東京の台所

<147>台所の数だけ、発見がある。番外編 みんなの収納アイデア

  • 文・写真 大平一枝
  • 2017年6月28日

 「東京の台所」、今回は番外編として、収納のアイデア特集をお届けします。いずれも大平さんが146軒の取材で「目撃」して心に残ったものばかり。それだけに、一つひとつがリアルで、収納の本を読んだりテレビを見たりするより身近で勉強になりそうです。恵みの梅雨どき、すぐに役立ちそうな発見の数々を、お楽しみください。

    ◇

 146軒の台所を訪ね歩き、もうすぐ5年目になる。そのほとんどの家が、限られたスペースで、自分なりに工夫を重ね、器や食材や料理道具を収納していた。本欄で、フランス(パリから電車で約1時間)の台所を6軒訪ねたことがあるが、やはりかの地と比べると、日本の台所は圧倒的に狭い。

 だからこそ、シンクやつり戸棚の扉を開けると、思わぬ発見があって、おもしろいし、飽きないのだ。

 しまい方を見ると、性格や食べ物の嗜好(しこう)、料理の頻度、ライフスタイル、癖や個性の片鱗(へんりん)が伝わってくる。

 そんなわけで、取材時は、厚かましく「扉を開けていいですか」とたのみこむ。「え、いやその……」と迷っている人に、「開いていいところを、少しだけでも見せてください」と、たたみかける。自分が逆の立場なら、こんなずうずうしい取材は勘弁して欲しいと思う。

 だが、しかたがない。シンクの下や引き出しや、冷蔵庫の中、扉の向こうに、ふいに、その人の取り繕いきれない本質が見えたりするものなのだから。

 収納というのは、ゴールがなくて、住んでいくうちに、その空間と自分のライフスタイルに合わせた気持ちのいい落とし所がみえてくるものだ。その人にしかわからない発見の過程を聞くのも楽しみのひとつである。

 例えば最近では、油汚れが落ちる使い捨てのスポンジを、ガラス瓶に入れている人がいた。その横には同じ形の瓶に、飛行機の食事やヨーグルトについている個包装のシュガーが。住人が教えてくれた。

「同じ形のものを二つ並べると、こまごましたものを入れても、スッキリ見えるということに、最近気づいたのです」

 ささいな事だが、狭い台所では重要な発見だ。スポンジとシュガーを、全く違うサイズ、質感、形の容器に入れていたら、もっとごちゃごちゃとして見えるだろう。同じモジュール、形の容器に入れると空間に統一感が生まれる。収納を考えるとき、なにをどうしまうかだけでなく、それを置く場所や横に並ぶものまで思いおこすことが大切なのだ。

 だから、たとえ100円ショップでかごをひとつ選ぶ際も、それが廃番にならず、3年後もひとつ買い足せるかという視点が必要になる。

 また主婦歴30年余の女性は、扉を開けた棚の奥にある、年季の入った調味料ラックを見せてくれた。そこには「さとう」「しお」「片栗粉」「天然塩」と、手書きのマジックのラベルが。セピア色になったラベルもある。途中何度か貼り直した跡も。なんの飾り気もないが、彼女の生きてきた時間がそのラベルからにじみ出ているようで、あたたかな気持ちになった。この調味料で、来る日も来る日も家族のためにおいしい料理を作ってきたんだろうなあ、と。

 ラベリングはとても大事で、どんなにおしゃれな収納でも、これがないと整理がつかない。それがなくても自分はわかるが、家族が家事を手伝うときにとても役立つ。

 器を仕舞う場所も「小鉢」「湯のみ」など、ラベリングをすると、子どもでも片付けや給仕を手伝いやすい。

 小さな工夫が、家事の負担の軽減ををもたらしてくれる。

 釣り道具のざるや、古道具屋で入手した菓子屋の木箱、アウトドアグッズを上手に台所に活用している人もいた。なんでも、必ず「台所用」である必要はないのだなと、意外な転用法を知るのも楽しい。

 暮らしていれば、シンプル&すっきりとばかりはいかない。生活からあふれ出るモノと、どう折り合いをつけ、付き合っていくか。それぞれの落とし所を目撃して歩く。台所を訪ねる旅には、尽きせぬ魅力がある。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

写真

長野県生まれ。失われつつあるが失ってはいけないもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『あの人の宝物』『紙さまの話~紙とヒトをつなぐひそやかな物語』(誠文堂新光社)、 『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)、『日曜日のアイデア帖~ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『昭和ことば 辞典』『かみさま』(ポプラ社)ほか多数。HP「暮らしの柄」 ■レンズ協力:SIGMA ART|18-35mm F1.8 DC HSM、SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO HSM

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