朝日新聞ファッションニュース

映画の中 装いが語る今

  • 2017年9月22日

 この秋から冬にかけて、登場人物のファッションに注目したい映画がいくつか封切りされる。高級靴をめぐるミュージカルや豪華なドレスが見もののオペラ、パンク・スタイル満載の恋物語。感覚や表現の仕方はそれぞれ違っても、どの映画からもファッションがほのめかす今の時代との実は切実で深い関係がうかがえる。

「ジュリーと恋と靴工場」©2016 LOIN DERRIÈRE L'OURAL-FRANCE 3CINÉMA-RHÔNE-ALPES CINÉMA

ジェンダーレス託す一足

 「ジュリーと恋と靴工場」(ポール・カロリ、コスティア・テスチュ監督)は、フランスの高級ブランド靴の工場が舞台。スニーカー店の販売員をクビになった主人公ジュリーがようやく得た職場だが、中国生産への移行で工場は閉鎖寸前に。ジュリーは恋の傍ら、靴職人の女性たちと共にリストラを進める経営陣と闘うというストーリーだ。

 映画は軽妙なミュージカル仕立てで、プロのダンサーによる踊りがなんともチャーミング。なにより全編に靴への愛情があふれているのが特徴だ。1965年秋冬の子牛革のハイヒールへの賛辞、高級革を丁寧に形作る職人の手技のアップ……。

 工場のアーカイブから発掘した、赤いエナメルのひも締めフラットシューズ、その名も「戦う女」が物語の重要なカギを握る。彼女たちはその靴を勝手に復刻し、闘いの武器として世の女性たちを巻き込んでいく。たった一足の靴によって人々が自由に解放されていく様が小気味良い。

 赤い靴はこの秋冬のトレンドでもある。それがハイヒールではなく、ぺたんこのマニッシュなデザインであることが、ジェンダーレスの時代を象徴しているようにもみえる。23日からシネスイッチ銀座などのほか、全国で公開。

「ソフィア・コッポラの椿姫」©Yasuko Kageyama

ヴァレンティノ流、迫力のドレス

 「ソフィア・コッポラの椿姫」は、ファッションアイコンとしても知られるコッポラ監督が昨年、初演出したオペラの舞台を撮った映画。ヴァレンティノの創始者ガラヴァーニがデザインした、主人公の高級娼婦(しょうふ)ヴィオレッタの衣装が迫力満点だ。

 袖や裾にスパンコールがきらきら光る胸元の深いドレスや、ヒップの下が膨らんだ真っ赤なサテンのドレス、造花を詰めたパフスリーブのネグリジェ……。

 コーラスの女性歌手らの衣装は当時、ヴァレンティノを手掛けていたマリア・グラツィア・キウリとピエール・パオロ・ピッチョーリが担当している。

 卓抜したデザインと入念な職人技を集結したそれらの衣装からは、風前の灯火と言われながらもなんとか復興を試みる、現代のオートクチュール界の輝きも感じられる。

 オペラのフィナーレにはガラヴァーニ本人も登場している。10月6日から2週間、TOHOシネマズ日本橋で。ほか全国順次公開。

「パーティで女の子に話しかけるには」©COLONY FILMS LIMITED 2016

レトロで新鮮、ロンドン・パンク

 パンク・ファッションがいま再び人気だが、「パーティで女の子に話しかけるには」(ジョン・キャメロン・ミッチェル監督)は、1970年代のロンドン郊外の若きロッカーたちを描いている。衣装の担当はアカデミー衣装デザイン賞を何度も受賞していて、自身もロンドン・パンクに詳しいサンディ・パウエル。「出来るだけリアルにと心がけた」というだけあって、ゆるっとしたレトロな感覚が新鮮で、逆に現代的な気分も色濃く漂う。

 学校の制服を切り裂いたり、缶バッジをいくつもつけたり。若手人気女優エル・ファニングが着るポリ袋を裂いて編んだニットやスタッズつきのチョーカー。パンクの女王と言われるデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドに雇われていた設定のボス役は、ニコール・キッドマン。そのチュールやチェーンで彩った大人の華やかなパンク・スタイルも印象的だ。12月1日から、新宿ピカデリーなどで順次公開。(編集委員・高橋牧子)

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ(PR)

Pickup!