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<66>週末はクイズ作家の本棚で時間を忘れて

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2017年6月15日

 東京・下北沢に、金、土、日の週末3日間と祝日しか営業しないカフェがある。

 「近所の人に『いつのぞいても閉まってる』と言われたりしたこともあります」

 そう笑いながら話すのは、「RBL CAFE」オーナーでクイズ作家の仲野隆也さん(51)。ここは仲野さんのオフィス兼カフェで、3日間だけカフェとして営業している。本当はもっと営業できればいいのだが、基本的に仲野さんが一人で切り盛りしているため、“物理的な限界”があるのだ。

 店内の両脇には、天井から床までびっしりと本が詰まった棚。約7000冊あり、全て仲野さんが資料として購入したものだ。そのため、ジャンルは多岐にわたり、事典やうんちく系の本も多い。これだけあっても、蔵書の3分の1という。

 「僕がモノとしての本が好き、ということもありますが、クイズ作りのリサーチや裏取りのために必要に迫られて買ったものです。多い時は年間700万円分くらい本を買っていました」

 今でも1カ月の書籍代は5~10万円。蔵書数があまりにも多すぎて、既に持っている資料とわかっていながら、探し出す時間も惜しくて同じ本を買い直したこともしばしば。

 「気づけば、同じ本が4冊くらいあったことも(笑)」

 ところで「クイズ作家」とはどのような仕事なのか?

 「テレビのクイズ番組などで出題する問題を考えるのが仕事ですが、一般企業からの依頼も多いんです。社員用に専門知識の習熟度をはかるためのテストを作ったり、検定試験の問題を考えたりするのも僕の仕事です」

 小さい頃からクイズが好きな仲野さんは、かつての人気番組「クイズタイムショック」の高校生大会で優勝し、大学時代もクイズ研究会に所属するなど、クイズと共に歩んできた。その延長線上に今の仕事がある。

 コーヒー好きな仲野さんは、カフェで仕事をすることが多く、「いっそ、自分にとって居心地のいい空間を作ってみよう」と思い立った。コーヒーがおいしくて、一人で入りやすくて、電源とWi-Fiがあって、ゆっくりできる“理想の店”をオープンさせたのは2016年8月のこと。

 客の大半は一人で店を訪れ、本を読んだり、仕事をしたりしている。一人席を本棚に向かい合わせにしたのも、一人での居心地の良さを考えてのことだった。それがまんまとはまってか、半日以上店内で過ごす人もちらほら……。

 「長居していただく分にはいいんですけど、ビジネスとしてみたらちょっと厳しいですよね(笑)。でもクイズ作家との二足のわらじだから、なんとかやっていけているところはあると思います」

 オープンから10カ月が過ぎ、仲野さんがやってみたいと考えていることがある。それは「クイズイベント」だ。

 「イギリスには“クイズパブ”があって、大人がクイズを楽しめるんです。クイズは受け皿が広く、森羅万象を扱います。何かテーマを決めてクイズ大会をすれば、クイズファンだけでなく、そのファンの人たちも集まって楽しめるんですよね」

 確かに、自分が大好きな漫画やアーティストのマニアックなクイズ大会があったら、腕試しとして参加してみたいと思うだろう。

 「急にお題を突きつけられると、反応しないわけにはいかないですよね? クイズって会話のきっかけになるし、コミュニケーションの手段でもあるんです」

 そして、クイズは答えそのものよりも解説こそが作家としての「腕の見せどころ」だという。思わず『そうだったのか!』とうなってしまうような意外な理由、誰かに話したくなるようなうんちくこそがクイズの面白いところだと仲野さんは考えている。

 「世の中にはさまざまな情報がありますが、ノイズを取り除いて提供するのが僕の仕事。でも、本当に正しいかどうかには正直そこまでこだわっていないんです。答えは一つじゃないし、そういう部分も許容できる人間でありたいと思っています」

 そんな仲野さんの最近の楽しみは、閉店後の店のプロジェクターで映画をみたり、本を読んだりすること。

「本がありすぎて、なかなか読めないんですけどね。ゆっくり読めるのは仕事を引退してからでしょうか(笑)」

■おすすめの3冊

「死ぬまでに見たい映画1001本」(著、編集/スティーヴン・ジェイ シュナイダー)
1902年から2003年の映画の中から、時代、国、ジャンル、ムーブメント監督、俳優など多岐にわたる観点で1001本を厳選し、紹介。8カ国58人の映画評論家が各作品にコメントを寄せている。現在流通している改訂新版は、2013年までの作品を収録。「この本の中で僕がみたのは400本くらい。あと500本以上もあるんですね。みるべき映画がまだまだたくさんあって、うれしくなります。実は数を数えるのが大好きで、この本を見た時に、自分が見た映画をチェックしました」。

「空の名前」(著/高橋健司)
天候や季節を表す豊かな日本語を、300点余りの写真とともにまとめた一冊。「普段はあまり意識しないのですが、日本語の表現の奥深さや、事前に対する感情を感じることができます。これだけの写真を撮るのも集めるのも大変だし、2700円でも安いと思います!」

「POWERS OF TEN―宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅」(編著/フィリップおよびフィリス・モリソン、チャールズおよびレイ・イームズ事務所)
極大の宇宙から極小の素粒子へ、美しい絵と写真で自然界を眺めていくというロングセラー本。「普段、人は自分たちの立ち位置を気にしがちですが、この本はものごとを相対化してくれます。スケールの違いを感じることで、気づかされることがたくさんあるんです」

    ◇

RBL CAFE
東京都世田谷区代沢5-32-12
https://www.facebook.com/rblcafe/

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