パリの外国ごはん

人気の激辛四川料理、唐辛子2倍!「Deux fois plus de piment」

  • 文・写真 川村明子 イラスト 室田万央里
  • 2017年6月20日

  

 パリは移民が多く、その歴史的背景からも、北アフリカや中近東、アジア諸国の料理を楽しめる。中でも圧倒的に多いのは、中華料理だ。ヘルシー系のテイクアウト店が増えた今も、ランチタイムになると中華の総菜店には列ができる。外国料理として不動の定番とも言える中華料理は、地方色の強いお店もあってバリエーション豊かなのだが、最近、新たな波が生まれた。

姉妹店は「唐辛子3倍」「唐辛子5倍」

 その生みの親とも言えるのが、「Deux fois plus de piment」=唐辛子2倍という店名の四川料理店。看板には漢字で「絶代双椒」とある。フランス人は辛いものが苦手で、だからパリの中華料理は少し甘ったるい、というのが定説だったはずなのだ。それが、この店の姉妹店Trois fois plus de piment = “唐辛子3倍”が昨年オープンし、今年に入って“唐辛子5倍”なる3号店までできた。麺料理が専門の2号店はあっという間に人気店となり、順番待ちの列に並ぶフランス人が後を絶たない。

 私は辛いものが好きで、ときどき無性にがつんと辛いものを食べて発汗を促したい衝動に駆られる。そんなときは“2倍”のお店がうってつけだ。麺は大好きだけれど、粉ものだと私はおなかにたまってしまうから、野菜料理もあるおかずメインの本店がいい。件の衝動に襲われ、この連載を始めて定期的となった万央里ちゃんとの会合で、この店に行くことにした。

  

 今回ランチタイムに初めて訪れたら、12ユーロ、9.80ユーロ、8ユーロと三つのセット価格が設定されていた。それぞれ、おかずの選択肢がいくつかあり、白いごはんが付いてくる。まわりのテーブルを見渡し、気になるお皿をチェック。まず、12ユーロのセットにある白身魚入りの四川辛味スープを取ることに決めた。左隣のフランス人中国人混合7人グループが頼んでいた“牛肉とポロネギのソテー、唐辛子とヴィネガー風味”というのもおいしそう。こちらは9.80ユーロのセットにあるもの。その二つのセットと、プラスして、アラカルトのメニューから白菜の炒め物を頼むことにした。

  

 このお店は、オーダーのときに好みの辛さを聞かれる。1から5段階まであり、私はいつも2。3だと辛すぎて味を感じなくなると言っていた友人がいて、でも1だと物足りないかも……という思いがよぎり、“2”でしか頼んだことがない。個人差があると思うけれど、2ならば、おいしく最後まで食べられる。結構“3”を頼むフランス人もいて、平気な顔で食べていたりするから、ずいぶんと変わったもんだなぁと思う。辛過ぎてしびれた経験のすでにある万央里ちゃんとも意見が一致し、この日も辛さ“2”でお願いした。

  

 ほどなくして、冷たい麺が盛られた小さなボウルが出てきた。これは12ユーロのセットについている前菜的なもの。少し甘みのあるピリ辛ダレが太めの白い麺に絡めてあり、食欲を増進させる。同時に、これは箸休め的なものとして取っておいた方が良い気がするな…と思い、ひと口食べて止めておいた。

 続いて、白菜の炒め物とごはんが登場。この白菜が、しゃきっと歯ごたえの残る火の通し方で、辛さ控えめ黒酢がきりっと効いていて、これだけでごはんが進む味だった。8ユーロのコースだと、この白菜をメインに選ぶことができる。それに前菜の水ギョーザ(小ボウルで出てくる)を頼んでランチにするのもありだなぁ。なんて思っていたところに、大きな鉢に盛られた白身魚のスープが運ばれてきた。一面真っ赤。ここに来るときは、ポケットティッシュ2パックが必須だ。牛肉とポロネギのお皿もそろい、戦いに挑むような気持ちで食べ始める。

  

 確かに辛くて汗はかくし、途中で1回鼻もかんだけれど、気持ちの良い辛さでなんだかすがすがしかった。この日食べたものの中には、花椒の辛さがそんなになかったからかもしれない。挑戦的な色ほどには、魚のスープも激しくなくて、辛い中にも味に丸みを感じた。ふりかけてあるピーナツが意外にも効力を発揮していたのと、お魚が油通ししてあるのかな? スープ自体にもうまみがあった。牛肉の一品も、ネギの甘みに助けられ、さっぱりした味付けと、しつこさを感じない油の量で、とても食べやすかった。

  

 そして白菜。メインを食べてから、最初に出てきた麺を食べたら、思いのほか箸休めにはならなくて、逆に口の中の辛さがましたのだ。そんなに辛いとは感じていなかった花椒が、唐辛子をふんだんに食べた後に口にしたことで、刺激となった。ほっとさせてくれたのは、白菜だった。あとは、全体的な選び方がよかったんだな、この日は。

 食後は、スポーツをしたあとのようなやりきった感があって、元気になった。

 夜に行くと欲張ってたくさん頼んでしまうから、お昼に行くのがちょうど良いかもしれない。学んだコツは、黒酢ベースの味付けのものを頼むこと。まだまだおいしい食べ方を発見できそうだ。また辛いものを欲したら、ここに行くことにしよう。

  

Deux fois plus de piment(絶代双椒)(ドゥ・フォワ・プリュス・ド・ピマン)
33, rue Saint-Sébastien 75011
01 58 30 99 35
12時〜14時、18時30分〜22時30分
水休み

    ◇

◎川村さんが企画・構成を手がけている番組「お皿にのっていない時間」が、6月30日に放送されます。パリで活躍する日本人シェフたちの、営業時間外の活動を追ったドキュメンタリーです。
「伝える人」として川村さんが出演、ナレーションもしています。ぜひご覧ください。
「お皿にのっていない時間 4 ~パリで日本人シェフ達が紡ぐ、いま~」
6月30日(金)24時~24時55分 BSフジ 放送
>>番組HPはこちら
>>川村さんのfacebookページ、さらに詳しい情報はこちら

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

写真

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

写真

無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
Instagram @maorimurota

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!

Columns