ワインとごはんの方程式

<24>かば焼き北京ダック風と相性抜群、ラテン系の“テンプラ”

  • 杉山明日香 料理 井浦雅文 写真 興村憲彦
  • 2017年9月28日

うなぎのかば焼き 北京ダック風(レシピは記事の最後に)

  • うなぎのかば焼き 北京ダック風(レシピは記事の最後に)

  • 合わせるのは、スペインを代表する黒ブドウ、テンプラニーリョの赤ワイン

  • Otis Tarda TINTO RIOJA 2014(オティス・タルダ・ティント・リオハ)

  • キュウリもネギも入れるのが、おいしい食感のポイント

  • 皮に包むのもおいしいけれど、大葉に包むだけでもさっぱりしていておすすめです

  • 皮をぱりっとさせるのが、おいしくいただく秘けつ

  • 同じ「土っぽさ」を楽しむ川魚でも、アユとウナギでは、合うお相手が変わってくる。それがメルロなのかテンプラニーリョなのか……選び分けていくのがマリアージュのお楽しみ

 フランスやアメリカ、オーストラリア、そして日本まで、様々な国のワインとごはんの組み合わせを楽しんできたこの方程式シリーズ、締めくくりは、スペインを代表する黒ブドウ、テンプラニーリョから作られたリオハの赤ワインに、「うなぎのかば焼き 北京ダック風」を合わせます。合わないわけがない、というその結びつきの秘密は……?

     ◇

明日香 突然だけど、リカちゃんはたしかスペインに住んでいたんだっけ?

リカ はい、大学時代にバルセロナに留学していました。

明日香 よく考えたら、これまでスペインワインの話はしたことなかったわね。

リカ たしかに! カヴァはあるけど、スティルワインはないですね。

明日香 スペインにいたときは、どんなワインを飲んでた?

リカ うーん、たぶん赤ワインはスペインで多いテンプラニーリョ(tempranillo)ですかねえ。白はなんだろう? バスクの方に行くと、微発泡の白ワイン、チャコリをよく飲んでいました。

明日香 そう、やっぱりスペインといえば“テンプラニーリョ”。スペインを代表する品種で、黒ブドウの中では栽培面積も国内1位です。私が本格的にワインを飲み始めたのは、大学生になって東京に出てきた後だけれど、実は、当時一番飲んでいたのが“テンプラ”でした。最初はあまりなじみがなくて、テンプラニーリョと聞いても、「天ぷら」が頭に浮かんじゃったけど(笑)、やっぱりスペインワインは値段がお手軽でおいしかったんです。だから、親と一緒のときはいろいろなワインを飲んでいたけれど、自分で買って飲む“ワイン人生”は、テンプラから始まったんです。

リカ へえ! その話、初めて聞きました。当時からスペインワインはけっこう日本にも入ってきていたのですね。

明日香 そう、あの網をかぶった“マルケス・デ・リスカル”とか、ペスケラとか、いろいろありましたよ。毎日ひたすらテンプラを飲んでいましたね。「1日最低1本」とかルールを決めて(笑)。

リカ ええ、テンプラニーリョを1日1本!? さすが……。

明日香 若かったから、パワフルなスペインの赤ワインを1本飲んでも平気だったんです。今はさすがにきついけど……。でも、すべて網羅しないと気がすまない理系のオタク気質だから、日夜、体を張ってワインの研究にいそしんでいたの(笑)。

果実味もまろやかさも七変化する、テンプラニーリョ

リカ それにしても、テンプラニーリョを毎日ってすごい。なんとなく、テンプラは“重い”というイメージがあるので……。テンプラの特徴ってなんでしたっけ。

明日香 果実味がしっかり、タンニンもそこそこに入っていて、酸味がまろやか、というのが大きな特徴です。でも、実はテンプラニーリョって七変化するワインなんです。

リカ え? なんでですか?

明日香 生産者によって「同じ品種?」って思うくらい違うんですよ。大きいのは樽(たる)の使い方。基本的にパワフルなワインなので熟成させるのですが、フレンチオークを使うか、アメリカンオークを使うかで仕上がりが全然違います。ボルドーのカベルネ・ソーヴィニョンもそうですが、パワフルなワインは新樽で熟成させることによって樽の風味がついて味がまろやかになり、よりおいしく飲めるようになるんです。

リカ アメリカンオークだと甘くなる?

明日香 そう。そしてフレンチオークや他のヨーロッパの国の樽を使うとバニラ香が強く出ず、どちらかというと樽の香ばしさが前面に出ます。ちなみに今日私が選んだのは、樽の甘さよりも香ばしさを感じるミディアムボディーのテンプラニーリョ、「Otis Tarda TINTO RIOJA 2014(オティス・タルダ・ティント・リオハ)」です。はい、どうぞ。

リカ わあ、かわいいラベル。(クンクンクン……)うーん、やっぱりテンプラの香りの特徴ってよくわかりません。カベルネ・ソーヴィニョンのような気もするし、イタリアっぽい気もするし……。

明日香 アメリカンオークだと、カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニョンと間違えることが多いですね。でも、カベルネよりも土っぽさがあるんですよ。そしてやっぱり飲んだときの果実味のニュアンス。温暖な気候で育ったブドウだけあって、ジューシーなんです。

リカ なるほど~。(ゴクッ……)うん、たしかに土っぽさやジューシーさはわかります。

明日香 ちなみに、このワインの産地はスペイン北部のリオハです。スペインワインもきちんと原産地呼称制度(D.O.=デノミナシオン・オリヘン)で管理されていますが、リオハはその中でも特に高品質なワインの産地として知られ、 D.O.Ca.(デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ)という特別なカテゴリーに入っています。これに認定されているのは、数あるスペインワインの生産地の中でもリオハとプリオラート、二つだけなんですよ。

リカ へえ! 

