鎌倉から、ものがたり。

月1回の「まちの寄りあい場」。Green Morning Market

  • 文 清野由美 写真 猪俣博史
  • 2017年5月12日

 前日の雨があがり、すっきりと晴れ上がった日曜日の朝。9時をまわったころから、若宮大路にある「Copen Local Base Kamakura(コペンローカルベース鎌倉)」に、人々がそぞろに集まってくる。ベビーカーを押すファミリーやカップル、楽器を持った若い人、犬を抱いたマダム……目当ては、月に1回開かれる朝市「Green Morning Market(グリーンモーニング・マーケット)」だ。

 会場はダイハツの軽オープンカー「コペン」を展示するオープンスペースで、ガラス張りの広々とした建物の中は、開放的なカフェ。すぐ裏には江ノ電の線路があり、ローカル線がガッタンゴットンとなごやかな空気を運んでくる。

 この日の軒下には、まちで人気のアウトドアブランド「パタゴニア」や、「べつばらドーナツ」に加え、オーガニック・クッキーやオレンジゼリー、ワンピースやヘアターバン、ポーチなど、手作り品を売るブースがにぎやかに並んだ。中には葉山・長柄のカフェレストラン「ヤマウシ小屋」や、鎌倉駅前の古書店「ウサギノフクシュウ」など、この連載でおなじみのお店も。さらに、自分の庭で採れたタネを持ち寄る「タネの交換所」といった、ユニークなブースもある。

 目移りしながら選んだおやつを、カフェの椅子でほおばっていると、今度は音楽ライブがはじまる。カフェの一隅では、アフリカの楽器や、使用済みの包装紙を使ったメモ帳など、ものづくりのワークショップも同時進行中。ひとり音楽に耳を傾けたり、子どもと一緒に手を動かしたり、顔見知りと近況を交わしたり。それぞれに過ごす朝の時間が楽しい。

「ここは、まちの『寄りあい』や『井戸端』みたいな場所。庭先の延長のような感覚で、みんなが集まって過ごすところなんです」

 と、発起人の内堀敬介さんが話す。

出店料がないという自由

 きっかけは8年前に、「食堂コバカバ」店主である内堀さんと、鎌倉在住の写真家・ミュージシャンの大社(おおこそ)優子さんが、鎌倉駅前の「鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)」ではじめた同名のストリート・ミュージックにある。その後、「パタゴニア」の店舗前で1年間開いた後、2014年に現在の場所に落ち着いた。

 開催は朝9時から午後1時まで。毎月第3日曜日は、「Green Morning Music」と題して、「食堂コバカバ」「カフェ・ゴーティー」「ノラネコバーガー」の3カ所で音楽ライブを開く。そして第4日曜日が、コペンローカルベースで開く「Green Morning Market」の日。両方をまとめて「Green Morning Kamakura(グリーンモーニング鎌倉)」と呼ぶ。

 Green Morning Marketには、このまちならではの、いくつかの特長がある。

 まず、出店料がないこと。出店は来た順で、出店資格は「場の価値を理解し、大切に思うこと」。とはいえ厳しい制約があるわけではない。できる人ができるときにやる。

 次に、ダイハツのような企業が運営する場所と、まちの朝市が共存する形。ローカルなマーケットと車が、「小さくてコンパクト」というキーワードで通じ合う。そんな新しい連携がここにはある。

 さらに、「売る人」「買う人」の境目があいまいなこと。出店者は自分で持ち寄ったものを売りながら、ほかのブースもぶらぶらとたずね、世間話をしながら買い物もする。つまり、ここで人々が交換するのは、モノではなく、コミュニケーションということだ。

「非管理、自走型のコミュニティーが成り立っていることが、鎌倉ならではの面白さだと思います。出店料といったお金が発生しないことで、マーケットの公平さやバランスが保たれていて、そのことを集まる人たちも企業もわかっている。大雨なら中止もアリですが、小雨なら開催と、運営も臨機応変に、決めつけないでやっています」

 たとえばアメリカ西海岸の環境先進都市、ポートランドでは、市民マーケットがコミュニティー形成の大切な場とされている。そこではやはり、音楽が欠かせない。鎌倉でもそうだ。内堀さんいわく「バラバラな感じで調和している」ところに、世界に通じるマーケット・カルチャーの自由が息づいている。

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PROFILE

清野由美(きよの・ゆみ)

写真

ジャーナリスト。1960年、東京都生まれ。東京女子大学卒。慶應義塾大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。在学中、英ケンブリッジ大学客員研究員。英国留学、出版社勤務を経て、91年にフリー。先端を行く各界の人物インタビューとともに、時代の価値観や感覚、ライフスタイルの変化をとらえる記事を「AERA」「朝日新聞」「日経ビジネスオンライン」などに執筆。著書に『新・都市論 TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(隈研吾と共著・集英社新書)、『ほんものの日本人』(日経BP社)、&w連載「葉山から、はじまる。」を1冊の本にまとめた『住む場所を選べば、生き方が変わる――葉山からはじまるシフトチェンジ』(講談社)など。

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