不妊治療を超える、もう一つの選択肢――「産まなくても、育てられます」本プレゼント

  • 2017年2月23日

  • ずっと、そばにいるよ――。ナナちゃん、1歳のお誕生日です(アヤさん提供)

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 「子どもがほしいけれど、授からない」という夫婦がまずおこなうのは、不妊治療でしょう。でも、それ以外にも、親になる方法はあるのです。最近、日本でも増えつつある「特別養子縁組」について長年取材してきた朝日新聞の後藤絵里記者の『産まなくても、育てられます ―不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』を3名の方にプレゼントします。

応募はこちら。締め切りは3月10日(金)正午。

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 「特別養子縁組」は、血のつながらない子どもを引き取り、法的にも親子となるしくみです。昨年、利用を促進する法律もできました。この特別養子縁組を希望する夫婦のほとんどが、不妊治療の経験者なのです。

「暗いトンネル」を抜け、娘と出会った

 42歳の主婦、アヤさんは、年長のナナちゃんと2歳のタカくんの子育てで日々忙しく過ごしています。2人の子どもたちはいずれも、生まれてまもなくアヤさんと2歳年上の夫ヒロシさんの家庭に迎えられ、特別養子縁組によって、夫婦の子どもになりました。

 夫婦は結婚13年目です。子どもはすぐにでもほしかったのですが、結婚後2年たってもできなかったため、不妊治療を始めました。5回目の人工授精で初めて妊娠しますが、1カ月ほどで流産してしまいます。しばらく治療を休み、数カ月後に再開、再び妊娠しました。

 「今回は何が何でも妊娠を継続させたい」。アヤさんには、そんな悲壮な決意がありました。通信会社のエンジニアとして働くヒロシさんの仕事は朝が早く、夜遅かったため、家事で体に負担がかかってはいけないと、実家の母親が泊まり込みで家の仕事を手伝ってくれました。ところが、このときも4カ月で流産してしまいます。

 2回目の流産は、アヤさんにとって背負いきれないほどつらいものでした。気がつけば失った子どものことばかり考えていました。ふたたび妊娠することが怖くなり、どうしても治療を再開する気になれませんでした。「何をどうすればいいのかわからない。暗いトンネルの中にいるようだった」とアヤさんは振り返ります。

 その後、新聞の読者欄の投稿にヒントを得て、夫婦は近くの神社で水子供養をしてもらいます。アヤさんは、ようやく少しだけ、気持ちが軽くなりました。

 2年ほどたったある日、ヒロシさんから、「里親になる研修を受けないか? 特別養子縁組という制度があるんだ」と切り出されます。

 ふたたび妊娠するのは怖いけれど、夫と二人で子どもを育てたい。すでにいろいろと調べていたヒロシさんの説明を聞いて、アヤさんも納得できました。「特別養子縁組は自分たち夫婦には最良の選択だ」。二人はインターネットで特別養子縁組を仲介する団体を探し、2012年の夏、ナナちゃんが家にやってきました。

 初めて会った瞬間、「うちの子だ!」と思ったアヤさん。ナナちゃんを腕に抱き、「わが家に来てくれてありがとう」と声をかけました。ずっと会いたかった、大切な娘――。涙があふれて止まりませんでした。

 ナナちゃんが2歳になった年、夫婦は同じ縁組団体から、男の赤ちゃんを迎えます。甘えん坊だったナナちゃんは、すっかり「お姉さん」に変身し、弟タカくんのそばを離れず、世話を焼いています。

 アヤさんは「不妊治療をしていた頃は、自分の子じゃないとダメだと思っていた」と言います。「今度こそ着床しますように、妊娠しますようにと、そればかり考えて、妊娠後まで思い描けなかった」。でも、「不妊(不育)」というつらい体験を通して、わが子と出会うことの奇跡、その有り難さを強く感じたからこそ、ヒロシさんの特別養子縁組という提案をすんなり受け入れられたと言います。

 「その頃には、お腹で育てようが、養子縁組で迎えようが、大事な子どもには変わらないという考え方が自然と〝降りて〟きました」

 不妊治療の時に何となく感じていた、血のつながりへのこだわりは、ナナちゃんと出会ってみると、きれいさっぱり消えていました。

 「私たちは、ナナを育てることで親にしてもらっている。娘はうちに来るために生まれてきてくれたのだとさえ感じます」

特別養子縁組にも「年齢の壁」

 特別養子を迎えた育て親のなかには、アヤさん以上に長い歳月を治療に費やした夫婦も少なくありません。実際、育て親候補の夫婦の年齢は年を追うごとに高くなる傾向にあります。ある民間の養子縁組団体の説明会をのぞくと、会場にいた夫婦はほとんどが40歳以上で、夫が50代という夫婦も珍しくありませんでした。

