猫と暮らすニューヨーク

わんぱくハチワレ猫と、猫好き親子の快活な毎日

  • 文・仁平綾、写真・山田真実
  • 2017年10月9日

猫と少女の、なんとも微笑ましいワンシーン。「本だったら、この写真、表紙に決定ね!」と、グラフィックデザイナーの母、ジェンさんが熱烈推奨。

[猫&飼い主のプロフィール]

猫・Zero(ゼロ)オス 4歳 ハチワレ
飼い主・Jen Cogliantry(ジェン・コグリアントリー)さん(グラフィックデザイナー&アクセサリーデザイナー)。映像ディレクターのご主人マイケルさん、11歳の娘タナーちゃんと、ブルックリン・パークスロープの庭付きアパートメントに在住。

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 「ねえ、見て! アルミホイルを丸めて放り投げると、どこまでも追いかけて遊ぶの。そうだ、私のキャンディーも大好き。ほら、こうやって遠くへ投げても、必ず取りに行って、私のところに持ってくるんだから」
 黒白のハチワレ猫・ゼロと、はつらつとした遊びを実演してくれるのは、11歳になるタナーちゃん。猫柄Tシャツに身を包み、“無類の猫好き”を全身でアピールするいでたちだが、それもそのはず。母親のジェンさんは、猫好きの母をもち、幼いときから猫と暮らした経験のある、自称「猫好きDNAの持ち主」。一方、夫のマイケルさんも、猫はもちろん、うさぎ、フェレットなど、さまざまな動物に囲まれ育った動物博愛主義者。そんな二人の愛娘、タナーちゃんが、猫好きDNAを受け継がないわけがない。

 タナーちゃんのたっての願いもあり、一家が猫を飼い始めたのは、今から6年半ほど前、NYから移り住んだ西海岸のポートランドでのこと。犬猫の保護施設を訪ね、譲り受けた最初の猫は、黒猫のTaz(タズ)だった。
 「タズは、エネルギーに満ち溢れていて、家猫というよりは外猫向き。そんなわけで、しょっちゅう家から脱走して大変だったの。家のドアが少しでも開けば、勢いよく外へ走り出す、という始末」(ジェンさん)
 ある日、いつものように家を飛び出したタズ。ジェンさん一家が待てど暮らせど、タズは一向に家に戻らず、結局、行方知らずのままになってしまったという。「家の近所によくコヨーテが出没していたから・・・・・・。心配で、心配で。タズがいなくなってしまって、とっても悲しかったわ……」(ジェンさん)。

 タズが戻らなくなって数カ月、再び保護施設を訪ね、今度は生まれて間もない2匹の子猫を譲り受けた。ラグドールとシャム猫の雑種で、タナーちゃんが名付けた名前は、Sweetie(スウィーティー)とCutie(キューティー)。
 ジェンさん曰く、「タズとは対照的に、物静かで、素直で従順。ふわっふわのロングヘアでね。抱っこされるのも大好きだった」。
 ところが飼い始めて間もなく、2匹ともがFIP(猫伝染性腹膜炎)に感染していることが判明。
 「それから半年と生きることができなかったの……。タナーも私も、それはもう悲しくて、ひどく落ち込んだわ。2年にも満たない間に、3匹の猫を失うなんて、そんなつらい思いはもうしたくない。だから、しばらく猫を飼うことは控えていたの」(ジェンさん)

 ほどなくして一家は、ポートランドでの2年半の暮らしを終え、再びNYへ移り住むことになった。
 それを機会に、「NYで暮らし始めたら猫を飼おう」とタナーちゃんに約束。住まいを構えることになったブルックリンの猫病院で、ハチワレの子猫を譲り受けた。それが現在4歳になるゼロだ。

 すくすくと育ったゼロは、脚がすらりと長く、細身で筋肉質な4歳猫。「とにかくわんぱくで、エネルギッシュ!」と、二人が声をそろえるほど。
 ジェンさん曰く、隙を見つけては、寝室の奥に広がる庭へ飛び出すこともしばしばで、「せっかく育てた笹を食べてしまう」という。笹をむさぼる白黒柄の生き物とは……、まるでパンダ、じゃないか。
 そうやって家中を、あるいは裏庭を、縦横無尽に駆け回るゼロだけれど、一方で、じっと静かに窓の外を眺め、タナーちゃんの帰りを待つという、けなげな一面も。「ひざの上にのったり、寄りそってくることも、もちろんあるわ。私の胸の上で伸びをしたり、耳元でゴロゴロいったりもするのよ」とジェンさん。
 ポートランドの猫たちは、残念ながら悲しい思い出になってしまったけれど、「ゼロのなかにね、タズや、スウィーティー&キューティーの性格や面影を、垣間見ることができるような気がするの。そんな猫と出会えて、ようやく一緒に幸せに暮らしていけることができて、本当にうれしい」(ジェンさん)

 当然のことだけれど、猫にもさまざまな一生があり、運命というものがあるのだなあ、とジェンさんの話を聞いて、しみじみ……。となると、いまこの瞬間に、私と愛猫が暮らせているのは、奇跡といえるのかもしれない! そんな熱い思いが勝手に込み上げ、愛猫を強く抱きしめたい衝動に駆られたのだった(猫には迷惑だろうけど)。
 そんな猫好き我らの願いは、ひとつ。私たちにとって、愛猫と一緒にいる時間が至福であるように、猫にとっても、私たち人間と共にある日々が、どうか、幸せでありますように。

 >>つづきはこちら

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 連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

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ジェンさんのウェブサイト
http://shop-jch.com/

ジェンさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/jch_nyc

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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

山田真実(やまだ・まみ)写真家

山田真実

鳥取市生まれ、大阪芸術大学写真学科卒業、現在はアメリカ在住のフォトグラファー。渡米前は10年以上に渡り、株式会社文藝春秋の写真部にて、女性誌の撮影から、アーティストのポートレート、スポーツ取材まで幅広く担当。ドキュメンタリーな視点を大切にしながら、現在も雑誌、書籍、Webなどで活躍中。
http://www.mamiyamada.jp/

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