Woman’s Talk

何が起こるかわからないと思えば、人生を楽しめる とよた真帆さん(女優)

  • 2017年5月18日

  

夫とはギャグのセンスが同じなんです

 「子どもの頃に憧れていたのは考古学者。石が好きで、遺跡の発見にロマンを感じていました。映画や舞台が好きだったいとこや兄の影響もあって、役者の世界にも興味はありましたけどね」

 人気モデルだったとよた真帆さんが女優の仕事を始めたのは28年前。「感情に任せるのではなく、計算して演じていくような職人っぽいアプローチ」を目ざし、役に取り組み、現在もテレビドラマ、映画、舞台で幅広く活躍している。昨年8月には、初めてのミュージカルにも挑戦した。女優をしていて一番うれしい時は?と尋ねると「出来上がりを見た時」との答えが返ってきた。

 「女優業って想定外のことばかりなんですよ。とくに映像の場合、撮り終わった後に(編集などで)他の人の手が入るので、脚本はあっても最終的にどう仕上がるかわからない。だから思ってもいなかった出来栄えになっていたりすると、純粋にうれしいんですね」 2002年、出演作『月の砂漠』の監督・脚本を手がけた青山真治さんと結婚。小説家であり、音楽家であり、演出家であり、映画批評家でもある夫とは「親友夫婦」。気があう理由は「ギャグのセンスが同じ」こと。一緒に仕事をすることも少なくない。

 「こんなものができたらおもしろいね、といつも2人で仕事の話をしています。全部を実現するのは無理とわかっているから、種をまいてイメージを膨らませています。青山も、出来上がってみないとわからない作り手の一人。だから毎回仕上がりが楽しみなんです」

80歳を超えても現場に立つ女優になりたい

 夫と保護した4匹の猫と一緒に暮らす。料理やインテリアの本も出版しているとよたさんのこと、さぞやすっきりおしゃれに暮らしているかと思いきや、「今は時間があったら掃除をしたい」と笑った。

 「猫が大暴れして、すごく汚すんですよ。あまりに汚れがひどいうえに、物が多いことにうんざりして、今、断捨離をしています。洋服は、後輩の女優さんにダンボールで5個あげました(笑)」

 歳(とし)を重ねてきたことも、物を減らしたくなった理由の一つ。自分にとって大事なのは居心地のいい空間や好きな人たちと過ごす時間で、物ではない、と強く感じるようになった。

 今年の夏には50歳になる。

 「年齢は気にしません。今は、尊敬する草笛光子さんみたいに80歳を超えても現場に立っていられる女優さんになりたいと思っています。そのために大事なのは体力だから、ビタミンを補給したり、よく歩いたりしています。ジムに行ったりはしないです。生活の中に“ながら”で全部織り込めば、家でウダっとできる時間が増えますからね」

 気さくで自然体なうえに庶民的。こちらの肩の力も抜けていく気がする。ある種の懐の深さは、「理想や希望、こうあるべきというものは作らない」ところにありそうだ。

 「映画の撮影が決まっていたけれど、急に流れて2カ月ぐらいスケジュールがポッカリ空いてしまい落ち込んだんです。でもその時、むしろ空いた時間を有効に使おうと以前から好きだった絵を描き始めたら、それが個展や京友禅の仕事につながった。それ以降、理想や希望に固執しなくなりました。それはむしろ成長の妨げになるし、苦痛や悩みの元になる。何が起こるかわからないと思っていれば、起きることが楽しめる。人生はハッピーじゃないと意味がない、と思っています」

 そう言ってすっきりとした笑顔を見せた。

撮影:渞 忠之/ヘア&メイク:中西樹里/スタイリスト:長田久美/文:木村由理江

    ◇

とよた・まほ

1967年、東京都生まれ。学習院女子高等科在学中にモデルデビューし、86年にアニエスbのモデルとしてパリコレクション等に出演。その後女優に転向し、89年「愛しあってるかい!」でデビュー。以降、多数のドラマや映画、舞台等に出演。芸術の造詣(ぞうけい)が深く写真や絵画の個展を開いたり、京友禅の絵師として着物のデザインを手掛けるなど多方面で活躍。著書に「もふもふ猫まみれ とよたさんちのマブ猫22のハッピールール」(講談社刊)。4月からbayfm「SATURDAY BRACING MORNING」(毎土曜朝8時)でラジオのパーソナリティーに初挑戦。

[PR]

■この記事は、2017年4月11日付朝日新聞朝刊「ボンマルシェ」特集のコーナーの転載です。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!