感じさせる料理を提供。それらがヒェルトさんの料理と交互に登場することで、両者の個性がくっきりと描き出される素敵なプレゼンテーションでした。当然ながら、この夜のコラボディナーは関西のお客様のために開催されたもので、ヒェルトさんの代表作を味わえるのも醍醐味のひとつ。そのため東京から追っかけた私には、すでに「フロリレージュ」で味わった既知のメニューもありましたが、前後の構成が変わることでここまで印象が変わるのかという新たな発見もありました。
 また、日本の3シェフの創造性の高さや情熱と並んで、ヒェルトさんが日本を再訪したもうひとつの理由が「日本の素材のすばらしさ」です。実はこの夜、スターファーマーとして有名な広島「梶谷農園」の梶谷ユズルさんが一般客として応援に駆けつけていました。高田さんは以前から梶谷さんの取り引き先で、この夜も梶谷さんのハーブやエディブルフラワーが振る舞われました。「梶谷農園」はファインダイニングだけと取り引きする農園で、家庭料理では使わないめずらしいハーブなどを、ファインダイニングにふさわしく味もかたちもよく育てて卸しています。「今度来日したら、梶谷農園を訪問してみたいですね」とヒェルトさん。
 三つ星シェフの目を通して、日本の食材のクオリティーの高さが世界へ発信されていく。コラボイベントには、そんな効果もありました。

ヘルトク・ヤン×傳 ――「コンフォートフード」がコンセプト

 ヒェルトさんが、ベルギーのブルージュで手がけるもう一店がカジュアルなビストロ「L.E.S.S.」(Love、Eat、 Share、 Smileの頭文字)。最高級ファインダイニングの「ヘルトク・ヤン」とは異なり、こちらではいま世界的な潮流となっている「コンフォートフード」をコンセプトに、ヒェルトさんが大切な友人や家族に振る舞いたいリラックスしたホッとする料理を提供しています。「傳」も「分かち合い」をキーワードに、その日食卓を囲む一期一会のゲストとスタッフが一丸となり、まるで大家族のように楽しむ和気あいあいとした雰囲気が魅力のひとつ。筆者は諸事情で参加できませんでしたが、この夜食卓を囲んだ「世界のベストレストラン50」日本評議委員長(チェアマン)の中村孝則さんによると、「長谷川さんが傳の世界にヒェルトさんを引き込んだことで、ヒェルトさんにとって新たな挑戦が多く、非常にエキサイティングな一夜になった」そうです。[記事詳細]

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ヘルトク・ヤン×フロリエージュ
ヘルトク・ヤン×ラシーム
ヘルトク・ヤン×傳
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