「ムーンライト」最後に輝く 第89回米アカデミー賞授賞式

  • 2017年2月27日

助演男優賞のマハーシャラ・アリ、主演女優賞のエマ・ストーン、助演女優賞のヴァイオラ・デイヴィス、主演男優賞のケイシー・アフレック Reuters

  • 作品賞の発表で「ラ・ラ・ランド」の名が読み上げられ、式典は混乱。プレゼンターに渡された封筒の中に、誤って女優賞の受賞結果が入っていた Reuters

  • 「間違いだ。受賞したのは『ムーンライト』です」と作品賞の書かれた紙を見せる「ラ・ラ・ランド」の製作者 Reuters

  • 作品賞のオスカー像を掲げる「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス Reuters

  • 最年少で監督賞を受賞した「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル Reuters

  • 主演男優賞に選ばれ涙するケイシー・アフレック Reuters

  • アカデミー賞授賞式の前日、ロンドンで開かれた「セールスマン」の市民上映にビデオメッセージを寄せたイランのアスガー・ファルハディ監督 Reuters

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 米国映画界最大の祭典・第89回アカデミー賞の授賞式が日本時間2月27日、カリフォルニア州ハリウッドのドルビー・シアターで開かれました。話題のミュージカル「ラ・ラ・ランド」が本命視されていましたが、作品賞に輝いたのは37歳の黒人監督バリー・ジェンキンスの第2作「ムーンライト」。しかも、プレゼンターのウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイが受賞作を「ラ・ラ・ランド」だと誤って発表し、関係者が喜びに沸いた後で訂正が入るという前代未聞のトラブルも発生。最後までサプライズ尽くしの大逆転劇となりました。

>>アフターパーティーの様子など、裏話もたっぷりの写真特集はこちら

    ◇

 

 史上最多タイの13部門14ノミネートで注目された「ラ・ラ・ランド」は、デイミアン・チャゼルが最年少の32歳で監督賞を受賞。ヒロインを演じたエマ・ストーンの主演女優賞に加え、撮影賞、美術賞、作曲賞、歌曲賞の最多6部門で受賞しました。

 作品賞を射止めた「ムーンライト」は、マイアミの貧困地区に暮らすゲイの少年の自己発見の軌跡を、少年期・青年期・成人期の3部構成で見つめた低予算のインディーズ作品。LGBTの主人公を正面から描いた映画としては初めて、アカデミー賞の最高峰に輝きました。

 原作者タレル・アルヴィン・マクレイニーの個人史を色濃く反映した物語を、同じ地域で育ったジェンキンス監督が翻案し、2人が脚色賞を受賞しました。幼い主人公の親代わりになる麻薬ディーラーを演じたマハーシャラ・アリも助演男優賞を獲得。17年前にキリスト教から改宗したアリは、イスラム教徒で初のオスカー俳優になりました。

 主演男優賞は、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレック。アカデミー会員とメンバーが重複する映画俳優組合賞で受賞した「Fences(原題)」のデンゼル・ワシントンとの激戦の末に栄冠をつかみ、受賞スピーチでは感極まって言葉に詰まる一幕もありました。助演女優賞は「Fences」のヴァイオラ・デイヴィス。映画の元になった舞台劇でトニー賞を受賞済みの実力派が、黒人女優では最多の候補3回目で受賞を果たしました。

「共感を生みだすことが、かつてないほど必要になっている」

 トランプ政権下で最初の授賞式となった今回は、式典の随所に政治の色が濃く現れました。なかでも際立ったのが外国語映画賞。受賞したイラン映画「セールスマン」のアスガー・ファルハディ監督と主演女優のタラネ・アリシュスティは、イスラム圏からの入国を一時禁止した大統領令に抗議して授賞式を欠席。授賞式では、民間女性で世界初の宇宙旅行者としても知られる在米イラン人の実業家アニューシャ・アンサリさんが代理でオスカー像を受け取り、トランプ政権の排外主義を批判するファルハディ監督のメッセージを読み上げました。

「映画作家はカメラを通して我々に共通する人間性をすくい取り、国や宗教にまつわる固定観念を壊すことができます。自分たちと他者との間に共感を生みだすことが、かつてないほど必要になっているのです」

 静かな怒りと融和の祈りがこもったメッセージは、大きな拍手で迎えられました。

 授賞式目前の先週末には、外国語映画賞候補作の監督6人の連名で「米国や他の国々に広がる狂信的行動や国粋主義に断固として反対する」との共同声明も発表されました。ロンドンのトラファルガー広場では、ファルハディ監督を支援し、トランプ政権の移民政策に抗議するため「セールスマン」の無料市民上映も開催。国や立場の違いを超えた連帯の契機として、映画の祭典が注目を集める年となりました。

 主要部門の受賞結果は以下の通り(★印が受賞)。アフターパーティーの様子や、授賞式の模様は 写真特集をご覧下さい。

■作品賞
★「ムーンライト」(8部門/4月)
 「メッセージ」(8部門/5月19日公開)
 「Fences」(4部門/未定)
 「ハクソー・リッジ」(6部門/6月24日公開)
 「最後の追跡」(4/NETFLIXで配信中)
 「Hidden Figures」(3部門/未定公開)
 「ラ・ラ・ランド」(13部門14ノミネート/2月24日公開)
 「LION ライオン 25年目のただいま」(6部門/4月7日公開)
 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(6部門/5月公開)

■監督賞
★デイミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」
 ドゥニ・ヴィルヌーヴ 「メッセージ」
 メル・ギブソン「ハクソー・リッジ」
 ケネス・ロナーガン「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 バリー・ジェンキンス「ムーンライト」

■主演男優賞
★ケイシー・アフレック 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 アンドリュー・ガーフィールド 「ハクソー・リッジ」
 ヴィゴ・モーテンセン 「はじまりへの旅」
 デンゼル・ワシントン 「Fences」
 ライアン・ゴズリング 「ラ・ラ・ランド」

■主演女優賞
★エマ・ストーン 「ラ・ラ・ランド」
 イザベル・ユペール 「エル(原題)」
 ルース・ネッガ 「ラビング 愛という名前のふたり」
 ナタリー・ポートマン 「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」
 メリル・ストリープ 「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」

■助演男優賞
★マハーシャラ・アリ 「ムーンライト」
 ジェフ・ブリッジス 「最後の追跡」
 ルーカス・ヘッジズ 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
 デヴ・パテル 「LION ライオン 25年目のただいま」
 マイケル・シャノン 「ノクターナル・アニマルズ(原題)」

■助演女優賞
★ヴァイオラ・デイヴィス 「Fences」
 ナオミ・ハリス 「ムーンライト」
 ニコール・キッドマン 「LION ライオン 25年目のただいま」
 オクタヴィア・スペンサー 「Hidden Figures」
 ミシェル・ウィリアムズ 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」

■外国語映画賞
★イラン「セールスマン」(6月公開)
 デンマーク「ヒトラーの忘れもの」(公開中)
 スウェーデン「幸せなひとりぼっち」(公開中)
 オーストラリア「Tanna(原題)」(未定)

 ドイツ「ありがとう、トニ・エルドマン」(6月公開)

■長編アニメーション賞
★「ズートピア」
 「Kubo and the Two Strings(原題)」
 「モアナと伝説の海」
 「My Life as a Zucchini(原題)」
 「レッドタートル ある島の物語」

>>写真特集はこちら

(文・深津純子)

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