ものはうたう

20代から憧れ続けたティファニーのシルバーバングル 岡本敬子さん

  • 文・小澤典代、写真・篠塚ようこ
  • 2017年11月6日

 岡本敬子さんは、ファッションの世界で長く仕事をしてきて、自分をどう見せるか、人からどう見られるかを熟知している女性。その装いは注目を集め、多くの支持を得ています。そんな岡本さんが、日々の着こなしの要としているのがシルバーのアクセサリーです。

 「最初に手に入れたのがこのチョーカーで、19歳の頃に当時原宿にあった宝飾店で購入しました。ファッション雑誌で見て一目ぼれしたんです。すぐに店に問い合わせ、買いに行ったことを覚えています。その頃の私にとっては、少し背伸びをするような買い物でしたが、シルバーという素材の魅力を教えてくれた存在であり、今でも重宝しています。シルバーは、日焼けした肌に似合うのと、使い込むほどになじんでくる感じがあるんですね。黒ずまないように磨く手間とか、育てる感覚に近いことも気に入っている理由です」

 若い頃からシルバーのアクセサリーに親しんできた岡本さんですが、ずっと憧れ続けてきた存在があります。「ティファニー」のバングルで、オープンハートなど、このブランドを代表するアクセサリーのデザインを手がけている、エルサ・ペレッティによるものです。

 「いつも『ティファニー』に行っては見とれていました。20代から憧れ続けてきましたが、やっと3年前、50歳を機に購入したんです。それまで待ったのは、気軽に買える価格ではなかったこともありますが、まだ似合う自分になっていないと思っていたからなんです。機が熟したら手に入れようと考えてきて、50歳になり、そろそろそうした自信が出てきたときだったんですよね」

憧れ続けていた「ティファニー」のバングル。ブランドを代表するデザイナー、エルサ・ペレッティによるもの。骨をモチーフにデザインされています。着ける人を選ぶデザインでもあります。

 本物の良さを知ること、それを自分のものにする喜びは、大人ならではの醍醐味(だいごみ)であり、ものへの憧憬(しょうけい)は、自分をそうした本物に見合う存在に高めるための励みにもなります。その楽しみやステップアップの方法を、岡本さんは海外の”大人”を見て学んだと言います。

 「ヨーロッパでは、90歳や100歳くらいのマダムが現役で着飾ることを楽しんでいるのをよく目にします。オリジナリティーに富んだ着こなしで、そうした行為が日々を楽しむことにつながっているんです」

 せっかく女性に生まれたのだから、着飾ることを享受するのも幸せの一部であるのは確かなことでしょう。でも、たくさんあるもののなかから、自分にふさわしいものを見つけるために、どんなことを大切にしているのでしょうか。

 「情報がたくさんあっても、全てを知る必要はないと思います。自分が好きだと感じるものに忠実であることが大事ですね。よく夫は『買い物は投票』と言っていますが、そのとおりだと思います。たくさんあるなかから”好き”というレーダーに引っかかるものを選び、愛着を持って接し、深く探ることで更に良さを知るんです」

 恋愛と一緒で好きなものは迷わない、と語る岡本さんは、昔からネイティブアメリカンや西部劇に登場するカウボーイが身につけているものにも興味があったのだそう。そうした民族衣装など、エスニックに惹(ひ)かれる理由には、凝った手仕事にも魅力を感じているからなのでしょう。

 「母の影響が大きいと思います。幼い頃は、まだ既製品の服に可愛いものが少なかったこともあり、私の着る服はすべて母のお手製でした。一緒に布地を買いに行き、それに合うボタンやリボンなどのパーツも私に選ばせました。いま思えば訓練というか、母からセンスを伝授されていたんですね。服のデザインについても、細かなディテールまで相談して。丁寧につくることの大切さや、人とは違う、自分なりのこだわりを持つことがとても大切なこととして育てられました」

 現在、岡本さんは服装ディレクターの肩書で、自身のディレクションする「KO」の製品であるバッグやアクセサリーのデザインをはじめ、ショップバイヤーも務めるなど、その審美眼を生かした活動は多岐にわたっています。そんな、おしゃれのプロとしての立場から、買いものへのアドバイスをいただきました。

 「楽しんでものを買ってほしいですね。倹約とか、節約とか、今はどちらかというと買いものを控える傾向があると感じていますが、ものとの出会いは、人との出会いに似ているところがあって、そのタイミングでしか経験できないことがあると思うんです。私は、多くのものを買ってきました。それだけ多くの出会いがあって学んだことも多いのです。無駄遣いはダメですけど、人生には選択がつきものですよね、自分のスタイルを持つには、それと同じで、実際に多くの選択という体験をすることが必要なんだと思っています」

 潔く買いものをする人は、そのときどきの自分にしっかりと向き合い、出会いという縁を大事にしながら、情熱を持ってものを選んでいます。お洒落とは奥深いもので、自分らしくあることへの表現であり、より幸せでいることに貪欲であるための行為なのだと知りました。

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PROFILE

小澤典代(おざわ・のりよ)

小澤典代

手仕事まわりの取材・執筆とスタイリングを中心に仕事をする。ものと人の関係を通し、普通の当たり前の日々に喜びを見いだせるような企画を提案。著書に『日本のかご』『一緒に暮らす布』(ともに新潮社)、『金継ぎのすすめ』(誠文堂新光社)などがある。また、ブログ「小澤典代のいろいろ雑記」でも、気になるひと・もの・ことを紹介。
http://blog.fu-chi.main.jp/

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