リノベーション・スタイル

<152>横浜郊外から目黒へ。都心部に住むための「断捨離」術

  • 文 石井健
  • 2017年6月21日

 [I邸]
 Iさん一家(夫37歳・妻33歳・長男8歳・長女4歳)
 東京都目黒区 築52年(リノベーション完成時)/73.99m²/
 総工費 1060万円

    ◇

 最近はリノベーションをするときに、郊外を積極的に選ぶ人が増えていますが、もとはといえば、リノベーションは立地優先で、都心部に住むために、比較的手に入りやすい中古マンションを購入してリノベーションする、というのが出発点でした。

 郊外派、都心派はどちらもありですが、今回ご紹介するのは、一度郊外に行ったものの都会の生活が忘れられず、また都心部に戻ってきたというご一家の事例です。

 Iさん一家は、ご主人の仕事の関係で大阪に住んでいましたが、その後横浜の郊外に引っ越し、住宅街に住んでいました。落ち着いた環境が魅力でしたが、次第に奥様は「わざわざ出かける必要がなく、近所を楽しめる都心に住みたい」と思うように。そこで都内で中古物件を探し、リノベーションをすることになりました。

 都内のマンションは、アクセスがいい場所にあるほど、オフィスに改装されることが多いのが実情です。今回Iさん夫婦が見つけた物件も、目黒駅からほど近い場所にあったため、住宅だったものがオフィスに変わっていました。キッチンが取り払われていて、お風呂は物置に。これを再び居心地のよい住まいに戻す、というのが今回のリノベーションでした。

 まずは、部屋の端から端までの長さを生かすため、どのように個室を配置したらいいかを考えました。最終的に落ち着いたのは、入ってすぐキッチン&ダイニングがあり、そこを通り抜けて、リビング、寝室へとつながる間取りです。

 一番奥、ベランダ側に子どもたちの寝室を作りましたが、玄関からベランダの窓まで視線が通るように、寝室の扉はガラスにしました。ご夫妻の寝室は子ども部屋の隣に造り、ウォークインクローゼットと一体型にしています。

 玄関を開けるとキッチン&ダイニングなので、家に帰るとカフェのような雰囲気です。窓にはカーテンもつけず、照明も暗めにしたので、夜になると本当にお店に来たかのよう。

 キッチンやサニタリーなどの水まわりは、白いサブウェイ風タイルで統一。特にサニタリーは床も六角形のモザイクタイルを使い、「おしゃれな床屋」のようなイメージにしました。

 部屋全体は大人っぽいモノトーンで統一しつつ、ところどころにお子さんのカラフルなおもちゃや、音楽好きなご夫婦のギター&ベース、レコードなどがあり、ご一家のテイストが彩りを添えています。

 物が少なくすっきりしたお部屋ですが、ふだんの買い物時から「本当に必要かどうか」「自分が好きかどうか」を考え、持ち物を厳選しているそうです。そんな“心地のよいストイックさ”が気持ちのいい空間を作っているのでしょう。

 郊外に住むというのは、「都心へのアクセスのよさ」を捨てる行為で、ある意味「心の断捨離」と言えるかもしれませんが、都心に住むということは、アクセスのよさを得る代わり、広さや自然に囲まれた住環境を捨てること。部屋はどうしても狭くなるので、文字通り「物理的な断捨離」が必要です。でもそうすることで、都心でも居心地のよい空間を作ることができるのです。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

写真

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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