ワインとごはんの方程式

<15>新緑の季節。アユ×赤ワイン=メルロ

  • 杉山明日香 料理 井浦雅文 写真 興村憲彦 
  • 2017年5月11日

稚アユの赤ワインソース

  • 稚アユの赤ワインソース

  • 丸藤葡萄酒 ルバイヤート メルロー 2004年

  • メルロの土っぽい香り、熟成からくるキノコのような香りに、落ち着いたブルーベリーの香りが加わって、いい雰囲気。ソースにも同じワインを使うと、互いのおいしさがよりいっそう引き立つ

  • じっくり火を通したコンフィは、お箸でも簡単に切れるやわらかさ

  • マッシュしたじゃがいもを、丸い型で抜いて置く

  • そこにコンフィをそっと乗せて……

  • 赤ワインソースを流し込む。あっという間にじゃがいもにソースが上がり、稚アユが泳ぎ出す

 黄金週間が終わり、新緑も本番。ぴっちぴちのアユの子ども、稚アユがおいしい季節です。アユといえばついつい日本酒やビールを想定しがちですが、これが実はワインもよく合うのです。しかも、登場するのは白ワインではなくて、赤ワイン……それも少し大人っぽい熟成系のメルロちゃん。さて、その理由は?

   ◇

明日香 リカちゃん、元気だった? イタリアに行っていたので、会うのは久々ね!

リカ ほんとに~。ヴィーニタリー、楽しそうでしたね! そして気づいたらもう5月ですよ。

明日香 早いわねえ。5月といえば、この季節リカちゃんは何を食べたくなる?

リカ え? なんだろう……?

明日香 私、実は稚アユが大好物で。素焼きや天ぷらにするのもおいしいけれど、今日は「西麻布 みかづき」の料理人、井浦さんに相談して、稚アユのコンフィを作ってもらっているんです。

リカ 稚アユのコンフィ?! 食べたことないです。

明日香 コンフィって低温の油でじっくり火を通す料理のことだけど、今回はアユをコンフィにして、カラメリゼしたリンゴを入れた赤ワインソースをかけています。というのも、私が以前から稚アユと合わせてみたいなあ、と思っていたのが、メルロなんです

リカ えええ?! アユとメルロ?! メルロにお魚を合わせるんですか?

明日香 そうなの。アユの肝の複雑な苦みと、メルロの土っぽさが絶対に合うんじゃないかと思っていて……それで、今日はメルロに合うように、稚アユに赤ワインソースをかけてもらいました。

赤ワインの中で、アユが泳ぐ

(料理が出てくる)

リカ うわあ、赤ワインの中でアユが泳いでる~。ステキすぎる。

明日香 おいしそうでしょう。で、このお料理に合わせるのが、こちら「丸藤葡萄酒 ルバイヤート メルロー 2004年」です。山梨を拠点にワインを造っている生産者さんです。リカちゃん、日本で一番メルロを栽培している場所ってどこだったか覚えてる?

リカ えっと……長野県でしたっけ?

明日香 当たり!このワインは、その長野県の中でも定評のある塩尻のメルロ100%で造ったワインです。これはビンテージがちょっと古くて2004年なので、ちょうどいい熟成具合になっているはず。

リカ うわあ、2004年ってことは13年前ですか! 私もまだピチピチの20代前半だった頃……。

明日香 そう考えると感慨深いわよね(笑)。じゃあ、さっそくかんぱーい!

リカ かんぱーい!(クンクンクン……)

明日香 う~ん、いいですねえ。メルロらしい土っぽい香りと同時に、熟成からくるキノコのような香りもしますね。

リカ キ、キノコ?

明日香 そう、あとはもちろんちょっと落ち着いたブルーベリーの香りも。香りだけで「私、おいしいわよ」ってアピールしてきている感じ! いい具合に熟成が進んでいます。じゃあ、さっそくお料理も食べてみましょう。頭のところからがっつりと……いただきまーす!

リカ いただきまーす。(パクッ……)

稚アユの苦みが、メルロの土っぽさとコクに合う

明日香&リカ んん?!(目を見開く)

リカ これは……ちょっとすごい! くらくらするおいしさ……。

明日香 稚アユの苦みと赤ワインソースのコクとリンゴからくる酸味が口の中で混然一体となり……そこに日本のやさしい味わいのメルロを流し込むと……。

リカ (ゴクリ……)た、たまらない……! こんなに合うなんて! どうなってるんですか、これ? 