 背景には、晩婚化で不妊治療を受ける夫婦の年齢が高くなっていること、そして、生殖医療技術の進歩によって、不妊治療自体が長期化していることがあります。

 年齢が上がるほど妊娠・出産率が下がることは、数字が示しています。日本産婦人科学会によると、2012年に行われた体外受精で、40歳の女性が実際に出産に至った割合は8・1%。1歳若い39歳で10・3%、41歳では5・8%と、1歳ごとに確率は大きく減少し、45歳では0・7%と1%を切ってしまいます。

 患者の高齢化と治療の長期化は、日本で特別養子縁組の普及を困難にしている一つの要因です。不妊治療から養子縁組への「心の切り替え」が遅れがちになるからです。

 私が出会った特別養子縁組を希望する夫婦のほとんどは、期間の長短はあれど、一度は不妊治療を試みていました。そして、治療を一定期間続けたあと、治療の続行をあきらめ、養子縁組を仲介する機関の門をたたくケースがかなり多いことに気づきました。

 不妊治療をあきらめて特別養子縁組を考え始めた夫婦が、「育て親の年齢の壁」につきあたることも少なくありません。特別養子縁組で子どもを迎える場合にも、年齢制限があることが多いのです。養子縁組への心の切り替えが少し遅かったために、子どもとの出会いをあきらめた夫婦にも出会いました。

 でも、なんのために不妊治療にのぞむかといえば、それは子どもがほしいからです。子どもを持って、家族として一緒に過ごしたい……。そのために何ができるのかを考えたとき、特別養子縁組という選択肢は、不妊治療と同じくらい有望な方法ではないでしょうか。

 「不妊治療がうまくいかなかったら特別養子縁組を考えてみよう」と思っていると、不妊治療だけでなく、養子縁組を含めた「子どもを持つこと」がかなわなくなってしまう可能性もあります。

子どもを持つためにできること

 海外に目を向けると、家族のかたちはより多様です。イギリスと北欧諸国の生殖医療技術や家族政策にくわしい産婦人科医の石原理・埼玉医科大教授によると、そうした国々でも先進的な不妊治療は盛んに行われており、子どもがほしい夫婦が、治療によって自ら妊娠・出産する道も日本と同様に用意されています。一方で、20代や30代で養子を迎える夫婦も少なくありません。

 日本との大きな違いは、親が育てられない子どもを施設ではなく家庭で育てるという考えが社会に浸透していること、そのための養子縁組や里親の制度が根づいていることです。

 たとえば、スウェーデンでは公費で不妊治療を受けられる年齢は39歳までと決まっていて、治療を受ける夫婦は、最初から特別養子縁組などの選択肢を視野に入れた上で治療を受けるのだそうです。

 石原さんは「家族を持つためのさまざまな方法が広く受け入れられていれば、患者さんは自ら妊娠することだけを目標としないですむでしょう」と言います。

 日本でも、昨年6月に児童福祉法が改正され、国の施策も、生みの親が育てられない子どもたちを、できるだけ施設ではなく家庭で育てようという方向へシフトしています。今後、特別養子縁組という選択肢が不妊に悩む夫婦に受け入れられる流れはますます広まっていくのではないでしょうか。

 赤ちゃんとの出会いを求めて、病院に通っているみなさんに、考えてみてほしいのです。あなたは子どもを産みたいのでしょうか、それとも、育てたいのでしょうか。後者であれば、「産まなくても、育てられる」のです。(後藤絵里)

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産まなくても、育てられます ―不妊治療を超えて、特別養子縁組へ

 第1部では、悩みや不安を乗り越え、不妊治療から特別養子縁組をするに至った8組の夫婦の実例を紹介。子育ての苦労や喜びを詳細につづります。

 第2部では、特別養子縁組に至るまでの法的な手続きや、その過程で心がけるべきこと、注意するべきことについて、体験者の言葉も交え解説します。養子縁組を題材にした映画を紹介するコラムも。不妊に悩む夫婦だけではなく、一般の読者にとっても、子育て、親子、血のつながりについて考える機会を与える一冊です。

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本のプレゼント応募はこちらから。締め切りは3月10日(金)正午です。

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