川島蓉子のひとむすび

<14>給食を通じて日本文化を伝える ~「和食給食応援団」(前編)

  • 文 川島蓉子
  • 2017年4月5日

「銀座小十」の料理人・奥田透さんが考えた、銀座中学校の給食(写真はすべて「和食給食応援団」提供)

  • 「銀座小十」の料理人奥田さんは、「素材を活かした和食が、日本文化を知ることにつながる」と言います

  • 岐阜市境川中学校では、日本料理「うを仁」の料理人臼井規郎さんが、地産食材を使った献立を提案

  • 「うを仁」の料理人臼井規郎さんは、「この体験は、郷士料理を伝承する機会にもなる」と話す

  • 「和食給食応援団」の西居豊さん。和食文化の継承につながると考え、学校給食のごはん食化、和食化に向けた活動を始めました

  • 「和食給食応援団」は2014年、「日本料理 賛否両論」の笠原将弘さんを中心に料理人8人が参加し、農林水産省の認定を受けた。現在、料理人は74人までに

  • 西居さんをはじめ、応援団のスタッフや料理人を交えての実演会は、2016年だけでも110地域で開催しました

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 サワラのみそ幽庵(ゆうあん)焼き、しんとり菜のお浸し、エビしんじょうのお吸い物、白ご飯、かぼちゃのプリン――。ある日の、東京都中央区立銀座中学校の給食です。献立を提供したのは、「銀座小十」の料理人を務める奥田透さん。

 「築地に近い銀座中学校だからこそ『魚料理がおいしい給食』をもっと楽しんでほしい」という奥田さんの思いは、「骨がなくて食べやすいし、身がふんわりしている」と好評を得て、香ばしく焼けた皮まで完食する生徒が大半でした。

 和食料理人が献立を組み、学校がある日の給食として児童たちに提供する「和食料理人による食育授業」です。主催するのは「和食給食応援団」。その存在を知ったのは、1年ほど前のことです。学校給食を通じて和食文化を伝える活動を行っていると聞いて興味がわき、取材に行ったのです。お会いしたのは、合同会社五穀豊穣(ごこくほうじょう)代表の西居豊さん。34歳という若さながら、「給食を通じて日本の文化を伝え、残していきたい」ときっぱり。すがすがしい志をかたちにしていると心が動きました。

 「和食給食応援団」は、ユニークな名称ですが、一般社団法人として、和食という食文化を次世代に向けてつないでいくことを掲げています。現在の学校給食の場合、おかずは洋食が多くて和食が少ない、魚料理より肉料理に偏りがちです。調味料も、しょうゆやみそよりも洋風の調味料が多く使われている。和食は自然を尊重し、健康を志向し、地域ごとの特性を生かしながら受け継がれてきた日本の伝統的な文化のひとつです。西居さんは、洋食主体になっている学校給食を変えることが和食文化の継承につながると考え、2011年ごろから、学校給食のごはん食化、和食化に向けた活動を始めました。

 冒頭の食育授業は、その一つです。西居さんがほぼ飛び込みで料理人を訪ね、「和食給食応援団」の趣旨を説明し、給食が持っている制約条件の中で献立を組んでもらう。一方で、学校に出向いて、先生はじめ給食を管理している栄養士に納得してもらい、学校で和食給食を実施する機会を設けます。

 地産地消の魅力を伝えることも続けています。岐阜市境川中学校では、日本料理「うを仁」の料理人である臼井規郎さんに依頼して、「ニジマスと大根のから揚げきのこあんかけ、干しずいきとするめのきんぴら、鳥丸と根菜の田舎みそ汁郡上みそ仕立て、白ご飯、栗の豆乳プリン柿ソース」を提供しました。主菜には、県内で養殖が盛んなニジマスを、副菜には給食でほとんど使われたことがないずいきを、みそは県産のものを、デザートは全国有数の生産量を誇る柿と栗をといったように、郷土の食の魅力を味わってもらうことで、地域固有の食の豊かさを感じてもらうことを意図したのです。

ダシを「おいしい」と感じた子どもが、大人にその良さを伝えていく

 そのほか、地方自治体を訪れ、和食の大切さや給食に取り入れる重要性について、講演や調理実演会も行っています。なぜ和食が大切なのか、子どもたちに体験してもらう必要があるのか、給食という既存のシステムや制約の中で、どのように和食を取り入れることができるのかといったことを、西居さんをはじめ「和食給食応援団」のスタッフや、料理人を交えての実演会を、昨年だけでも110地域で開催しました。

 こういった活動を通じ、給食に和食を取り入れる学校は着実に増えています。まさに体当たりで切り開いてきた西居さんの仕事は、ひとつずつ実を結んでいるのです。

「学校給食で体験した和食の良さを、生徒たちが家に持ち帰って親に伝え、それが家庭に浸透し、日本の食文化が継承されていってほしいのです。フランスやイタリアでは、そういうことが、実際、起きているし、日本でも決して夢ではありません」

 と、西居さん。ダシや白米を「おいしい」と感じた子どもたちが、大人たちにその良さを伝えていく。それが広がっていけば、「和食を日常に」と声高にうたって終わりではなく、草の根的に和食が根づいていくに違いありません。

 そう思うと、このプロジェクトは、未来を担っていく子どもたちとその親にとって幸福な活動になると感じ入りました。さらに、このやり方は、食育に限らず、他の生活文化を継承していく方途につながっていくかもしれません。

 次回は、西居さんがこの活動を行うにいたった経緯に触れたいと思います。

■和食給食応援団
http://washoku-kyushoku.or.jp/

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。 日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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