ほんやのほん

売れている料理本はなぜ、おいしそうなのか? 『料理書のデザイン』

  • 文・武富葉子
  • 2017年9月4日

撮影/猪俣博史

  • 『料理書のデザイン』 COOK COOP 鈴木めぐみ編 誠文堂新光社 3456円(税込み)

[PR]

 毎朝、書店には新刊書籍が大量に届く。もちろん日々、新しい料理の本もいくつも届く。正直、「よくぞこれほど多くの料理本が出版されるものだな」と驚いてしまうほどだ。とはいえ、その中で3年、5年、ましてや10年、20年残っていく本はほんの一握りだ。

 ロングセラーになっている本には、やはり納得できる理由がある。見ているだけでよだれが出てしまう「おいしそう!」と思わせる写真があり、何より自分にもつくれそうという気にさせる何かがあるのだ。

 何かってなんだろう? なぜ、おいしそうに見えるのか、どうしてわかりやすいのか。

 それに対するひとつの答えを出してくれているのが、今回取り上げた本『料理書のデザイン』だ。この本は、編者の鈴木めぐみさんが「長く愛され続けている本には、デザインの力が大きく作用しているのではないか?」と考え、ロングセラーの料理本100冊を中心に、そのデザイナー(アートディレクター)にインタビューをしてまとめたものだ。

 本のデザイナーの仕事は、ごく簡単に言ってしまえば、編集者から写真や原稿をもらって割り付けていくことだ。ただし、写真、文字の大きさや配置、字体(フォント)選びや組み合わせ、色づかい、紙質など、そこには実に多くの要素が存在する。
 しかも、そもそもその前に、本の内容やコンセプトを著者や編集者と共有し、ビジュアルイメージを決めないと、そうした細かい作業はスタートできない。どうやったら伝えたいことをいちばん効果的に伝えられるか。デザイナーとともに、著者、カメラマン、スタイリスト、編集者というチーム全体で伝えたいことを研ぎ澄ましていく。

 インタビューを読んでいると、「なぜそのデザインなのか」という大きなところから、「なぜその字体を選んだのか」というディテールひとつひとつにいたるまで、すべて理由があり、それを通して伝えたいことがちゃんとあることがよくわかる。
 あるデザイナーは、著者の料理をつくる現場そのものを再現しようとし、別のデザイナーは、著者の性格までも表現したいと話す。また、写真や文字にとどまらず、ページを繰る紙の感触や風合いから著者の世界観が伝わる、と語る人もいる。
 とはいえ、多くのデザイナーが共通して、「結局いちばん大切なのは、おいしそうに見えること」と言っているのは、当たり前といえば当たり前だが、やはり大前提なのだなあとあらためて思う。中でも多くの料理本を手がける人気デザイナーの有山達也氏の言葉が印象的だ。

 「読みやすいというのは大事だと思うけれど、『おいしそう』とか『作ってみたい』という動機で料理本は買われるものです。そういうところをきちんとしていかないと。表層的なデザインだとバレちゃうっていうか、本として長く続いていかない。読者の目も厳しいですよ」

 デザイナーが込めた思いは表立って伝わらないほうが、本としては成功なのだろう。だが、たまにはそんなことも考えながら料理本を眺めてみるのも、おもしろいかも知れない。

ほんやのほん

*湘南 蔦屋書店では、現在、&w「ほんやのほん」フェアを開催中です!
 湘南 蔦屋書店のコンシェルジュの皆さんからこれまでご紹介いただいた本が勢ぞろい。2号館入り口正面スペースで、一度にお手にとってご覧いただけます。紹介記事をまとめた小冊子も配布中です。くわしくはこちらまで。ぜひ、お出かけ下さい。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

武富葉子(たけとみ・ようこ)

写真

湘南 蔦屋書店 料理・暮らしコンシェルジュ。料理を中心に、暮らしの本や雑誌の編集に二十数年携わったのち、思うところあって売る側へ。現在は料理だけでなく、手芸の楽しさを広めるべく、書店の枠を超えて活動中。通勤電車での編み物が小さな楽しみ。
>>湘南T-SITE 湘南蔦屋書店ホームページはこちら

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!