Woman’s Talk

失敗を怖がってしまうのはもったいない 清川あさみさん(アーティスト)

  • 2017年1月26日

  

『べっぴんさん』のタイトル映像を手がける

 現在、放送中のNHK朝のテレビ小説『べっぴんさん』。戦後、子供服作りに夢と情熱をかけた女性の物語の、弾むような楽しいタイトル映像を手がけているのが、アーティストとして活躍中の清川あさみさんである。

 「このドラマのテーマをうかがって、人生はいろいろ難しいこともあるけれど、かけがえのない宝物になるように縫い上げていくもの。そんな思いを込めたいと思いました」

 そう話す清川さん。きらきらした目が印象的だ。創作方法は独特で、女優や俳優、モデルのポートレイト写真や愛読する童話の扉などに、ひと針、ひと針、色糸を通して刺繍を施すという斬新な手法。施された花や鳥……などのモチーフと、被写体の内面とが響き合うような、幻想的で美しいアート作品を生み出し続ける。

 「自分がアーティストになるなんて思ってもみなかった」と笑う。瀬戸内の淡路島で育った子供時代。絵を描くことが大好きで、早くから自立心が旺盛だったという。

 「学校って、皆が同じほうがいいという考えがあるでしょう、でも私は、その人のいい部分、得意な面を伸ばして欲しいな、というようなことを考える子どもだったように思います」

 美大をめざしていたある日、ファッション・ブランド『コム・デ・ギャルソン』に出会って人生が変わる。「単なる服でなく芸術の域というのか。デザイナー川久保玲さんの強いメッセージ性を感じて」上京し、文化服装学院へ入学した。やがて卒業制作にあたって、人物画を身近にあった糸と針、布で制作。この作品が美術ジャーナリストの目にとまり、以降の活躍につながった。作品のインスピレーションをどう受けますか、と尋ねると「なんというか、本能的に肌でキャッチする感じなんです」と答える。

 「社会のここが気になる、ということがたくさんあって。でもそこから自分が作る意味を考え、コンセプトを組み立てるまでが苦しい。1年が経っていたなんていうこともあるんですよ」

 表現の世界に生きる人ならではの生みの苦しみだろうが、話す口調は終始さわやか。ポジティヴな人生観が伝わってくる。

 「本当? そう感じていただけるなら、私がいっぱい失敗してきたからだと思います。でもだからこそ次に進もうと思えた。失敗を怖がってしまうのはもったいないというのが実感です」

生まれた瞬間はめちゃめちゃ泣きました

 昨年、結婚。10月男児を出産。授乳で忙しい日々だが、新しい環境を楽しんでいる。

 「妊娠中もずっと仕事をして、よく食べて出歩いて、ダンナさんと舞台やロック・コンサートに行ったり楽しんでいました。出産直前まで、広島の神社裏の小高い山に登ったりとか(笑)。予定日には、夜中に入院したものの16時間もかかってしまって、朝『べっぴんさん』が始まったので見たりしました(笑)」

 生まれた瞬間は、忘れられないという。

 「初めての驚きと感動とで、めちゃめちゃ泣きました。あれから2か月余り経ちますけど、力のかぎりで泣いて、いろんなことを伝えてくる様子は、本当に可愛い。思っていたより成長の早さがすごいし、人間の持つエネルギーの強さ、凄さを感じます」と、目を輝かせる。

 「独り立ちするまでの責任がありますし、今、よりよい試練が来ているという感じです。これから子ども向けの、たとえば本とか服とか……作っていくのかな、なんていう気もしています」

 今月後半から、京都の美術館で個展を開催。母親という新たな日々が、創作活動をまたひとつ大きく鮮やかに広げていくのかもしれない。

撮影:宮本直孝/文:水田静子
ヘア&メイク:赤間直幸(Koa Hole)

    ◇

きよかわ・あさみ(アーティスト)

1979年、兵庫県生まれ。98年、文化服装学院入学。スカウトされファッション誌の読者モデルとして人気に。2001年卒業。初個展。04年「ベストデビュタント賞 映像・グラフィック部門」受賞。その後、女性誌FRaU『美女採集』シリーズや、名作絵本シリーズ『幸せな王子』『銀河鉄道の夜』をはじめ活躍を続ける。『清川あさみ展』2017年1月21日~2月14日。美術館「えき」KYOTOにて開催

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■この記事は、2017年1月18日付朝日新聞朝刊「ボンマルシェ」特集のコーナーの転載です。

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