ワインとごはんの方程式

<21>ノルマンディーの定番、テラスでムール貝&シードル

  • 杉山明日香 料理 井浦雅文 写真 興村憲彦
  • 2017年8月3日

ムール貝のエスニックスープ仕立て。レシピは記事の最後に

  • ムール貝のエスニックスープ仕立て。レシピは記事の最後に

  • ノルマンディーではムール貝といえばこのシードル

  • Cidre Bouche Brut de Normandie / Christian Drouin(シードル・ブーシェ・ブリュット・ド・ノルマンディー / クリスチャン・ドルーアン)

  • 色みも味も、レモングラス風味のラー油がきいています

  • 貝のスープは鶏のだしとあわせると、味にさらなる深みが

  • ムール貝は殻から外しておき、改めて盛りつけます

  • スープを注いだら、レモンの皮とパクチーをのせて完成

 8月。夏バテが忍び寄る前に、貝とワインで元気をつけましょう。今回はフランス・ノルマンディー地方のムール貝に、シードルを合わせるという、現地では超定番の組み合わせです。貝とシードル? と思われるかもしれませんが、この黄金マリアージュ、かなり元気が出ます!

    ◇

明日香 いよいよ8月、夏本番ですね。さて今回のテーマは夏の貝です。

 フランス北部のノルマンディー地方にいくと、よくムール貝とシードルを合わせているのだけど、それがすっごくおいしくて。今日はノルマンディー風マリアージュを試してみたいなと思っています。

リカ ノルマンディーってどの辺りでしたっけ? あの「ノルマンディー上陸作戦」があったところですよね?

明日香 そう、ちょうどイギリスとヨーロッパ大陸を隔てている、イギリス海峡に面した地方です。フランスの中でも避暑地として知られていて、夏になるとみなさんテラスでシードルを飲みながら、ムール貝を食べています。

リカ うわあ、いいなあ。

明日香 ちなみに、フランスではワインだけでなく食料品にも原産地呼称制度があるんだけど、海産物で最初にA.O.C.に認定されたのがモン・サン・ミッシェルのムール貝。聞いたことある?

リカ あります、あります! 

食事中は軽いシードル、食後にゆっくりカルバドスを

明日香 モン・サン・ミッシェル湾で養殖されたものだけが、モン・サン・ミッシェル産のムール貝を名乗れるのですが、身が小粒でうまみがぎゅっと詰まっていてとてもおいしく、最高品質と評されています。

リカ へえ……それにシードルを合わせるんですか! なんだかちょっと意外な感じ……。貝っていえばミネラル豊富なので、ミネラル系の白を合わせるのかと思いました。

明日香 それも勿論(もちろん)おいしいんだけど、やっぱり地のもので合わせるのもいいんですよね。ノルマンディー地方はリンゴで造られた微発泡酒のシードルと、シードルを蒸留したブランデー、カルヴァドスの名産地です。シードルはアルコール度数も4~5%と低めなので、食事中に軽いシードルを楽しみ、食後にゆっくりカルヴァドスを味わうというのが最高なんです。

リカ ううん、それは確かにおいしそう。4~5%なら、ビールのような感じですね。

明日香 そう。ちなみに、ノルマンディー地方の西隣にあるブルターニュ地方もシードルで有名です。魚介類だけじゃなく、バターといった乳製品やガレットもよく知られていて、それらと合わせるのも定番です。

リカ たしかに東京のガレット専門店にいくと、シードルがよく置いてありますね!

明日香 シードルとガレットの組み合わせもとってもおいしいけれど、やっぱり夏は旬のムール貝にシードルを合わせたくなります。ムール貝といっても、いろんな味付けがあって、同じ地方のバターをたくさん使ったクリーム系の味付けだったり、シンプルに白ワインとニンニク、トマト、ハーブで味付けしてあるものだったり……。そして忘れちゃいけないのが、フライドポテト!

リカ ですよねえ……!

明日香 現地のレストランに行くと、一人前がバケツいっぱいくらいで、カップルなんか見ていると、「それシェアするでしょ?」と思うくらいの量をそれぞれ一人で食べています。スープが必ず余るので、それにフライドポテトを浸して、スープの味を楽しむのがまたおいしいんですよ。

シードル用のリンゴは、40種類以上!

リカ たまりませんねえ。ちなみに、シードルって普通に食べるリンゴと同じものを使っているんですか?

明日香 それが、生食用のリンゴでなく、シードル用のリンゴがあるんです。ワインの場合、ブドウは単一品種もしくは、混醸して造りますが、シードルの場合は数十種類のリンゴを混ぜて造っているんですよ。だいたい40種類以上は使います。

リカ ええ?! 40種類も!

