上間常正 @モード

イッセイミヤケの香水 「水」の新たなイメージ

  • 上間常正
  • 2017年9月22日
  • 「ロー マジュール ドゥイッセイ」©2017 BEAUTE PRESTIGE INTERNATIONAL Photo: Tohru Yuasa

  • 「ロー マジュール ドゥイッセイ」 ©2017 BEAUTE PRESTIGE INTERNATIONAL

  • これまでの「ロードゥイッセイ」の数々©2017 BEAUTE PRESTIGE INTERNATIONAL Photo: Tohru Yuasa

  • 「ロー マジュール ドゥイッセイ」の発表会©2017 BEAUTE PRESTIGE INTERNATIONAL  Photo: Tohru Yuasa

[PR]

 イッセイミヤケの香水「ロードゥイッセイ」がこの秋、新しいバージョンを発表した。ローはフランス語で「水」という意味だが、その名の通り水を思わせる透明感のあるさわやかな香りが特徴で、特に夏場などには好んでつける人も少なくない。(実は筆者もその一人)

 基本的には女性向けなのだが、その特徴的な香りが男性からほのかに漂ってくることも多かった。この香水が登場したのは1992年で、もう25年も前のこと。当時のセクシーで濃いめの香りが主流だった中ではとても新鮮に感じられた。そしてその香りの基調は今までもずっと守り続けられてきた。

 今回の「ロー マジュール ドゥイッセイ」は、男性向けとされている。94年に「ロードゥイッセイ プールオム」が登場しているので、男性向けは初めてというわけではない。しかし25年目に「ロードゥイッセイ」が水のイメージを新たに男性向けのバージョンで打ち出したことには、一つの香水を超えたアップトゥデイトな意味があるような気もする。

 水のイメージについて、「ロードゥイッセイ」は「水はすべての始まりであり、不可欠な存在であり、基本のエレメント」と説明している。94年のプールオムでは、急流、そして滝からインスパイアされたという。それに対して、今回の「ロー マジュール」は「海の力強さ」から着想を得たとのこと。

 つけて最初に香るのは、海の波に反射する陽光をイメージさせるベルガモットとグレープフルーツの香り。次に香るのはミネラルをたっぷり含んだ潮の波しぶきの香り、そして最後は波に現れて滑らかになった流木のような肉感的だが静かなイメージの香りだという。

 水のイメージが新バージョンでは、より豊かに広がり、エネルギッシュになったとも言えそうだ。水のこうしたイメージは古くからあって、たとえば最古の哲学者といわれるタレスは、万物の根源を水と考えた。それは水素と酸素でできている単なる物質としての水ではなくて、生命を含めた世界全体を動かしている自然の原理を内に持ったもの、との見方だった。

 こうした考え方は、ヨーロッパでは素朴で古代的とみなされるようになり、自然は人間の理性や論理が立ち向かって利用する対象になった。しかし征服したり利用したりするための資源としての自然は、決して無尽蔵なわけではない。膨大な水量をたたえる海も、今では想像を超えるような量のごみや化学物質などによる汚染がいつの間にか急速に広がっている。

 とはいえ、私たちは海といえば、慈愛や力強さ、安らぎや冒険心といった対立するような面を同時にもつ豊かなイメージをなくしてはいない。宇宙から撮影された地球は、海によって美しいブルーに輝いている。その海、水を今もう一度注目してみるのは大きな意味があるのではないだろうか。

 今回の「ロー マジュール」で少し気になるのは、海の香りが「力強く静謐(せいひつ)な男性性をひきだす」というような表現をしていることだ。海、水は確かに力強く静謐なのだが、それは決して男性に限ったことではない。生物学的な性には関係なく、生き物としての命がもつ本質的なあり方なのではないか。

 「ロードゥイッセイ」の出発点も、そうした発想があるのだと思う。だからこそ一貫して「水」のイメージをぶれずに守り続けてきたのだし、この香水は中性的なイメージがあって、男女にあまりこだわらずに好まれてきた。男性性をうたったのは多分、水が表す生命の力強さをあえてなのか無意識なのか、一般的な男性のイメージに託してしまったのだろう。

 その意味では、女性は今よりももっと力強くなってもいいのだし、もともと性別に関係なく力強いのだ。「ロー マジュール ドゥイッセイ」の発売は10月4日から。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

上間常正(うえま・つねまさ)

写真

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!