ワインとごはんの方程式

<12>人生で一番おいしいバーニャ・カウダ

  • 杉山明日香 料理 井浦雅文 写真 興村憲彦
  • 2017年3月16日

ホタルイカで、バーニャ・カウダ。ソースの作り方は記事の最後に

  • ホタルイカで、バーニャ・カウダ。ソースの作り方は記事の最後に

  • ソースは、生クリームを合わせる前のペーストの段階なら、冷蔵庫で1週間保存可能

  • ピエモンテの白ワイン、ROERO ARNEIS 2015 / Vietti(ロエロ・アルネイス 2015 / ヴィエッティ)

  • ふくよかな味と香りなのに、酸がきれいに入っているから、バーニャ・カウダにぴったり

  • 野菜を食べたら、バゲットを薄く切ってソースを塗った上に、トマトを乗せて食べてもおいしい

  • ペーストに、オリーブオイルと生クリームを合わせてソースの出来上がり

  • もちろん、野菜は何でもOK。春のパワーを、おいしいソースとワインでバリバリいただきましょう

  いまが旬のホタルイカ、第2弾は、アンチョビの代わりにホタルイカを使ったバーニャ・カウダです。イタリア料理店に行くとつい頼んでしまうピエモンテ発祥の一皿のために選ばれたのは、エチケットに「女神のようなオッサン」が描かれた白ワイン。その理由は……?

   ◇

明日香 リカちゃん、バーニャ・カウダって好き?

リカ はい、野菜をたくさん食べたいときにいいですよね!

明日香 今日はね、私が今までの人生で食べた中で一番おいしいと思ったバーニャ・カウダをぜひ食べてもらいたくて。

リカ え、人生で一番?! どんなバーニャ・カウダですか?

明日香 ふつうはソースにアンチョビを使うんだけど、代わりにホタルイカを使ったソースなの。

リカ ホタルイカが潰されてソースになっているということ?! それはもう、聞いただけでおいしそう……。

(さっそく料理が登場)

明日香 きました! これこれ。

リカ うわあ、きれいなお野菜! ホタルイカはこのソースの中に?

明日香 そう、うまみが凝縮されていて、もうたまりません。お野菜はアスパラ、ミニニンジン、ミニ大根、エシャロット、芽キャベツ、チコリです。さあ、ソースが熱いうちにどうぞ!

リカ いただきまーす。(ハフハフハフ……)う、これは……うまみがすごい! もしかして、アンチョビよりホタルイカの方がおいしいかも?

明日香 でしょう? ワタの苦みがコクになっていてクセになりますよね。

リカ このソース、何が入っているんですか?

(料理人登場)

井浦 アンチョビにあってホタルイカにないのは、塩分と発酵系のうまみです。だから、それらを補うためにしょっつるを入れました。でも、それだけだとワインっていうより焼酎に合う味かなと思ったので、少しだけ生クリームを加えています。(詳しいレシピは最後に)

イタリアのうまみたっぷりソースに合う、イタリア・ピエモンテの白

明日香 しょっつるを選んだのが井浦マジックですね。

井浦 パスタソースにしたり、パンやじゃがいもにのせたりしてもおいしいですよ。

リカ こういううまみたっぷりのソースと野菜に合うのはどんなワインですかね……? やっぱり白?

明日香 そう、今日はイタリアの白、「ROERO ARNEIS 2015 / Vietti(ロエロ・アルネイス 2015 / ヴィエッティ)」を持ってきました! バーニャ・カウダってこのワインと同じく、もともとはイタリア北部、アルプス山脈のふもとにあるピエモンテが発祥の地なんです。

リカ あ~、なるほど。「郷土料理にはその土地のワインを合わせる」の法則ですね!

明日香 その通り。ピエモンテといえば、ネッビオーロから造る赤ワインのバローロとバルバレスコが有名ですが、実はこの白ワインも素晴らしいんですよ。

リカ ロエロというのが地域の名前ですか?

明日香 そうです。かつてこの地を治めていたロエロ公爵の名前が地名の由来です。バローロやバルバレスコを栽培しているエリアの近くにあり、アルネイス(Arneis)という土着品種で白ワインを造っています。「ロエロ・アルネイス」というD.O.C.G.(イタリアの原産地呼称制度)です。つまり、ロエロの白は基本的にアルネイスで造られるんです。このヴィエッティという造り手さんは絶滅しかかっていたアルネイス種を復活させたと言われているんだけど、バローロの古典派の生産者として超有名なんですよ。

リカ 古典派にしては、エチケットのデザインが斬新というか……。遠くからみると女神に見えるんですが、よくよく見ると、ブドウのツルを頭に巻いた無精ひげのオッサンじゃ……?

明日香 そうなの(笑)。でも一応、この方はお酒の神様“バッカス”らしいんだけど……。すごいインパクトよね。じゃあ、さっそく飲んでみましょうか!

