ワインとごはんの方程式

<23>「うなぎの白焼き&白桃」の、罪な三角関係

  • 杉山明日香 料理 井浦雅文 写真 興村憲彦
  • 2017年9月14日

うなぎの白焼きと白桃のクロスティーニ。レシピは記事の最後に

  • うなぎの白焼きと白桃のクロスティーニ。レシピは記事の最後に

  • まずは香りと果実味が特徴のトロピカルなワイン、ニュージーランドのソーヴィニョン・ブランから

  • INSIGHT Sauvignon Blanc Single Vineyard MARLBOROUGH NEW ZEALAND 2016(インサイト ソーヴィニョン・ブラン シングルヴィンヤード マールボロ ニュージーランド)

  • 今度は桃の香りとうなぎの香ばしさが引き立つ、ピンク色の泡を

  • Sipp Mack Cremant d'Alsace Rose Brut(シップ・マック クレマン・ダルザス ロゼ ブリュット)

  • うなぎの白焼きと白桃の間を、2種類のワインに乗っていったりきたり……

  • 白桃と白焼きを交互に重ねて白バルサミコ酢をかけ、最後に塩とハーブで味の輪郭をつけるのがポイント

明日香 今年の8月は本当に雨ばかりでしたね。

リカ 本当に……8月に梅雨かと思いました。

明日香 というわけで、9月は残りわずかな夏を楽しむために、元気の出るうなぎを食べたいなと思っています!

リカ わぉ、うなぎ!

明日香 うなぎっていうと“土用の丑(うし)の日”というイメージで、夏の始まる7月に「精をつけるために食べる」と思われがちですが、実は旬は秋以降なの。つまり、これからがおいしい時期なんです

リカ 脂がのってくる、ということですよね!

明日香 そう、6月、7月のうなぎは実はまだ身が細すぎると言われています。なので、おいしくなるこの時期に、脂ののったうなぎを食べて元気を出しましょう! ってわけ。しかも、まだまだ暑いから冷たい泡や白ワインを合わせて……

リカ え、泡と白ワイン?! うなぎに?

明日香 そうなの。日本でうなぎっていうと、かば焼きや白焼きがメインだから、まず、そもそもワインに合うの?! って思うわよね。かば焼きだとご飯もあるし、お昼に食べることも多いので、お酒とのマリアージュがあまり考えられていない食材の一つかなと思います。

ロワール地方とボルドー地方が、フランスの2大うなぎスポット

リカ 合わせるといったら、日本酒くらいですよね。

明日香 そう。でも、たとえば、フランスだと西部のロワール地方はうなぎが有名で、日本の3倍くらい大きいうなぎもいます。この間、パリの私のお店“ENYAA”で見たのは、これくらいの大きさのうなぎでした。(両腕を広げる)

リカ え、それって1メートルくらいあるじゃないですか。大蛇!

明日香 そう、めちゃくちゃ大きくて太さもあって。脂もしっかりのっているから、プリプリなんです。

リカ フランスにもうなぎを食べる文化があるということは……。

明日香 ワインと合わせる文化もあるということ! ロワール河のあるロワール地方と、いくつも大きな河が流れているボルドー地方がフランスの2大うなぎスポットです。うなぎはお魚だけど、脂がのっていて味がしっかりしているので、フランスでは基本的に赤ワイン煮にして食べます。

リカ となると、今日は赤ワイン煮で赤ワインのマリアージュ……?

明日香 ところがどっこい! 今日用意したのはまずこちら、「INSIGHT Sauvignon Blanc Single Vineyard MARLBOROUGH NEW ZEALAND 2016(インサイト ソーヴィニョン・ブラン シングルヴィンヤード マールボロ ニュージーランド)」です。

リカ え、ソーヴィニョン・ブラン? しかもニュージーランド?