明日香 そうなの! 法律では、それに数種のナシを加えることも認められています。味わいとして、酸味が特徴のリンゴ、苦みが特徴のリンゴ、甘みが特徴のリンゴなどいろいろあり、造り手さんが好みの割合で造ります。だから、味も造り手さんによってかなり違います。そして……今日持ってきたのがこちら、「Cidre Bouche Brut de Normandie / Christian Drouin(シードル・ブーシェ・ブリュット・ド・ノルマンディー / クリスチャン・ドルーアン)」です。私が大好きなシードルです。さあ、さっそく飲んでみて!(シードルを注ぐ)

リカ うわあ、色がかなりオレンジ色っぽい! シードルってこんな色でしたっけ?

明日香 これは、普通よりちょっと濃いめですね。(クンクンクン)ん~、いい感じ。リンゴのほのかな香りもしますね。

リカ たしかに。(ゴクッ……)わ、これはおいしいっ。シードルってすごく甘いイメージがありましたが、かなりすっきりしていますね。酸味が強いリンゴを使っているんですか?

明日香 そうね。辛口に仕上げているので、酸味がきれいに出ていて、最後に、口の中にリンゴの風味が心地よく広がり、すっと消えていきます。

リカ 余韻がブドウじゃなくて、リンゴっていうのがまた面白いですよね。甘すぎるともったりしますが、これは飽きずにずっと飲める感じです。

明日香 シードルにも辛口、甘口などいろいろあるので、辛口を選べば、酸味がしっかりしたものを飲めますよ。

リカ これには「BRUT」という表記がありますね。

明日香 そう、BRUTを選べば間違いないです。さーて、乾杯したところで、お料理がそろそろできたみたいです!

仕上げに、レモングラス風味のラー油が

(料理が出てくる)

リカ うわあ……またまた美しい一品が。いい香り!

明日香 今回のムール貝は、トマトやレモングラスで味付けしてあり、仕上げにパクチーと、料理人の井浦さんお手製のレモングラス風味のラー油がかけてあります。

リカ ええ?! レモングラス風味のラー油? (パクッ……)わ、おいしい! ピリ辛風味があとをひきます。

明日香 さわやかな夏の味ですよね。このパクチーやレモングラスの清涼感が、また、シードルに合うんですよね。スープには、ムール貝だけでなく、鶏のだしも入っています。貝のだしだけでももちろんおいしいんですが、そこに鶏のスープが入ることで、味がふくよかになるんです。

リカ 手が込んでいますねえ……だからこそ、この味なんですね。

明日香 シードルってあんまりお料理に合わせるイメージがなかったかもしれませんが、実は合うんです。

リカ 個性を持ったもの同士のマリアージュですね。ピリ辛のムール貝にほんのり甘いリンゴの味……。辛いものに甘いものをぶつける法則ですね。トマトの酸味とリンゴの酸味も合っている気がします。

明日香 その通り! 本当にバランスのいい組み合わせです。微発泡なので、泡が辛みをすっとやわらげてくれます。オレンジ色同士で、色味自体も合っているでしょ?

リカ たしかに。テンションのあがる夏の一品! ムール貝だと白ワインというイメージでしたが、シードルにもこんなに合うなんて。

明日香 そう、しかも日本でも気軽にできる組み合わせです。フランス人は本当にシードル大好きで、特に休日の昼間なんかはみなさん本当に気軽に飲んでいます。

リカ なーんて、すばらシードル!

*“清涼感と甘み”の方程式
 ムール貝のエスニックスープ仕立て(ピリ辛+清涼感)
=シードル(リンゴの甘み+微発泡)
※ムール貝のオレンジ+シードルのオレンジという、色つながりの法則も

    ◇

■ムール貝のエスニックスープ仕立て
[材料](2~3人分)
<A>
・ムール貝・・・500g
・ニンニク・・・2片
・日本酒・・・360ml(2合)
・昆布・・・少々

<B>
・鶏ミンチ・・・200g
・長ネギ(青い部分)・・・2本分くらい
・水・・・600g

・トマト
・レモン
・レモングラス
・ラー油
・パクチー
・塩       それぞれお好みで

[作り方]
1)ムール貝は3%の塩水で砂抜きし、その後水で塩抜きする。

2)Aを鍋に入れて火にかけ、貝が開いてアルコールが飛んだら火を止める。

3)Bを鍋に入れて加熱し、沸騰したら灰汁(あく)を取り、ふつふつの火加減で20分ほど煮出してこす。

4)2のムール貝のスープと3の鶏のスープを3:2の割合で合わせ、レモングラスと一緒に温め、塩で味を調整し、最後に刻んだトマトとレモン汁、ラー油を入れる。

5)器に盛り、レモンの皮をおろし金に当て、削ったものをふりかけ、パクチーをのせて完成。
<お料理協力 西麻布 みかづき

■本日のワイン

Cidre Bouche Brut de Normandie / Christian Drouin(シードル・ブーシェ・ブリュット・ド・ノルマンディー / クリスチャン・ドルーアン)
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(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

杉山明日香(すぎやま・あすか)理論物理学博士・ソムリエ

写真

東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L'ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
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■撮影協力:ゴブリン

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