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<60>クリエーターを応援 専門書に強い渋谷の穴場

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2017年3月2日

 渋谷の書店といえば、東急百貨店本店のMARUZEN & ジュンク堂書店や西武渋谷店の紀伊国屋書店、渋谷駅前のSHIBUYA TSUTAYA BOOK & CAFEやブックファーストなどといった大型書店がひしめき合っている。そんな中、2016年6月に中型書店「BOOK LAB TOKYO」がオープンした。場所は道玄坂を登りきる少し手前のビルの2階。看板を見落としそうな入り口の先には年季の入ったエスカレーターがあり、店へといざなう。

 店内は白を基調としたシンプルな空間で、店名の通り、研究室のような印象も受ける。その奥にあるテーブル席には打ち合わせをする人や、ノートパソコンに向かって仕事をする人の姿がちらほら。カフェで提供されるコーヒーは「私立珈琲小学校」プロデュースの本格的なドリップコーヒーを用意。夜になればビールやワインなどのアルコールも飲める。最近、サンドイッチなどの軽食も提供しはじめた。

 この店の仕掛け人は、ネットサービスやアプリ事業に取り組むスタートアップ企業「Labit」代表の鶴田浩之さん(26)。渋谷で働く起業家として、未知の本と出合うことができ、クリエーティビティが刺激される本屋があればと思っていた。コンセプトは「つくる人を応援する」。エンジニアやデザイナー、クリエーター、建築家といったものづくりに携わる人たちを支えたいという気持ちの表れだ。

 そんな思いに共感し、店長を務めるのは木村昇祐さん(37)。カフェなどの飲食店で長く働いていた木村さんは、オープンの1カ月前、たまたま求人サイトで同店の存在を知り、鶴田さんの構想を聞いてぐいぐいと引き込まれていった。

「飲食業に関わる前はバンドをやっていて、何かを創り出したり発信したりしたいという思いはあったんです。だから、コンセプトを聞いていいなと思って」

 ただし、木村さんも鶴田さんも書店運営は全くの素人。鶴田さんを中心に、知り合いのエンジニアや建築家などがそれぞれ得意分野の選書を担当し、コンピュータ関係の技術書やデザイン書、建築の専門書、機械工学や自然科学などの専門書がずらりと並ぶ。

「文芸書とコミックはほとんどなくて、基本的には技術寄り。僕も料理やお酒の本をセレクトしていますが、単なるレシピ本ではなくて、味を科学的に分析したものなど、コアな層に受けそうな選書を心がけています」

 技術書や専門書が多いからといって、決して入りにくい雰囲気ではない。むしろ、渋谷の雑踏から隔絶されたシンプルな空間は居心地がいい。

「例えばカジュアルなカフェなんだけど、料理はレストラン並みの本格的なお店があるように、ここも間口を広げておきたいと思っています。はじめは専門書に興味がなくても、必要になった時にここに来てもらえるようになりたいんです」

 木村さんもスタッフも書店員経験は初めてだが、逆に強みだととらえている。

「経験もないけどプライドもないので(笑)、まっさらな状態で出版社や取次会社さんたちの意見を吸収できます。それに一般的にはたくさんの本を平積みにすれば売れるというのが定説ですが、うちではアパレル経験者のスタッフが洋服をディスプレーするように、表紙やデザインが魅力的な本を1冊ずつ並べて見せたところ、逆に手に取ってもらえて売れたんです。そういうところを強みにしていきたいですね」

 本が売れず、書店をとりまく環境が厳しくなって久しいが、“書店素人”な木村さんはそう悲観していない。

「確かに出版業界の人と話をしていると、『本の売り上げがどんどん落ちている』と言いますが、それでも売れている本はあります。一方で同じ業界の人でも、『もっと売れなくなると予想していたけど、落ち方は意外に緩やかだ』という意見の人もいるんです。不安よりも希望を見つける方が楽しいですし、こう工夫したらよくなるんじゃないかな、という思いの方が強いんです」

 朝8時から23時まで営業し、電源やUSBコンセントにフリーWi-Fiも完備。広々とした空間を生かしたイベントも行っている。クリエーターを応援するだけでなく、この店自体もクリエーティビティを体現しているのだ。

■おすすめの3冊

『なるほどデザイン <目で見て楽しむ新しいデザインの本。>』(著/筒井美希)
デザインする上で必要な基礎、概念、ルール、プロセスを図解やイラスト、写真などのビジュアルで解説。「BOOK LAB TOKYOのオープン半年間で最も売れた本がこれ。デザインの解説書は大型本が多い中、ビジネス書の判型で、普通の人にもデザインの全体像をわかりやすく解説した、画期的な1冊です」(鶴田さん、以下同)

『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』(著/山崎満広)
世界一クリエーティブな都市といわれる、アメリカ・ポートランドの仕組みを明らかにしていく1冊。「本書には『徒歩20分圏コミュニティのデザイン』など、これからの都市計画の示唆に富み、再開発が進む渋谷エリアの書店としておすすめの1冊。本屋として、表紙を見せて飾りたくなるような美しい書影も魅力の一つです」

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』(著/アンドリュー・S・グローブ)
スティーブ・ジョブズも尊敬し、友人であったインテル元社長のアンディ・グローブの経営マネジメント哲学。「渋谷という立地上、よく来店されるベンチャー起業家やマネジャーに読んでいただきたい1冊です」

    ◇

BOOK LAB TOKYO
東京都渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館 2F
http://booklabtokyo.com/

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