東京ではたらく

<7>高瀬綾さん(37歳)/クラブ オーナーママ

  • 文 小林百合子 写真 野川かさね
  • 2017年8月4日

  

職業:クラブ オーナーママ
勤務地:銀座のクラブ〈綾瀬〉
勤続:4ヶ月(クラブ業は13年)
勤務時間:8時~翌1時
休日:土日祝
この仕事の面白いところ:お客さんに楽しい時間を過ごしてもらえる
この仕事の大変なところ:お酒をたくさん飲まなくちゃいけない(笑)

    ◇

 今年の4月に銀座にクラブをオープンしまして、オーナーママをしております。

 はじめて銀座の夜の世界を体験したのは24歳。当時はアパレル関係の仕事をしていたのですが、お世話になっていたおねえさんに「夜の部活行く?」と誘われて(笑)。それが銀座のクラブでした。

 そこで「働いてみない?」と声をかけられて、その日からお店に入ることに。最初はお客さんを前にしても全然お話しできないですし、お酒も作れない。そもそもお酒が飲めなかったので、水割りを少し飲んだだけで倒れてました。

 普通の飲食店のように研修なんていうものはありませんから、接客にまつわるお作法も見よう見真似。最初の頃はお店の人はおろか、お客さんにもたくさん叱られました。

 そもそもこの世界に入った動機は「お金」でした。東京の北新宿で生まれ育ったのですが、子どもの頃から家が裕福ではなく、シングルマザーの母と弟の3人で暮らしていました。

銀座七丁目にある〈綾瀬〉。24歳で銀座デビューしてから銀座一筋。37歳でオーナーママになるのは銀座では異例の早さ

 物心ついたときから母とはそりが合わず、高校2年の頃に家を飛び出し、家出先から高校に通う生活。卒業後は飲食店やアパレル関係の仕事をしていました。

 でも結局どんな仕事でも上が見えてるというか…。どんなに頑張ってもお給料は知れているなと感じていて。そんなときにたまたま銀座のクラブに誘っていただいて、華やかな世界への憧れもどこかにありましたし、迷わず飛び込んだというわけです。

 「お金」が動機というのは決して悪いことではないと思いますが、強い信念があってこの世界に入ったわけではなかったので、やっぱりどこかで仕事をナメてかかっていたんだと思います。

 平気で遅刻したり、お店からのメールを無視したり、アフター(閉店後にお客様と食事にいくこと)をダブルブッキングしたり。そりゃあ叱られて当然です。

着付けとヘアメイクは銀座の美容室で。着物はすべて自前で、季節に合わせて100着ほど持っているそう。どれだけ疲れていても身だしなみは常に完璧にしておくのが夜の世界の鉄則

 入店後しばらくは下積み期間ですから、いくら接客をしても売上金はもらえません(固定給のみ)。銀座のクラブには「永久担当制」という暗黙のルールがあって、一度接客したお客様は、ずっとひとりの女性が担当します。つまり、その店に通う限り、別の女性が担当することはできないんです。

 売上金がもらえるのはお客様を担当した女性だけですから、担当のお客様を持てない新人には売上金はナシ。売上金をもらうには自力で担当客を増やすしかありません。

 営業が終わるのが深夜1時ですから、その後、お客さんたちと食事に行ったり、飲みに行ったりして、そのツテを辿って新規のお客さんを探すしかない。じっとしていても何も始まりませんから、とにかく腹をくくって、「やるしかない!」という感じでしたね。

 この仕事が面白いのは、頑張れば頑張るほど結果がついてくるというところ。実際、営業に力を入れ始めてからは指名してくださるお客さんも格段に増えて、入店後1年ほどで指名ナンバーワンにまで上り詰めました。

 その後、何軒かお店を移りましたが、30歳ごろまでは順風満帆。銀座でママをやらないかというお誘いを受けることもちらほらあって、ああ、私はこの世界で生きていくんだ、これしかない、と思うようになっていました。

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PROFILE

小林百合子(こばやし・ゆりこ)編集者

写真

1980年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、アラスカ大学フェアバンクス校で野生動物学を学ぶ。出版社勤務を経てフリーランスに。山岳・自然をテーマに雑誌や書籍の編集を手がける。2010年に女性向け登山雑誌『Hutte』(山と溪谷社)を立ち上げ、独自の視点で登山や自然の楽しみ方を提案した。著書に『山と山小屋』(野川かさねと共著、平凡社)、『山登りのいろはーたのしい登山のヒント集』『一生ものの、山道具』(ともにホシガラス山岳会著、パイ・インターナショナル)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

写真

1977年生まれ。神奈川県出身。雑誌、書籍で活動するかたわら、ライフワークとして山を撮り続ける写真家。著書に『山と写真』(実業之日本社)、『山と山小屋』(小林百合子と共著、平凡社)、『山登りのいろはーたのしい登山のヒント集』『一生ものの、山道具』(ともにホシガラス山岳会著、パイ・インターナショナル)など。

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