こだわり派の逸品

東京・谷中の路地裏を、レンタルバイクで/Tokyobike Rentals Yanaka

  • 写真 山田秀隆
  • 2017年5月18日

Tokyobike Rentals Yanaka。試乗用のレンタルバイクが軒先でスタンバイしている

 東京・谷中のレンタルバイクを扱うコンセプトショップ「Tokyobike Rentals Yanaka」が、今春リニューアルオープンした。

 建物は、老舗の酒屋「伊勢五本店」として使われていた、築80年の木造店舗。リノベされた店内にはコーヒーやビールをふるまうカウンターが併設され、その傍らでは工芸品やスニーカーなど、ジャパンメイドな品々が置かれている。街へとくり出す前に一杯のコーヒーを楽しみ、返却時には冷たいビールで東京ツーリングの達成感を味わえる。現在、利用者の約半数は海外の旅行者が占めているそうだ。「体験型の旅」を求める彼らにとって、レンタルバイクはうってつけのアクティビティーなのだろう。でも、なぜ谷中なのか。さっそくトーキョーバイク代表の金井一郎さんに話を聞いた。(文・宮下 哲)

「移転してきた13年前と比べて街の風景も少しずつ変わっています」と代表の金井さん

店内には酒屋の面影を残すさまざまな調度品がそのまま残されている

    ◇

――なぜ拠点を谷中にしたのですか。

 トーキョーバイクは設立して15年目になります。今でこそ谷中が僕らの拠点になっていますが、もともとは世田谷で起業しました。当初は東急ハンズ渋谷店やオッシュマンズ原宿店などを中心に販路を広げ、創業2年目で事業拡大のために事務所兼ショールームを設けることになったんです。

 ただ世田谷周辺にはピンとくる物件がなく、そんな時にたまたまクルマで通りがかったのが谷中周辺でした。古い街並みにはセンスのいいギャラリーやカフェがあり、柔軟性のある街だと感じたんです。商売になるかどうか不安もありましたが、「駄目ならまた探せばいい」くらいの気持ちで、この街に決めました。

 2004年に谷中に拠点を移して以来、自転車の販売をメインにしながら、週末はレンタルバイクを並行してやってきました。そして2013年に、知り合いから「あの酒屋の建物が空くらしい」という話があり、僕はずっと気に掛けていた物件だったので、すぐに大家さんに相談することにしたんです。

 なんと言っても、創業300年もの歴史ある老舗酒屋が出した賃貸物件。「この建物は僕が借りるしかない。他の人に渡ったらうまく生かすことができないだろう」くらいのことを本気で思っていました。単純にかっこよくすればいいのでなく、ちょんまげを結った江戸の人々がお酒を買っていた時代から脈々と続く歴史の一部を借りる、という意識をもって引き継ぎたかったんです。

――トーキョーバイクを起業される前、金井さんはどんなお仕事をされていたのですか。

 フリーランスで企業のコーポレートサイトや広告の制作をしたり、自転車関連のアパレルを卸したり、いろんなことをやっていました。じつはトーキョーバイクを起業する前に、マニア向けに自転車のパーツを通販するサイトをやろうと考えていて、サイトを作るときに「トーキョーバイク」という名称を思いついたんです。当時は自転車と言えば、パーツにこだわるマニア向けのロードレーサーかママチャリ風の自転車くらいしか選択肢がなく、「自転車通勤しています」といえば周りにやや怪訝(けげん)な顔をされた時代です。そんな中で、トーキョーバイクが注目された時は、僕のように街乗りを楽しみたいと思う人が多かったんだなと実感しました。

――谷中に移転してから、どんな心境の変化がありましたか。

 自転車は「生活を楽しむための道具」という考えは起業時から変わりません。ただ当初は渋谷や世田谷など西東京のトレンドエリアのユーザーをターゲットに事業拡大していて、少し前のめりになっていたかもしれません。

 トーキョーバイクというブランドは、谷中に来てから地に足がついた気がします。会社と家との往復だけをする毎日から、もっとゆっくりと心に余裕をもって暮らすことの楽しさを知ったというか。それは、この街に来てから大きく変わった価値観です。

 ここで暮らしている人々を見渡した時に、同じようにショップをやっている仲間はみな、自分のペースで仕事をしていて、生き生きしています。きっとマーケティングとかじゃなくて、その人の思いだけで始めたからです。やっていることが表面的でないから、そのマインドもお客さんに伝わるんですね。大きな事業にはならないかもしれないけど、でも彼らにとってはそれでもいい。すごく気持ちのいい人たちばかりで、僕はここに来てから友達の数がずいぶん増えました。

ドリップコーヒー、ビールのほかにも日本酒も置いている

ショップのシンボルマーク。レンタルバイクのフレーム部分にも飾られている

――オープン以来、客層はどういった方がいますか。

 電車だと成田空港駅から40分くらいなので、このあたりは比較的外国の観光客が多く訪れるエリアです。利用者も半分くらいが外国の方で、なかでもヨーロッパ系が多いのが特徴です。男女でいうと、女性のほうが若干多く感じます。

 わざわざこのショップを目指して来てくれる人は、単なる観光客というより、「街にしっかりと根付いた旅をしたい」とか、「東京に暮らしているような感覚で巡ってみたい」といった意識があるわけです。ショップ自体も、東京を楽しんでもらうことをキーワードにそれを具現化しているような場所です。ぜひ旅の一部として、自転車を使ってもらえればと思います。

「SyuRo」の皿。吸水性のほとんどないところが特徴。白(写真)、黒、グレーの3色

山形を拠点に活動するデザイナーが手掛けた、シンプルな模様が美しい刺し子のお守り

――ウェブサイトでも新たな展開があるそうですね。

 先日、ショップ専用のウェブサイトを立ち上げて、そこに「シティーガイド」のコンテンツを作りました。英語と日本語のバイリンガルで、東東京のオススメショップを私たちの視点で紹介しています。

 ちなみにサイトを制作したのは、世界をずっと旅しながら仕事しているドイツ人とスイス人のクリエイターカップル。3月まで東京に滞在していた彼らと意気投合したのが、依頼したきっかけです。見切り発車で立ち上げたので、まだいろいろ改善していきたいと思っています。

 これまでは「自転車を販売するショップ」として知られてきたトーキョーバイクですが、今後はいわゆるモノだけでなく、レンタルバイクを通じて伝えられるいろいろなサービスにも、「いいね」と言われるような存在になればと考えています。

    ◇

Tokyobike Rentals Yanaka
東京都台東区谷中4-2-39
営業時間:10時~19時半
定休日:水曜日 ※祝日営業
電話:03-5809-0980

ロンドンのブランド「Ally Capellino」とコラボ制作されたバッグ。自転車用に細部をアレンジしている

福岡の久留米市に拠点を置くムーンスターのスニーカー。種類も豊富で今夏には、コラボモデルも展開予定という

レンタルバイクの利用者には、オリジナルノートとエコバッグをプレゼントしている。ノートは、サイクリング中に街で出会ったお店のショップカードなどを差し込むことができる

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