上間常正 @モード

ロングブーツの人気復活 靴からファッション表現の見直しも

  • 上間常正
  • 2017年10月6日
  • ニューヨークストリートスナップ 平野功二氏撮影

  • 「卑弥呼」の秋の新作展示会

  • 「卑弥呼」の新作より

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 知らぬ間にすっかり秋らしくなり、東京の青山や六本木などでブーツを履いた女性の姿をよく見かけるようになった。今年は丈の長いブーツの人気が復活し始めているようで、長いだけではなく、装飾付きのボリューム感のあるフラットタイプの靴も多く、とかく靴が目に付く。

 靴の新作は毎年発表されているが、目立つようなトレンドはこのところややご無沙汰だったような気がする。服の大きなトレンドも最近はあまりなくなってきていて、別に靴に限ったことではない。しかしこの秋にブーツが特に目に付くのは、靴というのはもともと目立つせいもある。しかし、そのことに多くの人が案外と無頓着なのだ。

 足とそれを比較的ぴったりと包み込む靴は、昔から男女にかかわらず体全体のイメージを示す象徴とみなされてきた。その意味では靴はとてもセクシーなもので、しばしば性的な愛情や誘惑を示す役割をしたり、〝靴フェチ〟(靴フェスティズム)のように靴そのものがエロチックな偏愛の対象となったりしてきた。

 シンデレラのガラスの靴は、小柄で可憐(かれん)だが芯はしっかりとした女性という理想の女性像の一つの象徴だった。この物語には世界中のいたるところで500以上の似た物語があるという。中国ではすでに9世紀の頃からあって、それが数世紀後から19世紀まで続いた纏足(てんそく)の慣習のもとになった。ちなみに纏足とは、女性の足を幼児のころから紐できつく縛って、不自然なほど小さく変形させることで、それが上品で美しい女性の足だとされていた。

 こうした靴の特色は、逆に言えば靴によるファッションの効果的な表現ができることを示している。また靴は四季の変化にそれほど左右されず、服よりも長く使えるので毎シーズン買い替える必要もない。そのため、かなり高めな靴を思い切って選んでも後悔しないですむ。自分が気に入った上質な靴を何種類かそろえて、服とのコーディネートで自分らしさを表現する。そんな楽しみをもっと試みてはどうだろうか?

 欧米の高級ブランドほど高価ではなくても、日本の気候や日本人の体形に合った上質で美しい靴のブランドはいくつもある。たとえば、30代の女性を中心に支持されてきた「卑弥呼」のこの秋の新作は、これまでのラインを木型を替えより現代的な感覚を盛り込んだラインに刷新し、さまざまなタイプの靴をそろえている。

 このブランドとしてはセクシーさや可愛さを強調した「オン ルージュ」のラインでは、ひざ上丈で黒のストレッチブーツのほか、赤のエナメルのプレーンパンプス……。また、普段使いで快適に履ける感覚の「オン ブルー」は、ストラップ付きの黒のブーツや、メッシュのセパレートサンダルなどが若々しく映る。

 「いい靴は人をいい所へ連れて行ってくれる。だから女の人はいい靴を履くと幸せが訪れる」というヨーロッパの言い伝えがある。それは多分、いい靴を履きこなしている女性はきちんとした生活スタイルや価値観を守っている、だから幸せになれる、ということなのかもしれない。いい靴を履くためには、よく手入れをして大切に履くという姿勢が求められるのだ。

 ついでに男性について言えば、日本の戦後の男性ファッションを先導した「VAN」の社長、故・石津謙介さんにインタビューした時に聞いた「男の装いはまず靴から。どんなにいい服を着ていても、靴がダメならそれでもう終わり」との言葉を思い出す。欧米のホテルやレストランなどでは、客の身分や趣味を靴で見分けるとされている。それで客への応対の仕方が決まってしまうのだ。

 今週まで開かれていた2018年春夏パリ・コレクションの速報を見ると、春夏向けでもロングブーツがよく登場していて、靴のこのトレンドはまだ続きそうだ。この秋には、まずは長めの上質なブーツを買って、靴のおしゃれに新しい目で挑戦してみてはどうだろうか。

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PROFILE

上間常正(うえま・つねまさ)

写真

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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