上間常正 @モード

力は失いつつも、されどトレンド

  • 上間常正
  • 2017年7月28日
  •   オフショルダー(ブルーガール)
      いずれも2017春夏コレクションより
      撮影・大原広和

  •   盛り袖(クロエ)

  •   ロゴ入りTシャツ(モスキーノ)

  •   コンビネゾン
      (イーチ・アンド・アザー)

  •   ワイドパンツ
      (ステラ・マッカートニー)

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 天候不順が続く中で、夏本番を迎えたようだ。さて今年の夏の装いは?と考える人も多いだろう。ファッションなどはどうでもいいと思っている(誤解している)人は別としても、特に流行を追うつもりはないけれど去年の夏服をそのまま着ることにはちょっと抵抗感が、という人は少なくないと思う。

 去年と同じ、ということに引っかかりを感じるのは、多くの人は自分が進歩しているとは言えないとしても変化はしていると思っているからだ。または、自分があまり変わっていないのに社会や時代の動きの方が先に行っていて、それに取り残されてしまうのではとの不安を覚える人もいる。

 その時に気になるのがファッショントレンド、ということなのだろう。雑誌などでトレンド情報を読んでみたり、街に出て流行に敏感そうな人たちがどんな服を着ているか観察したりして、服選びや着こなし方の参考にする。多くの人にとってトレンドはそんな役割を意味しているのだろう。

 とはいえ、「トレンド」という言い方には、どこか押しつけがましさや売らんかなの商業主義的なニュアンスがあることも否めない。ファッションのトレンドというのは基本的には服の作り手側から発信されるものだからだ。服ができる数年間にまず世界的なトレンド予測会社が何通りものイメージトレンドを提案し、次に色の予測が半年後にパリの「インターカラ―」などのカラートレンド予測団体から発表される。

 続いてその半年後に、イメージと色のトレンド予測に沿って糸や織物のメーカーがテキスタイル(布地)の新作を発表する。そして次にデザイナーや服のメーカーが新作の服を店頭に出される約半年前に発表、それをファッション誌などのメディアが紹介する、という仕組みになっている。

 こんなに複雑で多くの人の手間と時間をかけて発信されるトレンドに対して、服を選んで買う側は受け身になりがちになる。事実、ファッションの世界ではトレンドはこれまでずっと長い間、いわば作り手側からの「ご託宣」「命令」として消費者に君臨してきた。

 ところが最近は、というより実は2010年代に入ってからずっと、「トレンドには力がなくなった」と言われている。「創造力」のパリに対して「トレンド発信」のミラノとうたわれていたイタリアの有力ブランドからも、新しいビッグトレンドが出ない状態が続いている。世界的な経済格差の広がりによって、ブランド品の購買層だった先進国の中間層の没落、趣味の多様化、若者の貧困化……。そうした変化を受けて、有力ブランドの経済基盤が弱まり、魅力あるトレンドの発信力が低下してきたとの指摘もある。

 しかし、もっとはっきり言えば、楽観的な経済成長の時代に消費を誘ったファッションのトレンドの魅力が、今の時代の買う側の気分にあまりアピールしなくなっているということだろう。とはいっても、それに代わる強いトレンド発信の担い手がどんどん出てきているというわけではない。ファッションがトレンドを出せるようになるとも思えないし、今の有力ブランドやデザイナーの創造力を全く否定するのもどうかと思う。

 そんなわけで、今年の春夏コレクションからうかがえる〝小トレンド〟をいくつかあげてみる。形でいえば、肩を出したオフショルダーのトップス、肩袖を膨らませた盛り袖、ロゴやメッセージの入ったTシャツ。上下つなぎのコンビネゾンやゆったりとしたワイドパンツ、といったところだろうか。色は淡いビタミンカラーの黄色やピンクが目につく。まあ、こんな中からどれかをさりげなく採り入れればいいのでは。

 ファッションというのは多分、作っては壊し、壊しては作るという絶え間ない動きそのものなのかもしれない。そしてそれは、人が生きていることそのものと密接に結びついているのではないか、とも思う。だから、そうした動きの連続にある今現在、そして常に新しいということが大切なのだ。トレンドというのは、そんな動きへの前触れ、一つの指針としては実は欠かせないものだともいえるのではないだろうか?

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PROFILE

上間常正(うえま・つねまさ)

写真

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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