明日香 ふふ。ニュージーランドのソーヴィニョン・ブランといえば、アロマティックで果実味が強いことが特徴です。とにかく香りがすごくいいんですよね。はい、まずはかいでみて。(グラスを渡す)

リカ (クンクンクン)うわあ、うっとり。すごいパワフルな香りですね。

明日香 香りのボリュームが大きいのが特徴なんです。ハーブ、グレープフルーツ、白桃、洋梨……トロピカルな香りがつまっています。飲んでみると、豊かな果実味の中に、きれいですっきりとした酸やミネラルも感じられます。

香りだけで幸せを感じるマリアージュ?

リカ でも、こんなトロピカルなワインにうなぎを……? うーん……。

明日香 ふふ、どんなお料理が出てくるかお楽しみに。

(さっそく料理が出てくる)

リカ あれ? うわあ、なんですかこれ! うなぎに桃?! すごくいい香り。テーブルの上で、ワインの香りと料理の香りが混ざり合ってたまりません……。香りだけで幸せを感じるマリアージュ……。これ、うなぎは焼いてあるだけですか?

明日香 そう、井浦さんはもちろん、炭火焼にしてくれていますが、自宅だと白焼きを買ってきたら5分でできちゃいますよ。魚焼き器で皮をパリパリに焼いたうなぎの白焼きと桃を一口大に切り、塩と白バルサミコ酢で味付けし、ディルとバジルを加えて完成です。(詳しいレシピは文末に)

リカ すごい、それなら私も作れそう。

明日香 そうでしょ! じゃあ、さっそくいただきましょう。

リカ いただきまーす。(パクッ)んん……。(しばらく無言)これはちょっと……身体がびっくりしています。“初体験のめくるめく官能”に!!

明日香 “初めての出会い”よね!(笑) さ、そこでニュージーのソーヴィニョン・ブランを! 白バルサミコ酢の酸味とワインの柑橘(かんきつ)系の酸味がものすごく合うはず。

リカ (ゴクッ……)おいしい……。なんだろう、このパリパリのうなぎと、やわらかい桃の食感のコントラスト……。たまりません。

明日香 そうそう、口に入れるとうなぎのうまみと同時に、桃の果汁がじゅわっと広がり、そこにハーブの香りがふわっと鼻から抜けていって……。

リカ しかもソーヴィニョン・ブランがさらに口の中を盛り上げますよね。

ニュージーランドのソーヴィニョン・ブランが合う理由

明日香 ニュージーランドのワインといえば、ソーヴィニョン・ブランが代表品種で、栽培面積の7割を占めています。もともとはフランスのロワールが原産なんですが、今では世界中で作られていて、中でもニュージーランドのものは一番“香り高い”と言われています。ソーヴィニョン・ブランの原産地、ロワールではもっぱらうなぎは赤ワイン煮ですが、それが海を飛び越えて、“ニュージーランドで育ったソーヴィニョン・ブラン”が日本で“うなぎの白焼き”に出会った、という“国際結婚”です。

リカ でも、なんでロワールのソーヴィニョン・ブランではなく、ニュージーランドのものを選んだんですか?

明日香 やっぱり香りの華やかさですね。ロワールのものだとエレガントすぎて、ワインの香りが白焼きの香ばしさに負けちゃうかな、と。ニュージーランド産くらいアロマティックに仕上がっている方が、今回の料理に合うと思ったんです。それに桃が使われているので、まずは白桃の香りがきれいに入っているワインをベースに考えました。そこに、お魚のミネラルとワインのミネラル、ディルやバジルの青さとワインの青さ、そんなものも総合的に考えて、ニュージーランドを選びました。

リカ なるほど……やっぱりちゃんと理由があるんですね。それにしても、うなぎと桃がこんなに合うとは。どこからこんな発想が?

