川島蓉子のひとむすび

<22>大理石や花こう岩を、もっとふだんの暮らしに ~関ヶ原石材(後編)

  • 文・川島蓉子 写真・鈴木愛子
  • 2017年8月2日

展示会「暮らしを彩る石」から。「カパオボニートレッド」という、赤とオレンジ系の色が混ざっている花こう岩をパネルにしたもの

  • こちらは「グリーンマーブル」という緑色の大理石。どちらも家具や盆栽、照明と組み合わせて、石を絵のように飾っています

  • 「グリーンマーブル」を近くでよく見ると、自然で豊かな石の表情が印象的です

  • 「浪花白」という花こう岩のパネルを、ベッドのヘッドボードの背景として提案。石が持っている上質さと温かみが伝わります

  • パレットを手で触ってみると、石が近い存在として感じられます

  • 石を生活空間の中に取り入れ、新しい暮らしのシーンとして提案。確かに、実際の住まいのような空間の中で見ると、とても存在感があります

  • 展示会「暮らしを彩る石」は、「東京ミッドタウン」で開催されました

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>>関ヶ原石材(前編)から続く

 前回は、岐阜県関ケ原にある「関ヶ原石材」という会社が、六本木の「東京ミッドタウン」をはじめ、誰もがよく知っている建物の内外装を手がけていることに触れました。

 その「関ヶ原石材」が、消費者に向けた新しい商品を開発しました。“石の魅力をもっと伝えたい、石をふだんの暮らしに取り入れたらどんな空間になるだろう”という思いを込め「STONE PALETTE(以下、ストーンパレット)」というブランドを立ち上げたのです。

 大理石や花こう岩など、石の種類と表面の仕上げによって何種類にも加工されたパレットから選ぶことができて、しかも施工屋さんが簡単に壁に取り付けられるのが特徴のひとつ。パネルのように並べて絵のように飾ったり、掛け時計の背景として貼ったりと、「暮らしを彩る石」をテーマに、様々な石の使い方を提案しています。何億年もかけてできている、石という自然物が持っている存在感が、部屋に新しい空気を運んでくれそうです。

石を壁に飾る、という発想

 7月7日から18日まで、そのお披露目展示会が「東京ミッドタウン」のライフスタイルショップ「タイム&スタイル」で行われました。ショップの入り口にあるギャラリースペースで、家具と組み合わせた展示を行ったのです。

 石ということから、「木に比べて重苦しそう」とか「冷たい感じがしそう」と想像していたのですが、生活空間を彩る風景が印象的でした。ローチェストの上に配するパターンと、ベッドの背景に配するパターンの2つが展示されました。

 ローチェストの上部の壁に、絵画のように配された「ストーンパレット」は、石をタイルのように並べ、縁の部分を木材で囲ったもの。「カパオボニートレッド」という赤とオレンジ系の色が混ざっている石と、「グリーンマーブル」という緑色の大理石の2パターンが掛けられていました。

 真鍮(しんちゅう)の脚が繊細な印象を与えるローチェストと、植物の造形美を究めた盆栽、「ストーンパレット」の組み合わせがひとつのハーモニーを奏で、それぞれを引き立てているように感じました。好きなアートを額装して飾るのもいいですが、さりげないながらも独自の主張がある「ストーンパレット」を飾ると、普段の暮らしが豊かになりそうです。

 もうひとつは、ベッドのヘッドボードの背面に「ストーンパレット」を配したもの。それも、床から壁いっぱいに貼るのではなく、ヘッドボードを囲むくらいの大きさに貼ってあるのです。海岸に打ち寄せる波のようなしま模様であることから「浪花白」と名づけられた石は、凹凸を付けた「スクラブ」という仕上げ加工によって、豊かな表情が息づいています。こういった石の使い方は見たことがなかったのですが、床から浮いた位置に貼っているせいか、重苦しさがないのです。手を触れてみると、石の触感が手に心地よいと感じました。

知りたいのは、「モノを使うことによる、豊かさ」

 訪れたお客さんたちからは、「石をインテリアに取り入れるとは発想したこともなかったが魅力的」「石という素材の奥深さを知ることができて良かった」など、さまざまなコメントがありました。

 私が感じたのは、「『ストーンパレット』単体で見せられたら、この良さが伝わってこなかった」ということ。家具や盆栽、照明などと組み合わせてあるから、暮らしに取り入れた時の良さに実感がわくのです。

 メーカーの人はモノ作りに心血を注いでいるだけに、ともすると「いいものなんだからわかってくれるだろう」と、単体で見せてしまいがち。でも、使い手である消費者は、モノをそこまで知っているわけじゃないし、モノそのものを欲しいというより、モノを使うことによる豊かさを知りたいのです。だから、暮らしにその商品が入ってくることで、どんなシーンが生まれ、どんな気分がもたらされるのかといったところが大事。今回の展示はそこがよくできていて、石が持っている上質さや、自然物ならではの温かみが伝わってきました。

 「パレットに使う石の種類や加工、組み合わせ方など、これからさらに進化していかなければならないのですが、訪れてくださった方から、多くの反響をいただいて良かった」と、関ヶ原石材の取締役社長を務める小林亮太さん。一緒にこの展示会を企画・実施した「タイム&スタイル」の代表取締役社長を務める吉田龍太郎さんは「石というテーマを得たことで、石、木、金属といった素材を組み合わせた、新しい取り組みが始まると手応えを感じました」。

 最近はコラボレーションばやりですが、表層的に名前だけ貸し借りして、新商品として打ち出しているような印象のものが多いことが気になっていました。でも、この展示会は、そういったコラボレーションではなく、石をライフスタイルに取り入れることをテーマに、両社ががっぷり組んで一緒に作り上げたものであることが、空間全体から伝わってきました。これからの展開が楽しみです。

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

写真

伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。 日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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