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<74>日比谷の穴場 緑に囲まれた図書館のくつろぎ空間

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2017年10月5日

 「こんな穴場があったなんて知らなかった!」

 千代田区立日比谷図書文化館のショップ&カフェ「Library Shop & Cafe Hibiya」を初めて訪れた人は、きっとこんな驚きと喜びの声をあげることだろう。

 同館があるのは、国会通りに面した日比谷公園の敷地内で、三角形の建物が目印だ。その歴史は、1908年に開館した東京市立日比谷図書館にまでさかのぼる。東京大空襲で建物と20万冊以上の蔵書を焼失してしまうが、1957年に都立日比谷図書館として復活。その後、東京都から千代田区に移管され、2011年に図書館やミュージアム、さまざまな講座を行うカレッジが一体となった複合文化施設として、日比谷図書文化館が誕生した。

 同店もこの時、1階にオープン。円形の空間の中心部に本棚や雑貨を並べた棚があり、ぐるりと囲むように配置された座席でコーヒーを味わいながら読書を楽しめる。ここで販売している本は購入後でないと席で読めないが、2、3階にある図書フロアの本は貸し出し処理前でも持ち込むことができる。逆にここでふた付きのドリンクをテイクアウトし、図書フロアで飲むことも可能だ。天気がよければ本とコーヒーを片手に、公園内のベンチで読書を楽しむことだってできる。

 「人と本には合う、合わないといった相性があると思うのですが、図書館の本なら何回“失敗”しても構いません。ここでは気軽にお試しで読むことができます。大型本や高価な本を読めるのも図書館ならではですし」

 そう話すのは同館広報の並木百合さん(42)。千代田区内には5つの図書館があるが、それぞれに特徴を持たせ、本を重複して収集しない方針を立てている。同館では、「江戸や東京に関するもの」「ビジネスに役立つもの」「アートや文化に関するもの」という3つの観点から資料を収集し、約19万冊の蔵書がある。

 図書フロアでは、時事的な話題に関連した書籍を並べたり、「今日の一冊」というおすすめコーナーを作ったりして、利用者の好奇心を刺激するような工夫を凝らしている。

 「テーマ別に選書する時、古い本も並べることができるのは図書館の強み。ここに来れば、本の方が呼びかけてくれるはずです」

 一方、カフェにある書籍は、江戸や東京をテーマに、MARUZEN&ジュンク堂が選書しており、館内のミュージアムで行っている展示に合わせた書籍も販売している。

 「図書館と書店にはそれぞれの役割があります。書店は新刊や売れる本を中心にそろえていますが、図書館なら以前に刊行された本との出合いがあります」

 公立図書館なのに、おいしいコーヒーを飲みながら約19万冊の蔵書や個性的な新刊書籍を自由に手に取ることができ、無線LANも完備。仕事や勉強にもってこいの環境が整っている。カフェは19時までの営業だが(土日祝は17時まで)、図書フロアは平日22時まで開館、さらに、周囲には豊かな自然があふれている。

 「ここに来れば、いろんな発見と刺激があるはず。より多くの人に有意義に活用してもらえるとうれしいですね」

 “緑に囲まれた都心のオアシス”なんて手あかのついた言葉かもしれないが、ここにいると、この表現が一番ふさわしく思えてくる。

■おすすめの3冊

「国宝 松江城 美しき天守」(山陰中央新報社出版部/編)
2015年に国宝に指定された松江城の特色、歴史、ゆかりの人々などを美しいカラー写真とともに解説。「今回、図書館司書が当館の特徴である江戸、アート、ビジネスの各ジャンルからおすすめの蔵書を紹介します。こちらは松江城の内側から外側まで幅広く知ることができる一冊。当館1階特別展示室で11/19まで開催中の「松江城と江戸城 ―国宝になった城と天下人の城―」と併せてお楽しみください」

「デザインのめざめ」(原研哉/著)
日本を代表するグラフィックデザイナー・原研哉が、日常の中のふとした瞬間に潜む「デザインという考え方」についてつづったエッセー。「デザインについてよくわからなくても、原研哉さんがシンプルな言葉で教えてくれます。日々の暮らしの中でさまざまなところにデザインが存在し、ヒントが隠されていることに気づかされます」

「貧困と闘う知」(エステル・デュフロ/著、峯 陽一、コザ・アリーン/訳)
世界で最も注目されている経済学者の一人が、開発経済学の最先端を語る入門書。「発展途上国の教育、医療、金融、ガバナンスについて、ランダム化比較実験(RCT)を用いて、開発経済学の最前線をコンパクトにまとめ、貧困削減の具体的な政策を提示しています。2015年9月に国連が採択した『持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)』の理解の助けにもなる一冊です」

    ◇

Library Shop & Cafe Hibiya
東京都千代田区日比谷公園1-4 千代田区立日比谷図書文化館1階
http://hibiyal.jp/
写真特集はこちら

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