こだわり派の逸品

ゆっくりと雑貨を「体験」 銀座ロフト

  • 写真 石塚定人
  • 2017年10月5日

 ステーショナリーやデイリーユースの雑貨など、多彩な品ぞろえで知られる「ロフト」。今から30年前に1号店の「渋谷西武ロフト館」が誕生し、現在は全国に108の店舗を構える。この6月には既存の有楽町店を閉店し、新たに「銀座ロフト」をオープンさせた。

 ビルの3~6階という多層階からなる銀座ロフトの店内は、他店舗とは異なる雰囲気が漂う。例えば、売り場では、ゆっくりと店内を巡回できるように売り場の什器や動線のデザインなどにも意識的にこだわったり、各界のスペシャリストたちが「チームロフト」と称し、自ら商品の魅力をアピールしたり――。そうした、これまでのロフトにはなかったユニークな取り組みが次々と打ち出されている。

 「銀座ロフト」はどこへ向かおうとしているのか。館長の藤野秀敏さんにうかがった。(文・宮下 哲)

5階/「ペンシルバー」には、世界12カ国、20ブランド、300種類、5000本の鉛筆が集結し壁一面に並んでいる。香り付きのポルトガル鉛筆「ヴァルアコ」やロンドンの「アイアムエー」など、他で見られない珍しい鉛筆も数多くそろえている。鉛筆用のキャップ、鉛筆削り、スタンドなどもある

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本当の意味での「モノからコトへ」

――「有楽町ロフト」と「銀座ロフト」の違いは?

 もともと有楽町ロフトは、全国のロフトの中でも効率のいい店舗でした。駅近でワンフロア、さらに丸の内のオフィス街も近くだったので、忙しいビジネスパーソンなど若い世代に多く利用していただきました。それに比べ、銀座という場所は少し不便です。買い物や食事など、きちんとした目的をもってわざわざ訪れる大人の街なのだと思います。ですので、ここでしか買えないモノを目指して来る人たちのためにも、当然、銀座ロフトは品ぞろえを変えています。

――売り場の構成にもかなりこだわったようですね。

 売り場は、効率で言えば四角四面、つまり碁盤の目でつくるのがいちばんよいとされています。什器のデザインも直線でスクエアであれば、売り場として効率よく並べられます。いわゆるコンビニなどがその好例ですね。極端な話、コンビニを大型化すればいちばん効率的な売り場になります。それに対して、 「銀座ロフト」の売り場は、空間構成も什器の配列やデザイン、すべてを各階で変えているのが特徴的です。

 「銀座ロフト」は廣村正彰さんがトータルディレクションをし、空間デザインはスキーマ建築計画の長坂常さんが手がけてくれました。各フロアにオランダの建築事務所DUSアーキテクツが3Dプリンターで製作した什器を配備、フロアの奥のほうまで行きたくなるような空間構成になったと思います。「せっかく来たのだから、ちょっとゆっくり見ていこう」。そんな気分でいろんな体験をして、商品を買ってもいただけたらうれしいです。

――どんな「体験」ができるのでしょうか?

 4階のフロアにはコーヒーの売り場を設けています。ここでは期間限定で人気のコーヒーショップがポップアップストアを展開しています。オープン以来、猿田彦珈琲、バイシクルコーヒー、モトヤコーヒーが出店してくれました。銀座ロフトでは、“ウィズドリンク”をテーマに、コーヒーを飲みながら店内を見て回ることが可能です。これは私たちが今までやれてなかったスタイルなんです。もちろん飲食のテナントさんに入ってもらったことはありましたが、ロフトがオリジナルで飲食を出したのは今回が初めて。飲食営業の許可を取るために、私も試験を受けました(笑)。

――常に企画を考えるのもたいへんですね。

 そうですね。実際、スタッフみんなでアイデアを生み出すことは、楽しみでもあり、悩みでもあり、苦労でもあります。でもそれが、銀座ロフトに課せられたミッションですから。コンセプトをつくるときに、本当の意味での「モノからコトへ」ってなんだろうってすごく考えました。「体験」や「編集」といったキーワードももちろんそうですが、やっぱり重要なのは「リアル」なんじゃないかと思います。スペースを考えずにボールペンを100種類以上そろえるのは、ネットストアの強みです。でも、ネットでは試し書きはできませんよね。赤い色の微妙な違いまでは判別できない。効率だけを追いかけすぎて、体験という「コト」の部分を忘れてやしないかと思いました。