リカ かんぱーい。(クンクンクン……)あれ、この前飲んだソアヴェとは香りがまったく違う! 華やかというか、桃のネクターっぽいというか。

明日香 ソアヴェよりは凝縮感のあるトロピカルフルーツ系の香りが強いですね。黄桃や洋梨の香りに加えて、さわやかな青みや麦わらのような香りも感じます。でも、飲んでみると意外に甘みは少なくて、酸味がきれいに入っていますよ。

トロピカル系なのに酸が入るから、バーニャ・カウダに合う

リカ (ゴクッ……)ほんとだ! 口の中がきゅっとします。けっこう酸が入っていますね。

明日香 ふくよかな香りなのに、酸がきれいに入っているというのが、ロエロの特徴なんです。だからバーニャ・カウダに合うんです。トロピカル系の果実味がソースのうまみとコクを受けとめつつ、きれいに酸が流してくれるというか……。甘みが強かったり、酸味が強すぎるとあまり合いません。ピエモンテでは、みなさん最初に泡を飲んで、次にロエロ、メインがお肉のときはバローロ、バルバレスコに進むという風に楽しんでいますよ。

リカ 同じイタリア北部でも、前回のヴェネトとピエモンテとでは全然違うんですねえ。

明日香 南側のリグーリア州まで行けば海があるから魚介類をたくさん食べますが、ピエモンテ州はアルプス山脈のふもとなので海がなく、メインはお肉なんですよね。でも、野菜の名産地なので、野菜をおいしく食べるために、保存食であった瓶詰めのアンチョビを使ったソースができたのね。

リカ やっぱり、イタリアは郷土料理とその地方のワインの組み合わせを楽しむ土地柄ですねえ~。

明日香 みんな自分たちの州のワインが一番!って思っていますからね。

リカ イタリアらしい!ちなみに、フランスはどうなんでしょう?

明日香 フランスは、“フランスワイン”という縛りで楽しんでいるという感じかな。というのも、フランス国内には10地方しかワイン生産地がないので、実はワインを造ってない地域も多いんです。一方、イタリアは全20州すべてで土着品種のブドウでワインを造っています。そこが大きな違いかしら。

リカ イタリアには、どこも「おらが村のワイン」があるんですね。ちなみに、ロエロはバーニャ・カウダ以外にどんなお料理に合いますか?

明日香 鶏肉など軽めのお肉料理や、キノコや野菜などをつかった、前菜全般に合うと思いますよ。

リカ なるほど~。こうやっていろいろなマリアージュを試していると、なんとなく法則が見えてきた気がします。つまり、同じ方向性で合わせるのか、相反するものをぶつけて合わせるのかっていう2パターンあるような……。

明日香 そう! バッティングさせて相乗効果がでるマリアージュと、似た者同士で溶け合うように合わせるマリアージュがあるんです。

リカ 人間同士も同じかもしれませんね。似た者同士のカップルと、個性のぶつかるカップル、どちらもうまくいくパターンかも(笑)。

明日香 たしかに。バッティングのマリアージュはエネルギー使いそうだけど(笑)。

リカ 人生ぃ、いロエロ~♪(苦しい)

*“青みとコク”の方程式
 ホタルイカソース(コク)+野菜(青み)
=ロエロ(果実味+コク+青みとさわやかさ)

    ◇

■ホタルイカでバーニャ・カウダ

●材料(2人分)
野菜・・・好きなものを適宜
(ここではアスパラ、チコリ、芽キャベツ、エシャロット、ミニ大根、ミニニンジンを使用)
<ペースト>
ニンニク・・・20g(薄切り)
玉ねぎ・・・35g(薄切り)
ホタルイカ(ボイル)・・・100g
サラダ油・・・25g
[A]
しょっつる・・・25g
しょうゆ・・・25g
E.V.オリーブオイル・・・25g(ミキサーが回りやすいよう、もう少し多めに入れてもOK)
[B]
E.V.オリーブオイル・・・適量
生クリーム・・・少々

●作り方
1)鍋にサラダ油とニンニクを入れ、きつね色になるまで炒めて香りを出し、玉ねぎを加える。しんなりしたら、ホタルイカを入れる。
2)粗熱が取れたら、Aと一緒にミキサーにかけ、ペースト状にする。
3)アスパラ、芽キャベツは固めにゆでておく。他の野菜と一緒に盛り合わせる。
4)2のペーストとBを合わせてバーニャソースにし、温めながら野菜を付けて食べる。

*ソースはペーストの段階で冷蔵庫に入れておけば、1週間ほど保存できる。
<お料理協力 西麻布 みかづき

■本日のワイン
ROERO ARNEIS 2015 / Vietti(ロエロ・アルネイス 2015 / ヴィエッティ)

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(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

杉山明日香(すぎやま・あすか)理論物理学博士・ソムリエ

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東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L'ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
 著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
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■撮影協力:ゴブリン

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