明日香 稚アユの特徴って、さわやかさもあるけれど、やっぱりこの苦みだと思うんです。この苦みがメルロの土っぽさとコクに合うんです。しかも日本のワインはフランスに比べると味わいが優しいので、このメルロは繊細な稚アユの味にぴったり寄り添っています。おまけにビンテージが古いでしょう?

リカ 熟成が進んでいる方がいいんですか?

明日香 ええ、熟成が進むとピチピチの果実味が前面に出るのではなく、落ち着いた味わいになるので、より合います。最低でも5年くらい経ったものがいいと思いますよ。

リカ 大人な合わせ方ですねえ。メルロと聞くとお肉しか思い浮かばなかったんですが、こんな世界があるとは! 酸いも甘いも知った大人ならではの“苦み”の楽しみ方ですね。フランスでもこういう合わせ方するんですか?

明日香 超定番というわけじゃないけれど、することもあります。特に赤ワインの産地で川魚がとれるところでは、魚を赤ワインで煮たりして、赤と合わせますよ。

お魚と合わせるなら、日本のメルロがいい理由

リカ へえ~。ところで、メルロの土っぽさに合わせると言っていましたけど、カベルネ・ソーヴィニョンにも同じような土っぽさがありますよね?

明日香 その通り。でも、カベルネ・ソーヴィニョンだと、タンニンと酸味が全体的に強いので、稚アユの繊細な味わいを楽しめなくなっちゃうんです。

リカ 以前、“メローなメルロちゃん”の特徴は優しさって言ってましたもんね! アユにとっては、グラマラスでパワフルなカベル姐さんだと押しが強すぎちゃうんですね。

明日香 そう、メルロちゃんの中でも、大人の女になったメルロちゃんがいいです

リカ 日本生まれの大和なでしこだとなおよし。

明日香 そうそう(笑)。やっぱり日本のメルロの方が優しい味わいになるので、お魚と合わせるなら、日本のメルロがいいと思います。

リカ 稚アユ以外の魚にも合わせられますか?

明日香 そうね、例えば穴子の赤ワイン煮なんかもおいしいと思うし、もちろんウナギもいいでしょうね。いい意味での“土っぽさ”のある魚がいいとお思います。

リカ ということは、ドジョウなんかも?

明日香 ばっちりだと思いますよ! ドジョウ鍋ってゴボウも入ってるでしょう? ダブルで土っぽさがあるので、絶対イケるはず。今度夏になる前に、2人で試してみましょうか。

リカ ぜひ女2人で、ドジョウとメルロで乾杯しましょう! 大和なでしこはガンガン飲メルロー!

*“土っぽさと酸味”の方程式
 アユ(肝の苦み、土っぽさ)+赤ワインソース(コク、リンゴの酸味)=メルロ(土っぽさとやさしい果実味)

    ◇

■稚アユの赤ワインソース
▼稚アユのコンフィ
[材料]
稚アユ 
塩 
サラダ油 
オリーブオイル 
ニンニク 
輪切り唐辛子

1)アユの両面にやや強めに塩をして、冷蔵庫で20分置き、キッチンペーパーで水分を拭き取り、バットに並べる。
2)①にニンニクスライス、輪切り唐辛子を少々入れ、アユが完全に漬かる量のオイルを入れる(サラダ油、E.V.オリーブオイル半々)。
3)②を100度のオーブンで1時間45分、ゆっくりコンフィにする。
4)完成したら、そのまま常温になるまで冷まし、冷蔵庫で保管する。

[材料]
赤ワイン 
リンゴジャム 
塩 
ジャガイモ 
バター 
稚アユのコンフィ(上参照)

作り方
1)赤ワインをミロワール(鏡状の照りが出るまで、20分の1くらい)まで煮詰め、リンゴジャムと合わせてソースを作る。味見をして、おのおのの量を調整し、塩を少し加える。
2)リンゴはすりおろし、フッ素加工のフライパンで水分がなくなったあとも、もう少しソテーしながら、最後にバターと塩を少々入れて仕上げ、①と合わせる。
3)マッシュしたジャガイモの上に②をアユのコンフィを乗せ、①のソースをかけて出来上がり。
<お料理協力 西麻布 みかづき

■本日のワイン
丸藤葡萄酒 ルバイヤート メルロー 2004

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(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

杉山明日香(すぎやま・あすか)理論物理学博士・ソムリエ

写真

東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L'ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
 facebookページはこちら
■撮影協力:ゴブリン

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