上間常正 @モード

創作とは? 皆川明とデンマークの陶芸作家の共作

  • 上間常正
  • 2017年11月10日

〝ワークショップ〟の会場で

 生地作りから服だけでなく家具や食器類まで幅広く手掛けるminä perhonen(以下、ミナ ペルホネン)のデザイナー皆川明。そして、デンマークの陶芸作家アンヌ・ブラック。この二人が作品を一緒に作っていく珍しい形式の〝ワークショップ〟が11月1日、東京・代官山のミナ ペルホネンのショップで開かれた。見ているうちに、作品を生み出すクリエーションとは何か? との問いを誘う興味深くて楽しい催しだった。

 ワークショップは参加客が作品作りに加わるのが普通だが、この催しでは二人が大きなテーブルの両側でそれぞれ手と絵筆でふだん自分のアトリエでやっている作業を続けるだけ。観客が聞きたいことを話しかければ答えてくれるが、お互いの会話を交わすことはほとんどない。

  アンヌ・ブラックさん

 アンヌさんは、時には厳しい目つきをしたり、時には微笑を浮かべたりしながら、土をこねて形を作っていく。土という素材に自分の手で触れる、その感触から刻々と生まれるイメージが、自在な形となっていくように見える。「言葉ではうまく説明できないけれど、土と話をしていると言っていいのです」とアンヌさん。だから、作る前に形を決めたドローイング(素描画)は描かないという。

  皆川明さん

 一方、皆川さんは、アンヌさんが形を作って素焼きした皿や飾りプレートなどに、色と図柄をすべて手描きで施していく。その表情は作品と似ていて、のびやかで楽しげだが、まなざしはやはり鋭い。「彼女の作品のシェイプ(形)に触発されて、その場で浮かんだイメージを即興で描いています」。そして作品そのものは二人の手を離れ、窯で焼き上がった時に姿を現す。

 二人は去年暮れ、デンマークのコペンハーゲンで同じような共同制作の催しを開いた。そもそものきっかけは、アンネさんが2005年から始めたショップ「black」でミナ ペルホネンの作品を取り扱ったからだった。その後のやりとりが続く中で、共作のアイデアが始まったとのこと。穏やかな線や色彩、シンプルな形に秘められた豊かさと力強さ、といった作風も共通していた。

展示作

 デンマークでも東京でも、掲げたテーマは「FOREST IN THE OCEAN(海の中の森)」。ゆるやかなイメージのようだが、そこには時を超えて生き続ける有機的な自然を見つめる目、自らもその一部として自然と自分の手で一つひとつ作っていく、大量生産はしない、という二人の基本的な思いが込められているように思える。皆川さんは「共作の内容について事前に決めたのは、このテーマだけ」と語った。

 〝ワークショップ〟の会場はとても静かだったが、そこには耳には聞こえない会話が飛び交っているように思えた。アンヌさんと土、皆川さんと形、二人の作業と観客、そして二人の作者同士……。そのそれぞれの出会いの場で起きたことが、目には見えない空間を形作っていたのではないか? その空間で起きたことの一つひとつがクリエーションで、作品が生まれるのだといえるのではないだろうか。

展示作

 だからこそ、作品はどれ一つとして同じものではなくて、個性的なものになる。その意味では、独創的ということはたった一人で生み出す、という考え方は誤りなのかもしれない。そして作品のクリエーションは、それを手に取った人や見た人、使い込んだり着たりした人によって決まる。その作品はまた、別の人や次の世代に手渡されることもあるだろうし、そうでなくて捨てられたり忘れ去られたりして、最期は土に帰ることもあるだろう。

 ものを作る、創作するということは、そうしたことなのではないか。皆川さんはブランド設立15周年の時に、朝日新聞のインタビューで「人生は繰り返すように進みながらも、常に変化している。……そうした繰り返しと日々の積み重ねの中で、人は新しいことに気づき、物の深さを知り、自分を理解するのだろうと思う」と語っている。

 日本の土を初めて素材にしたアンヌさんが語った「デンマークの土との違いはほんのすこしだけ。でもその違いについて、土はとても多くのことを語ってくれた」との言葉も印象的だった。

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 今回とコペンハーゲンの共作作品の展示即売会が、東京・青山のスパイラル5階で、今月10日から19日まで開かれている。(午前11時~午後8時)

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PROFILE

上間常正(うえま・つねまさ)

写真

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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