〈3階/ボディー&ビューティー〉フロア。最新・未発売のコスメが200種類以上も並ぶテスターバーから、オーガニックコスメまでそろい、様々なニーズに対応。一角には、鏡に映した自分の顔から、テスターをデジタル処理でシミュレーションするコーナーも

3階/メンズコスメのコーナーは、有楽町ロフトでも人気のスペースだったそう。銀座ロフトでも、さらに商品の充実度を図ったという。写真はイタリアで人気のデンタルケアブランド「MARVIS(マービス)」。シナモンやジンジャーなどがミントベースの爽快なフレーバーが人気

3階/ロフトオリジナルの化粧品「LOFCOS(ロフコス)」のコーナー。これまでも基礎化粧品やシャンプーなどには、ロフトのオリジナル商品はあったが、今回はオープンと当時にメイクアップ化粧品がデビュー。品質にこだわり、リーズナブルな価格に、がコンセプト

4階/〈ホームソリューション〉フロア。エスカレータ横にはコーヒー関連の売り場と期間限定のポップアップストアを配置。コーヒーを飲みながら、店内をゆっくり巡ることも可能だ

4階/日本初上陸を果たしたフランスのライフスタイルブランド「ラ・タント・イレーズ」。テントやパーカー、エコバッグなど、ポップでオシャレなフレンチスタイルのグッズが置かれている(17年9月時点)

各ジャンルのプロが商品をおすすめ

――「チームロフト」とは?

 外部のクリエイターや専門家のチームで、商品をセレクトしてもらったり、使い方を提案してもらったりしています。例えば、3階の化粧品雑貨のフロアでは、モデルの田中里奈さんが「コスメをギフトにしましょう」という提案してくれています。インスタなどSNSで、「私はこれが好きです」と言ってくれることで何千人に伝わりますし、私たちだけで「おすすめはこれですよ」って言っても、残念ですがあまり反応してもらえません。
 4階の生活雑貨のフロアですと、下北沢の人気レストラン「サーモン&トラウト」の森枝幹シェフがレシピを紹介しながら、「この料理にはこのキッチングッズが最適」などと紹介してくれています。

 こうやって今、世の中に求められている商品を、そのジャンルのプロがすすめてくれるので説得力が違うんですね。もし従来通り「おすすめ調理グッズ特集」とやっていたらたぶんお客さんにはスルーされていたと思います。

――今後の新たな展開は?

 銀座という場所柄、外国人のお客さま向けに、「フォーリン・カスタマー・サービスカウンター」を設置する予定です。今後は、免税サービスだけでなく、外国人向けのインフォメーションや、ショッピングアシストにも注力しようと思っています。百貨店業態などには「インフォメーションセンター」がありますが、我々のような雑貨店でやっているところはないので、これもひとつのチャレンジです。
 外国人のお客さまも、スマートフォンを見せながら「これ、ありますか」と尋ねられます。私たちも「うちにはないけど、ここだったらある」とか、「それと同じ機能なら他にもこれがありますよ」と丁寧にご案内できたら、きっと満足していただけるのではないかと思います。 

5階/〈ワーク&スタディ〉フロア。モレスキンのノートと、人気の「mt」のマスキングテープが、デザインコラボ。また、銀座ロフトではモレスキンのノートに名前を入れられる機械を常設しており、日本では現在この1台のみ

5階/ヴィンテージ文具のコーナーでは、文具王で知られる高畑正幸さんのコレクションを展示と一部販売もされている。昭和レトロなデザインが日本の若い世代だけでなく、最近は海外の観光客にも人気だという

5階/たとえば「フエキのでんぷんのり」「よいこのおどうぐばこ」「レーダー消しゴム」など、ロングセラーと言われる文具は、いずれもデザインの完成度が高い。そうした定番の商品を小さくしたのが「ちいさいず」だ。ふだん忘れかけていたロングセラーの魅力をあたらめて知ることができるショップでもある

6階/〈ネクストクリエーション・トラベル・モバイルツール〉フロア。国内外の人気アニメのセル画がずらり並んでいる。デジタル化が進み、セル画によるアナログ式のアニメ制作がなくなった今、コアなアニメファンの間ではコレクションアイテムとして、その価値は年々高まっている。とくに海外の観光客にも人気のスペースだ

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銀座ロフト
東京都中央区銀座2-4-6 銀座ベルビア館3階〜6階
営業時間:11時〜21時 無休
電話:03-3562-6210

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