明日香 そして、このテンプラニーリョに合わせるお料理が……前回に引き続きうなぎを使った一品です。

リカ もしや赤ワイン煮とか?

(料理が出てくる)

合わないわけはない相思相愛のマリアージュ

リカ わ、全然違う! こ、これは……?

明日香 「うなぎのかば焼き 北京ダック風」です。“西麻布みかづき飯店”の特別料理です(笑)<*注:本当の店名は「みかづき」>。上海に住んでいた井浦さんならではの一品ですよね。

リカ それにしても、なぜうなぎのかば焼き北京ダック風?

明日香 うなぎは川魚なので、いい意味で“泥っぽさ”があるのですが、それがテンプラニーリョの土っぽさと合うんです。さらに、かば焼きのタレの濃厚さに、テンプラニーリョの果実味の濃厚さを、焼いた香ばしさに樽の香ばしさを合わせています。サンショウの青みとテンプラニーリョのほのかな青みも合っていますね。

リカ そう聞くと、合わないわけはない相思相愛のマリアージュですね。

明日香 じゃあ、さっそく食べてみましょう! まず皮に大葉をのせて、甜麺醤(テンメンジャン)を少し塗り、そこにうなぎ、ネギ、キュウリをのせてくるっと……。なんだかお家で手巻きずし作っているみたいで楽しいわね!

リカ ふふ(笑)。じゃあ、いただきまーす。(パクッ)わあ、これはおいしい。北京ダックよりうなぎのほうが好きかも?!

明日香 さ、そこですかさずワインを。

リカ わお!

煮詰めたタレと濃いめの赤ワインが相性抜群

明日香 やっぱりうなぎの焼いたパリパリ感とワインの香ばしさ、うなぎのジューシー感と果実味がなんともいえず合いますね

リカ パリパリ、シャキシャキ、モチモチ……それぞれの素材の食感の違いも楽しいです。

明日香 ネギとキュウリ、両方入れているのがいいんですよね。そして大葉があることで清涼感が出るので、飽きがこなくて次の一口につながります。おなかがふくれてきたら、皮なしで大葉だけでくるんでもおいしいですよ。

リカ うなぎでこんなお料理ができるなんて!

明日香 この煮詰めたタレと濃いめの赤ワインも相性抜群です。密度が同じというか。

リカ テンプラニーリョって洋食以外に合わせにくいイメージがあったんですが、これなら最高ですね。

明日香 久々にスペインを思い出したでしょう?

リカ Si!(=スペイン語で「はい」) そういえば、以前同じように土っぽさのあるアユを赤ワインで合わせましたけど……。

明日香 そう、あのときはメルロを合わせましたよね。アユは土っぽいといっても、もっと繊細な味なので、メルロくらいチャーミングな赤がいいかなと思って。テンプラニーリョはスペイン女性のようなパワフルなラテン系だから、ちょっとアユはびっくりしちゃうでしょ……(笑)。

リカ ですね(笑)。それにしても、この1年、実際に料理とワインを組み合わせることで、ワインの楽しみ方がぐっと広がりました。合わせるものによってこんなにも味が変わるのか! と新しい発見の連続で。

明日香 やっぱりワインの極意は料理とのマリアージュ。これからも自分でいろいろ試しながら、楽しいワイン人生を歩んでいってくださいね。

*“香りと土”の方程式
うなぎのかば焼き(香ばしさ+泥っぽさ+タレの濃厚さ)+キュウリとサンショウ、ネギ(青み)=テンプラニーリョ(樽の香ばしさ+土っぽさ+果実味+ほのかな青み)

    ◇

■うなぎのかば焼き 北京ダック風(4人分)
[材料]
・うなぎのかば焼き・・・1尾
・甜麺醤・・・大さじ1程度(お好みで)
・カオヤーピン(北京ダックの皮)・・・10枚
・大葉・・・10枚
・キュウリ・・・1本
・長ネギ・・・1本
・粉サンショウ・・・適量

[作り方]
1)うなぎのかば焼きを温め、粉サンショウをふる。(魚焼きグリル等で皮をパリッとさせる)
2)キュウリは5cmの長さに切った後に縦に4つに割り、種の部分をはずしてスライスする。
3)長ネギも5cmの白髪ネギにする。
4)カオヤーピンは蒸しておく。
5)皿にうなぎ、大葉、キュウリ、白髪ネギを盛りつける。
6)皮で具材と甜麺醤を少量包みながら食べる。
*皮は使わず、大葉で巻いて食べるのも、手軽であっさりしていておすすめ
<お料理協力 西麻布 みかづき

■本日のワイン
Otis Tarda TINTO RIOJA 2014(オティス・タルダ・ティント・リオハ)
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(構成・宇佐美里圭)

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PROFILE

杉山明日香(すぎやま・あすか)理論物理学博士・ソムリエ

写真

東京生まれ 唐津育ち。理論物理学博士・ソムリエ
有名進学予備校の数学講師として、主に東大進学クラスや医学部進学クラスを担当するかたわら、ワインスクール「ASUKA L'ecole du Vin」ではソムリエ資格試験対策講座を主宰する。またインポーターとしてシャンパーニュ・ワインの輸入業や、西麻布のワインバー&レストラン「ゴブリン」、パリの和食店「ENYAA」のプロデュースなど、ワイン関連の仕事も精力的に行っている。
著書に『ワインの授業 フランス編』(イースト・プレス)、『受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座』(リトルモア)、『おいしいワインの選び方』(イースト・プレス)
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■撮影協力:ゴブリン

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