(料理人の井浦さん登場)

井浦 直感みたいなものだったんですが……。うなぎの白焼きを果実酒であるワインに引き寄せるには、うなぎ単体よりもフルーツと合わせるのがいいと思ったんです。そこで、季節の白桃と白焼き、そして白バルサミコ酢という白いラインを作り、2種類のハーブを使って輪郭をつけました。この構成や要素はワインに共通するものなので、ワインにピッタリ合うぞ! という確信がありました。また、桃やバルサミコ酢と合わせることで、脂のあるウナギを軽やかに食べることもできます。

うなぎの香ばしさやうまみに負けない、クレマン・ダルザス

明日香 さて、じゃあリカちゃん、今度はこれ、「Sipp Mack Cremant d'Alsace Rose Brut(シップ・マック クレマン・ダルザス ロゼ ブリュット)」を飲んでみて! 桃の香りとうなぎの香ばしさが泡と一緒に鼻から抜けて、スティルワインとはまた違うおいしさがあるから。

リカ (ゴクッ……)あれ? なんだか桃の果実味がより引き立つような。まったく違う料理みたい。

明日香 でしょう? ハーブの清涼感や青さはソーヴィニョン・ブランに合わせた方が際立つんだけど、ピノ・ノワール100%で造ったクレマンだと、桃の香りがより際立つんです。こうやって両方を飲み比べると面白いでしょ。両方とも違和感なく行き来できる味わいです。

リカ マリアージュの妙ですね。味わい方が違うけど、どっちも甲乙つけがたくおいしい!

明日香 クレマン・ダルザスについては、以前こちらで詳しく話したけれど、黒ブドウであるピノ・ノワール100%のロゼ・スパークリングは、骨格がしっかりしていて、うなぎの香ばしさやうまみに味わいが負けないんです。このクレマン・ロゼは、果実味もあり、白桃の香りも入っています。これがシャルドネ100%のスパークリングだと、正直ちょっとうなぎの方が強くなってしまいます。あとは、桃とロゼの“色合わせ”の法則も有効ですね。

リカ やっぱり色合わせはある程度成功するんですね。

明日香 そう。赤ワイン煮には赤ワインだし、スモークサーモンにはロゼが王道のようにね。

リカ ああ、罪作りな“うなぎの白焼き&白桃”ちゃん…… ソーヴィニョン・ブランと一緒になっても幸せ、ロゼ・スパークリングと一緒になっても幸せ。この三角関係は、このまま“ポリアモリー(複数恋愛)”でいってもらうのがいいかしら。

*“香ばしさとミネラルの三角関係”方程式
1)うなぎ(香ばしさ+ミネラル)+白桃(果実味)+バジルとディル(青み)+白バルサミコ酢(酸味)+塩=ソーヴィニョン・ブラン(パワフルな香り+果実味+ほのかな青さ+酸味)

2)うなぎ(香ばしさ+ミネラル)+白桃(果実味)+バジルとディル(青み)+白バルサミコ酢(酸味)+塩=クレマン・ダルザス(ピノ・ノワールの果実味と香り+ミネラル+酸味)

    ◇

■うなぎの白焼きと白桃のクロスティーニ(3~4人分)
[材料]
・うなぎの白焼き・・・1尾
・白桃・・・適量(うなぎと同じ大きさにカットするので、うなぎに見合う量)
・バジル・・・適量
・ディル・・・適量
・白バルサミコ酢・・・適量
・塩(フルール・ド・セル)・・・適量

[作り方]
1)うなぎの白焼きを温める。(魚焼きグリル等で皮をパリッとさせる)
2)白桃は皮をむいて、適当な大きさに切る。
3)うなぎも適当な大きさにカットし、白桃とバジルとを交互に盛りつけ、白バルサミコ酢をかけ、塩をしてディルをあしらい完成。
<お料理協力 西麻布 みかづき

■本日のワイン
INSIGHT Sauvignon Blanc Single Vineyard MARLBOROUGH NEW ZEALAND 2016(インサイト ソーヴィニョン・ブラン シングルヴィンヤード マールボロ ニュージーランド)

Sipp Mack Cremant d'Alsace Rose Brut(シップ・マック クレマン・ダルザス ロゼ ブリュット)
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(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

杉山明日香(すぎやま・あすか)理論物理学博士・ソムリエ

写真

東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L'ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
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■撮影協力:ゴブリン

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