パリの外国ごはん

ブリトーとケサディーヤの違いって?「Café Chilango」

  • 文・写真 川村明子 イラスト 室田万央里
  • 2017年8月1日

  

  

  

 「メキシコどうすか?」。

 辛いものが食べたいと言った私に、万央里ちゃんが提案してきた。「タコス食いたい」と。

 もう5年ほど前だろうか。ストリートフードの波がパリにもやってきて、ハンバーガー店が何軒もオープンし、気軽においしく食べられるものの選択肢がぐっと増えた。そして、グルメケバブやホットドッグ屋さんもできるなか、タコスのお店が登場。おいしいカクテルを楽しめる場所がとても少なかったパリで、夜になればカクテルを提供し、数種のタコスでもてなすおしゃれメキシカンは人気を得た。

 「プレゼンと雰囲気はCafé Chilango」。彼女のイチ押しは、私がまだ行ったことのないお店だった。そう伝えると「ないの? お皿も可愛いし、全部おいしかった。」と、これまた手放しのほめよう。それで、行くことになった。

 今年は6月にずいぶんと暑い日があったからか、例年よりも早く、7月に入ってすぐの頃からバカンスに発つ人が多い印象だ。タコスランチに出かけた日も、街中は平日とは思えないゆる~い雰囲気で、気だるさを誘う蒸し暑さに「ちょっと中米気分かも」なんて感じた。

小麦粉で作ったトルティーヤで巻いたブリトー

 お店に着くと、先客は1組。夜の方がにぎわうのだろう。万央里ちゃんも、お昼は今回が初めてと言っていた。ランチは、3種類のタコスか、ケサディーヤ、ブリトーのどれかにドリンクを合わせて10ユーロ。具は、ベジタリアンを含む4種類。ケサディーヤとブリトーの違いがいまいちわからないまま、とりあえず食べてみるか、と万央里ちゃんがベジタリアンのブリトーを、私はお肉2種とベジタリアンの具を選んでタコスにした。ドリンクは、前回ご紹介したYemma同様、ここChilangoにもスイカウォーターがあった。それにレモネードを注文する。

 奥に細長い店内の、真ん中にカウンターがしつらえてあり、お料理もその中で作られていた。オーダーして少しすると、いい匂いが充満してきて、食欲をそそる。お料理を待つ間、ケサディーヤとブリトーの違いを2人で検索してみた。どうも、ケサディーヤは生地に具を乗せ二つ折りにしたもの、そしてチーズ入りらしい。対してブリトーはロール状のもののようだ。

 スイカウォーターとレモネード、それにチポトレ(乾燥してくん煙した唐辛子)がベースと思われるソースが置かれて可愛らしかったテーブルに、お皿が運ばれてくると一気に鮮やかになった。う~ん、これは確かに可愛くておいしそうだ。

タコス3種。手前が牛ひき肉、左奥が鶏肉

 まず、青いほうろうのお皿が、こんなにも木目のテーブルに映えるのか、ということに驚いた。サラダが添えてあることも、それに酢漬けの赤キャベツが合わせてあるのもいい。見た目からしてテンションがあがり、どれから食べようと目移りした。私の具は、ズッキーニとポロネギにコーンと、鶏肉+トマト+チポトレ、それに牛ひき肉にピーマンとトマト。

 シンプルにいちばん手に取りやすい鶏肉のタコスから食べることにした。手で裂いてあるトマト味の鶏肉はそれだけでもとてもおいしくて、上にかかっている白いチーズとあわさるとコクが深まる。これをもしバゲットに挟んだら……と想像してみた。それもおいしいだろうけれどちょっともったりするだろうな、と思った。でも、バスマティ米のような長粒の香り米とは合う気がする。鶏肉が丁寧に料理されていることがわかる味で、食欲を増幅させた。

 食べきってしまうのがもったいなくて、一度置き、牛ひき肉のタコスをひと口。ポテトも乗っていてすごくボリュームがありそうなのに、ピーマンが入っているからか、意外にさらっとしていて、こちらの方がきりっと大人っぽい味。

 最後に野菜だけのタコスを。具にコーンが入っていると、アメリカ大陸だなぁと思う。コーンの触感って他にないものだから、加わっているといないでは、ずいぶんと印象が変わる。そしてやっぱり甘みが魅力的。味の濃さのバランスも、3種を順番に食べるとちょうどよかった。

 万央里ちゃんが頼んだベジタリアンのブリトーは、小豆を潰したものが包まれていた。それにフレッシュチーズを合わせてあるからか、もさもさした感じはなく滑らかで、食べ応え抜群。これは意外に、お肉の具を選ぶよりもおなかが張るかもしれないなぁと思った。

 ただ、味の面では、お肉類の方が断然パンチがあるから、それでの満足感が大きい。

 どれもとってもおいしくて、どうしても残りのひとつ、ケサディーヤが気になった。

追加で頼んだケサディーヤ。これも小麦粉の生地

「ケサディーヤも頼んでいい?」と聞くと、「いいよ」と言うので追加。すでに万央里ちゃんは、私の食べる量には驚かなくなっている。具は、迷った末にチキンにしたところ、タコスにも乗っていたトマト味の鶏肉の他に、ベジタリアンのブリトーに入っていた小豆、そしてチーズも入っていた。このチーズがとてもよく伸びる。

 そんなにいろんなメキシカンのお店を食べ歩いたことがあるわけではないけれど、タコス、ケサディーヤ、ブリトーとも、ここのは大満足のおいしさだった。帰り際に、ケサディーヤとブリトーの違いを、サービスをしてくれていたスペイン語っぽいアクセントのある女性に聞くと、ケサディーヤはチーズ入りで二つ折りにしたもの、ブリトーはなんとお米入りのものらしい。これにはびっくり。お米が入っていたのか??? わからなかった。ということでもう一回食べに行かなくちゃ、と今回もまた思った次第です。

  

Café Chilango
82, rue de la Folie Méricourt 75011 Paris
01 47 00 78 95
12時~17時、18時30分~24時
火曜昼と、日曜夜休み

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PROFILE

川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

写真

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

写真

無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
Instagram @maorimurota

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