朝日新聞ファッションニュース

あふれる装飾、視線は未来 18年春夏パリ・コレクション

  • 2017年11月8日

 10月初旬まで開かれた2018年春夏パリ・コレクションでは、先に開かれたミラノと同様に、ロマンチックで装飾的な服が目についた。パステルカラーに繊細な刺繍(ししゅう)、揺れるフリンジ……。ミニ丈が戻り、フレッシュで若々しいフェミニンさをアピールするブランドが多かった。

ルイ・ヴィトン

 年代物の衣装が漂わせるぜいたくさ、優美さを今によみがえらせる――。ルーブル美術館を会場にルイ・ヴィトンが並べたのは、18世紀にフランスの男性貴族が着ていたような、絢爛(けんらん)豪華な礼装用ジャケットだった。

 金糸刺繍やプリントをいくつも重ね、重厚に仕立てたロココ調の上着。それにサテンのボクサーパンツとハイテクスニーカーを合わせて、スポーティーで未来的な感覚を加えた。

コムデギャルソン

 コムデギャルソンも、今回は意図的な装飾性が際立った。アルチンボルドの果物や野菜を寄せ集めた肖像画や、高橋真琴の少女画など10種ほどの絵画のプリント地をミックス。大きな膨らみのあるコートやドレスを形作った。首にはハローキティなどの人形のおもちゃが鈴なり。

 デザイナーの川久保玲は「テーマは、立体的なグラフィティ。壁に掛かった絵が、壁から出て立体的になるイメージ」と語った。従来打ち出してきた形や素材の新しさではなく、古典的なモチーフを使って平面を立体にしようとただこだわることの中に、時代感覚を込めようとしたのだろう。50万人を超える入場者を集めたニューヨークのメトロポリタン美術館での展覧会を終えた川久保の、新たな境地を見た気がした。

トム・ブラウン

 「夢の中」をテーマに、おとぎ話のように幻想的なショーを見せたのは、ニューヨークから発表の場を変えたトム・ブラウン。極薄のチュールをねじった花飾りを満載したジャケットに細かい刺繍。クリーミーな色。フィナーレには真っ白なドレスとユニコーンを登場させた。

シャネル

 シャネルは、ダイナミックな演出の中で、みずみずしい女性らしさをはじけさせた。会場には、巨大な岩壁と激しく流れ落ちる滝。虹色のミニ丈ツイードスーツに重ねた透明なPVC(ポリ塩化ビニール)のパーカや、ニーハイブーツが光を集めて輝いた。

サンローラン

 サンローランの会場は、日暮れ時のエッフェル塔の脇。長く広い屋外のランウェーに、雲のようにふわりと膨らんだバルーンドレスなど約100体をそろえた。フィナーレに合わせてエッフェル塔がチカチカと点滅するサプライズも。仕掛けも服も、これぞパリとうなるような華麗さと壮大さが感じられた。

(左)ドリス・ヴァン・ノッテン、(右)ヴァレンティノ

 色とりどりのスカーフを服の生地としてコラージュ風に取り入れたドリス・ヴァン・ノッテン。「堂々と優雅に、ゆとりをもって歩いて」とモデルに指示したという。男性歌手が甘く歌う「ビー・マイ・ベイビー」の曲が流れる中、シックで華やかな服を着たモデルたちが、りんとした表情で歩き去ったのが印象的だった。

 一方で、ここ数年続いたシンプルで着やすい服に軽さや新しい形を持ち込んだブランドも。ヴァレンティノは珍しくブルゾンなどでスポーティーなムード。とはいえ、淡い色や手の込んだ刺繍で甘く仕上げた。

(左)バレンシアガ、(右)クリスチャン・ディオール

 テントのようにナチュラルで軽やかなコートを見せたセリーヌ。見慣れたTシャツや扇風機柄が何だか楽しかったステラ・マッカートニー。バレンシアガは、Tシャツやチェック柄などの誰もが知っているアイテムや素材を様々に組み合わせた。

 1年前に「みなフェミニストでなくては」とのメッセージを服にあしらったクリスチャン・ディオールは今回、フェミニズムの視点で知られる女性美術家ニキ・ド・サンファルの作品を柄などに取り入れた。女性美術史家リンダ・ノックリンの「なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか」との言葉入りTシャツも。社会的な問題意識を軽やかに明るく表現した。

 ジバンシィやクロエ、ランバンなどのデザイナーが交代したが、注目されたほどのさえは見えなかった。

 前季はテロや排外主義などに反発するメッセージ性を直接的に強く打ち出したブランドが多かった。今回はそれとはとりあえず距離をとって、服本来が持つ装飾的な楽しさに注目した表現が目立った。混迷を深める社会の中で、見えない未来をなんとか見いだそうとする表現のようにも思えた。(編集委員・高橋牧子)

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 <写真は大原広和氏撮影>

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